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オール for ヴァレンタイン

作者: 雅弥 華蓮

 バレンタイン。

 それは、女性が男性にチョコレートを渡す、恋愛関連の3大イベントの1つとも言われるものである。

 女性は男性に想いを伝える試練、男性は女性に認めてもらえるか試される試練でもあった。

 その試練は、異性に向けたものだけでもない。

 男性はチョコをもらえた数が異性に認めてもらえた証であり、女性はライバルより優れた魅力的なチョコを効果的に渡して心を手に入れるという、男と女の戦場でもあった。

 だが、世の中には、チョコを受け取ることが出来なかったという人もいるかもしれない。チョコを渡すことが出来なかったという人もいるかもしれない。

 これは、チョコをめぐって起きた、一つのアクシデントである__。




 俺はB雄。

「皆さん、明日、2月14日は何があるか知っているか?」

 ここは、東京の某高校。

 2月13日のHRに、担任のZ先生は、このような事を言い出した。

「A子の誕生日!」

 そうだったな、後で祝わないとな。

「新ガチャの開始日!」

 そうだったな、究極レア10種類も出てくるんだったな。

「アイドルCDの発売日!」

 そうだったな、あの有名アイドルだっけ、あの歌いいよな。

「パパが海外旅行に連れて行ってくれる日!」

 そうだっ・・・いや、明日、普通に学校だぞ。

「ちがーう!というか、おかしいの混ざってるぞ!」

 生徒たちがボケているのか、真面目に答えているのか分からない回答に対して、Z先生はツッコミを返した。

 いつもご苦労様です。

「全く・・・。明日はチョコレートに関係する日だ。ここまで言えばわかるだろう?」

 そうそう、明日と言えば__。

「ホワイトデー!」

「1か月早いわ!!」

 全くです。

「クリスマスでしょ」

「それは12月25日!真面目に答える気ないのか、お前ら!」

 ないと思います。

「「ない!!」」

 異口同音に返された言葉に、Z先生は思わず机に伏しそうになった。

 ここまでくると、少しかわいそうに思えてくる。

「もういい。明日はバレンタインだ。このプリントを見てくれ」

 渡されたプリントを見ると、そこには驚くべきことが書いてあった。

 それは、男性の喜び、女性の文句という形で現れた。

 そういう俺も少し嬉しい。

「よっしゃー!俺もチョコもらえない男から卒業だ!」

「えー!何で私がチョコ作らなきゃいけないの!しかも男子に向けて!」

 ここに書いていた内容はこうだ。


 2月14日のバレンタインは、特別授業として、チョコ配布大会とする。

 準備として、

 女性は、自作したチョコを持参しておくこと。

 男性は、胃袋に余裕を空けて、チョコに対抗できるようにしておくこと。

 その日は、

 女性は、1つ以上のチョコレートを男性に渡す。

 男性は、1つ以上のチョコレートを女性から受け取って食べる。

 この2つを終えるまで、全生徒の下校は不可とする。

 なお、学校でのチョコレート製作は認められる。

 また、当日欠席した場合は、恋愛に関係する考察文を、1000文字以上で書き上げて、1週間以内に提出してもらうこととする。


「先生、セクハラです」

「皆はバレンタインを知らないからそう言うんだ!」

 唐突なセクハラ認定発言に対して、先生は諭すように続けた。

「いいか、バレンタインは楽しい人は楽しめるさ。チョコを渡せる程、好きか勇気のある女子、モテてチョコの方から寄ってくる男子ならな。だが、そうでない人はどうだ!一歩すすまれる感覚、甘い雰囲気に乗れない感覚。それがどれだけ哀しいか分かっているのか!だから世間では、リア充爆発しろだの、バレンタインなくなれだの、クリスマス中止にしろなどと言われるんだ!」

 クリスマスさんに酷い流れ弾が。

「先生たちは、その辛さをなくしたい。だから、こんな形で大規模なバレンタインにしたんだ。これは、皆から平等に贈られるプレゼントだ」

 その言葉に、一部の男子が泣いて立ち上がる程、感動していた。

 俺はそこまでの反応はしていないが、感動していることには変わりない。

 変なことだらけのこの学校において、数少ないまともなことをやってくれたのだから。

「先生、女子より男子の人数が多いですけど!」

「多く作りなさい」

 その一言で、強引に反論を切られた。

 言いたいことはわかるけど、少しは夢を見させてもいいだろうに。




 2月14日。

 いよいよ、学校総出のバレンタインだ。

 女子は悪夢のバレンタインなどと皮肉っているが。

 そういうことに興味の薄い人が多く作ればいいんじゃないか?

