五月三十日、日曜日
五月三十日、日曜日
・開店前、エフエムこうごより市内の天気
曇後晴。東の風のち西の風やや強く。波の高さ一メートルのち〇・五メートル。
・主な来客と近況
月島銀司:五十歳を機に、副校長に就任。ストレスで胃痛が絶えない。
宍戸玄助:銀司の勧誘に負け、ピアニストとしての仕事に専念。近々プラハに行くので、チェコ語の会話集を持参していた。
注文は、ほんとの珈琲。深みのある大人の条件について、実に紳士的に意見を交わしていた。
・備考
アルバイト二人に、今月四回分の給料を渡す。
「これで、みどりに何か贈りたい」という藍平に、「この先の花屋の店頭に、綺麗な金魚草が並んでいた」と告げる。
・雑記
珈琲に、わざわざ「ほんとの」と断りを入れているのは、その昔、他店で蒲公英を煎じた代用珈琲が出されていた頃があったからだ。
相合傘の効果か、雨の帰り道、お互いについて本音をぶつけ合ったらしい。その結果、「本命がいるなら浮気に走らない」という藍平の言葉を検証すべく、試験的に付き合うことになったそうだ。半ば売り言葉に買い言葉といった調子だが、歳相応ではないかと思う。みどりからの手紙のことは、気付かなかったことにしておこう。冴えない僕がカッコイイと思うなんて、きっと、一時の気の迷いだったのだろうから。それに、僕より藍平のほうが、みどりにはお似合いだからね。
・閉店後、新シフォンケーキ試作の記録
アレンジ点:プチプチ感が堪能できるよう、ポピーシードを付加。
失敗点:焼きあがったスポンジに大穴が開く。卵黄とメレンゲの混ざりが不十分だった様子。かといって混ぜすぎると気泡が潰れて膨らまないので、匙加減が難しい。まだまだ、修業が足りないようだ。