第１１話 世界の中心でハルを叫ぶ
そんな訳でハルの存在はぼんやりと広まっているみたい。
根も葉もない噂みたいだから大体が肝心な所はハッキリしていない。
色んな流れてくる噂を聞いていたら違う部分を違うと言いたい！声を大にして叫びたい！
そんな気持ちになっちゃうんだよね。
でもそんな事をしちゃったらどうなるか結果は火を見るより明らかだから…。
しっかりお口にチャックですな！
でもムズムズ…言葉が喉のところまで上がってくるよ。
王様の耳はロバの耳じゃないけど…誰かに話したいよ…っ！
そりゃ私にも口が堅いだろうって友達がいない事もないよ？
簡単な害のない相談なら彼女達に気楽に話すよ。
でもこればっかりはねぇ…。
巷に流れるハルの噂…。
本当もウソもまぜこぜで。
この事をハルはどう思っているんだろう？
自分が噂になっている事は知っているのかな？
「ハルー？」
「ん？」
家でゴロゴロしているハルを捕まえて聞いてみた。
ヤツは最近は父の集めている漫画を読むのにハマっているらしい。
ま、どーでもいけど。
「あんた噂になってるの知ってる？」
「え…？」
どうやらヤツは自分が噂になっているのは知らないらしい。
まぁ普通の人だって自分の噂は普通中々気付かないよね。
「それで何か迷惑かけちゃった？」
「いや、今のところ大丈夫だけど…」
意外…ハルはその噂の真相は気にしないんだ。
私達に迷惑がかかるかどうかだけ気にしてる…出来たヤツじゃのう。
私はこの反応にハルの事を少し見直したのだった。
あ！少しだけだよ！ほんのちょっと！
なので私のこのムズムズした気持ちをどうにかしようとＤＶＤを借りる事にした。
借りるのは勿論「世界の中心で、愛をさけぶ」
これを見ながら心のなかでハルの事を叫びたいと思った。
我ながら行動原理が意味不明だね(汗)。
この映画、もう名作扱いだからレンタル屋さんでもすぐに借りる事が出来た。
名前だけは知ってたけど実はまだ見た事なかったんだよね。
この機会に見る事が出来て良かったな。
「ハル、今から一緒に映画見ようよ」
「うん？いいけど…」
そして借りてきたＤＶＤをハルと一緒に鑑賞。
考えたらハルと一緒に映画見るとか今までなかったな。
周りから見たら大きなぬいぐるみと一緒に見ているようにしか見えないけど。
私の隣でちょこんと座って画面に集中しているハルって言うシチュエーションは何だか面白かった。
やがて映画が進んで有名な叫ぶシーンになった。
私は感動しちゃって涙がツーっと頬を流れていった。
あ、ハルも泣いてる…。
ぬいぐるみでも涙を流せるんだ…。
しかも私と同じ感動シーンで泣くとか…。
何よもう、ハルの事可愛く思えちゃうじゃない。
映画が面白かったので原作も読もうかと思った。
お父さんが持っていたら借りようと思ったのにお父さんの本棚には漫画しか置いてなかった、残念。
