五月二日、日曜日
五月二日、日曜日
・開店前、エフエムこうごより市内の天気
晴後曇。北東の風やや強く。波の高さ一メートル。
・主な来客と近況
火野紅太:漫画家。毎週、デッドラインぎりぎりで奮闘。
日立橙哉:編集者。紅太の担当。産みの苦しみに悩む紅太を、叱咤激励。
注文は、カフェラッテーとガットー・ショコラ。苦味の先に旨味があるのだとか。
・備考
仏壇に、紫の三色菫を供える。生前、祖母が好きだった。
帰る間際の橙哉から「大型連休明けから、木場家の愛娘みどりと、海原家の愚息藍平をアルバイトさせてやってくれ」と言われる。
・雑記
祖母が九十歳で亡くなってから早七年。僕も、もう四十一歳。四十を過ぎると、すっかり頭が固くなって、新しいことにチャレンジする前に、残りの寿命と天秤に掛けて考えるようになるものだ。思慮深くなったといえば聞こえは良いけど、ハッキリ言って諦めだよね。
だから、今回の件も、持ち帰って考えさせてもらった上で、後日鄭重にお断りしようと思っていたんだけど、そうは問屋が卸さなかったようで、済し崩し的に引き受けることになってしまった。どうなることやら。
・閉店後、新シフォンケーキ試作の記録
アレンジ点:香りを楽しめるよう、メープルシロップを付加。
失敗点:齧り尽くした林檎のように縮む。型にバターを塗ってはいけなかったらしい。