第12話 プチ旅行(2)
電車が動き始めハルを窓際の座席に下ろす。
ハルは最初は遠慮していたものの次第に窓の景色に釘付けになっていた。
「おおお…美しい」
今日はいい行楽日和だったため電車もいい感じで席が埋まっていた。
けれど私が通路側でハルを隠すように座っていたので誰もハルの存在に気付く人はいなかった。
大きいぬいぐるみを持って乗ってきた人がいるなって程度の認識かな?
指定席だしあんまり他のお客さんを気にする人はいないんだろう。
電車に揺られる事4時間…目的地が近付いてくる。
私もお母さんもハルも流れる景色を楽しんでいた。
ちょっと長いトンネルを抜けると降りる駅まで後もうちょっとだ。
電車を降りたら目的のホテルまでバス移動。
駅を出た時点でそこは地元とはまるで違う景色。
「ふぅ~!ついたねぇ~」
「まだバスに乗らなきゃ」
「でもここからでもいい景色だよー」
もう地元じゃないしいいかなって思ってここからはハルを歩かせる事にした。
ハルもぬいぐるみのふりをしているのは不満そうだったし。
しばらくバスを待ってバスに乗り込む。
私はハルを自分の膝に乗せてバスからの車窓を楽しんだ。
「これからホテルに向かうよー」
「渚、僕のためにありがとう」
「いやいや~、感謝するべきはお母さんだよ」
バスを降りる時に自力で降りていくハルを見て運転手さん驚いていたっけ。
え?ハルの料金?ぬいぐるみに料金は発生しないのです!(キリッ!)
運転手さんも珍しいものを見たって事で許してくれましたv
「着いたどー!」
両手を思いっきり上げて喜びを表現する私。
着いたのはホテルって言うか旅館って言うか…そんな感じ。
そんな贅沢も出来ないしね。でもいい感じの建物だよ。
自然がいっぱい!
空気が綺麗!
いい天気!
料理も美味しい!…かどうかはまだ夕食前だから分からないけど。
「さぁ~お風呂入ってくるわよォ~♪」
温泉…ハル温泉入って大丈夫かな?
お母さんは部屋に着くなりすぐに温泉にいっちゃったけど私ら若いもんはねぇ(汗)。
部屋についてからも楽しめるようにUNO持っては来たけど2人でやっても面白くないし…。
そして部屋の窓の外はすごくいい感じ…そうだ!
「ハル!散歩に行こうよ!」
「あ…うん、行こうか」
そんな訳でハルと私は旅館の周りを散歩する事にした。
この景色を楽しんでもらうための旅なんだからこれが正解だよね。
美しい自然の中でトコトコ歩くハルが可愛い。
私もハルの歩幅に合わせて歩く。
いつも外でハルと歩く時はハルの存在が目立たないようにすごく気を使って歩いているけど今日はそんなの気にしなくていいからすごく気が楽。
思いっきりリラックスしてハルとの散歩を楽しんでいた。




