第15話 またね(3)
気まぐれに私達の周りを心地よい風が吹き抜けていく…。
汗をかいていた私はその風に至福の瞬間を感じていた。
そうこうしている内にお昼になったので施設内の多目的スペースで私達はごはんを食べる事にした。
木のテーブルに今朝お母さんからもらったお弁当を広げる。
木のベンチにちょこんと座るぬいぐるみ2人が可愛い。
「さあ、好きなものがあったら遠慮なく食べてね」
ぬいぐるみたちは基本こちらの世界では何も食べなくても平気。
でも食べる事は出来る。
ハルには今まで沢山おやつをやられた。
それも今となってはいい思い出になっていた。
好きな景色を見ながら好きな人?達とのランチは格別だった。
この時私は食べるのと話すのと景色を見るのに夢中で写真と動画の事は忘れてしまっていた。
これ…後でしっかり後悔したって言うね…(汗)。
「まさかここでの生活がこんなに楽しいものになるとは思わなかったよ」
「私も一緒に誘ってくださって、有難うございます」
「いいっていいって、これは私からのお礼でもあるんだから」
食事の後も色々まわる予定があったんだけど眠気がかなりのMAXだったので午後の予定はちょっとだけにしてすぐ家に帰る事になっちゃった。
うぐぐ…無念。
そんな消化不良気味の旅行?もぬいぐるみ2人にはいい思い出になったみたいで主催した私もほっと胸をなでおろした。
写真も動画もたっぷり撮れたしね!私グッジョブ!!
そしてまた時間はあっと言う間に過ぎて今日はハルが元の世界に戻る日。
この日が来ることは最初から分かっていたのに…分かっていたのに…目からオイルが(涙です)。
「さようなら…君はいいぬいぐるみだったよ」
「また嫌な事があったらいつでも帰っておいで」
「ハル…ぐすっ…色々あったけど楽しかったよ…ぐすっ」
私達家族に見送られてハルも涙目になっていた。
ハルの涙を見るのは何度目だろう…でも一度もハルの悲しい涙を見る事がなかったのは良かったな。
「み…皆さん…こんな僕をずっと見守ってくれて…家族として接してくれて…有難うございます」
「ユキちゃんの事、報告待ってるから!どんな結果になったとしても絶対連絡するのよっ!」
ちなみにこの最後の瞬間、ユキちゃんとハルは別行動。
なぜなら帰る時は来た時と同じ条件でないといけないから。
ユキちゃんと一緒に帰れたらいいのに色々と面倒なんだねぇ。




