第14話 逃亡の真相
番組放送の悪夢から数日後。
相変わらずハルへの質問攻撃はすごかったけど少しずつ収束してきていた。
番組は家の場所までは放送しなかったおかげで知らない人が家の前に集まるなんて事もなくてしばらくは友達がハルを紹介してってうるさい程度で済んでいた。
信じない人からはうそつき呼ばわりもされたけどそこは想定内だったから愛想笑いで乗り切った。
ネットの評判もすごいものらしかったけど目に入れなければ問題ないレベル。
知らない人からの評判までいちいち気にしていられないよね!
で、ハル目当ての友達にはハルを見せる事にしている。
もう仕方ないよね、これは。
中には買い物や保育園で見たって言うハルを知っている子も結構いた。
「マジなんだ」
「マジだぜ!」
そんな友達相手に私はちょいドヤ顔でハルを紹介していた。
友達ならね、まぁ知られても構わないって言うか仕方ないよねもう。
そんなプチハルブームが私の周りで広がっていた頃、お隣の幼なじみが私にコンタクトを取ってきた。
「渚、いいかな」
この幼なじみ、名前を潮崎 カオルと言って小学生の頃はまぁまぁ仲良しだった。
誕生日も近くて、あ、私の方が少しだけお姉さんね。
一緒にいるとよく親世代の知り合い達から渚カヲルって呼ばれてた。
当時は意味が分からなかったけど後で名前の由来を知った時は微妙な気持ちになったなぁ。
中学に入ってカオルはクラスも違っちゃうしバスケ部に入っちゃうしそれから疎遠になっちゃったんだよね。
そんなカオルが今頃私に何の用だろう?
やっはハル関係なのかな?今頃接触してくるって事は多分そうだよね…。
「良かったらさ、ハルに会わせてくれないかな?」
あ、やっぱり。
昔はよくお互いの部屋に遊びに行ってたのに改まって言われると何か変な感じ。
「いいよ、って言うかカオルもあの番組見たんだ?」
「中々テレビ映り良かったじゃん」
カオルとの会話自体が久しぶりすぎて何だかぎこちなくなっちゃった。
カオルはバスケ部入って結構かっこよくなってきちゃってるし…。
私は何故かこの雰囲気に耐え切れなくなっちゃって早く話を切り上げようと思って
「じゃ、いつでも昔みたいに遊びに来てよ」
そう言ってその場から逃げ出すように離れていった。
放課後、家に帰った私は何故だかそわそわしていた。
ただ幼馴染のお隣さんが昔みたいにちょっと家に訪ねてくるだけなのに。
私は自宅の呼び鈴が鳴るのをそわそわしながら待ち続けていた。
勿論夕方の公園に出かけようとするハルはちゃんと捕まえて軟禁状態に。
最近はハル目当てのお客さんも多かったんでそれはハルも了承済みだった。
「もうすぐお別れだから出来るだけ役に立ちたいんだ」
まぁ!何て健気なぬいぐるみなんでしょう!
お母さんがハルがいなくなるとしてもやっぱりグッズ作りたいってまだ言い続けていて作ったところでハルがいなくなったらやっぱ売れないよって私は止めてるんだけどそれについてもあいつは何も言わないからなぁ。一緒になってこの暴走を止めて欲しいのに。
ピンポーン!
来た!
「ハルに会わせたい奴がいるんだけど…一緒にいい?」
私が玄関先に迎えに行くとどうやらカオルは一人で来た訳じゃないみたいだった。