 この日はあちこちの施設が解放されており、好きなシチュエーションで渡せるということだ。

 スポーツ大会のまがい物、屋上はまだ分かる。

 シャワールームとか、保健室とか、男子更衣室とか、どう突っ込んだらいいか分からない所も、渡す場所の推奨になっている。

 というか、男子更衣室とか、女子更衣室とか大丈夫なのか?

 絶対、変態が寄り付くに決まっている。

 さすがに一部屋だけは解放されていないから、本当に困ることはないだろうが。

 俺?

 チョコ地獄に追われていました。

 一部のブサイク男子に渡すのが嫌な女子たちが、仕方ないからと言って、一部の人に大量にチョコを渡す事態が発生していた。

 始まって1時間。

 カウンターがあっという間に止まって、仕方なく渡している、渡されている状態ができつつある。

 しかもこのカウンター、登録したチョコのチェックで行う、無駄に困った仕様だ。

 男性用と女性用に分かれていることは評価できるが。

 まだ半分は残っているが、終わるまでに渡りきるのか?

 それはそうとして、俺は余ったチョコたちを大量に食べることに追われていた。

 帰ったら、歯磨こ。ていうか、今磨きたい。

 口の中がチョコで支配される感覚に襲われていた。

 それだけでも苦労するというのに、調理室は大混乱だった。

 女子たちが誰に渡すのか、誰が作るのか、押し付け合っている。

 チョコを食べ終えた後、それを外で聞いていた俺はため息をついた。

 勝手なことを言っているけど、お前達が渡さなきゃ、皆帰れないんだぞ?

 後、夢を壊すような発言しないでください。

 聞いていたら、部屋から女子が出てきたので、俺は慌てて隠れた。

 向かって行った先は、道具室。

 持ってきたのは、マネキンのような何かだ。

 まさか、これを利用して、自分がチョコを渡したという口実を回避するのか?

 女子の世界怖い。

 怖いといったら、男子の世界も怖い。

 残っているのは、俺のような冴えない奴か、変態か、キモイか、そのどれかだ。俺はまだましな方だが。

 そんな奴らが集まって、煩悩か嫉妬の炎を出しているのは、恐怖すら感じる。

 ああ、普通のバレンタインなら、こんなことにはならなかったのに。

 俺はそう後悔していた。

 いくらチョコもらえるとはいえ、こんな雰囲気で渡されても、夢もクソもない。

 俺はまだましだったと思いつつ、この行く末を眺めることにした。

 しかし、午後の4時、本来の下校時間になっても、未だにもらっていない男子がいた。

 ちなみに、昼食もチョコである。

 お願いですから、歯を磨せてください。虫歯になりそうです。

 全員が疲れ切ったムードを起こした中、俺は一つの作戦を思いついた。

 俺は、学年一見た目が悪い男、ああああ君にチョコを渡した。

 これは、女子の作ったチョコを、手に入れさえすればいいのだ。

 俺が仲介人として渡しても、文句、不正のつけようはない。

 誰のチョコを渡すかで、大分もめたが。

 ああああ君は、名前の悪さから、散々な評価をつけられたかわいそうな男だった。

 見ていて同情したくなる。

 俺が女子から代役で渡しに来たと説明すると、ああああ君は大喜びだった。

 見た目で判断するのは間違っているのだなと、そう思えた。今日一番のためになることだった。

 これで、全員にチョコを渡して、渡されたので、終わりだ。

 ようやく帰れる俺たちの前にやってきたのは、先生だった。

 曰く、まだチョコが余っているから食べなさいと。

 その残っているチョコはというと__。

 500人分は残っていた。

 先生たちも、同様の騒動を起こして、というより、先生たちの方が酷かった。

 俺たちを当て馬にして、こんなことをやったと判明した。

 結局、夜食までチョコになるほど、チョコ地獄に溺れた俺だった。

 次の日、虫歯事件が起きたのは、もう喋りたくない。

 今回の件、いいことを知ったことだけが思い出となった。

 残りは全部、トラウマだ。

 正直に言おう。

 バレンタインは、普通に楽しませてくれ。

 せめて、ゼロでいいから・・・。

[完]

2月14日はバレンタインデー。

ということで、バレンタインエピソードを書きました。

ギャグ重視で書いていたつもりが、恋愛小説になって削除したりもしましたが、結局、ギャグ主体で落ち着きました。

この手の作品はどうにも難しいのですが、ここまでお読みいただき感謝の一言を。

念のため言いますが、作者はバレンタインは嫌いではありません。

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