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道聴塗説  作者: 静梓
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評価について少し2

※ 個人の意見です。

 「小説家になろう」内には、そこでの評価を風刺した作品が数多くある。また、拙作を含めて評価について触れたエッセイや随筆といったものは、実際に数えた訳ではないがそれ以上に多いだろう。


 もっとも俗っぽい評価について述べよう。それは「評価をカネで買うこと」である。その有効性がどの程度であるかはまったく分からないし、さまざまな問題ははらんでいるだろうが、荒唐無稽な話と切り捨てるには少し時代状況が悪い。


 仮定を積み重ねることになるが、もしそれで出版にこぎつけたとして、自ら大量に自作を購入し、重版が決定したとする。売上部数を評価と考えるのであれば、まさに評価をカネで買っていることになる。この例が適切であるかはともかくとして、数値化された評価やそれに基づく順位という評価は必ずしも内容を保証するものではない。


 「嫉妬乙」などと言われそうなので別の話に移ろう。


 作者は自らが思い描く作品に向かって推敲していく。作品の執筆途中かあるいは完全に書き上げてからかもしれないが、繰り返し味見をして、評価することで、その評価を作品へとフィードバックしていくのである。


 しかしながら、一度公開した作品の良し悪しを決めるのは作者ではなく読者である。「小説家になろう」内で論じるのであれば、自らの作品に対して評価を加えることは基本的にできないはずである。活動報告などは存在するものの、読者が作者の熱意や情熱、あるいは、主題などの意図を知る必要はない。むしろ、そうしたものを知ることによってバイアスがかかり、評価の純粋性が損なわれるかもしれない。


 ともあれ、読者は作者の意図など知る必要はなく、その作品の出来不出来を評価すればよいのである。作者は自ら何かしらの目標をもち、その目標と作品との関係から目標の実現を目指して作品を評価し、推敲や校正を行う。しかし、作者は目標を有しているが故に、その目標の視野から外れたもの、いわば副産物については見過ごしやすいのである。つまり、作者という立場に捉われるあまり、作品の全体像を把握できなくなっている可能性がある。作者の意図を知る必要がない、もしくは知るべきではないというのは、作品の作者の意図しない効果を読者こそが発見できると考えるからである。


 もちろん、文学的強度のところで述べたように主題と構成との間の妥当性を判断するためには、作者の創作意図を知っておく必要がある。この二つの考え方は相互排他的ではない。作者の特権化や作者自身の視野狭窄を防ぐ意味でも創作意図とかかわりを持たない評価は必要であるし、個々人の読みの特権化を防ぎ批評に対する強度を保証する意味で創作意図を含めた評価も必要であり、互いに行き来しながら評価の質を高めていくことこそが重要であろう。


 もう少しだけ続けよう。


 オンライン小説において、更新頻度はとても重要な要素である。「小説家になろう」内で述べるのであれば、作品のユニークアクセスを伸ばし、ブックマークを増やし、評価を得るためには、まず読者たちの目に触れなければならない。もちろん、サイト内には膨大な作品があり、毎日更新していても評価が伸びない作品もあるであろうし、ランキングを見ても必ずしも更新頻度が高いものだけが評価されている訳ではない。ただ、多くの場合、トップページやSNSなどで露出を多くすればその分だけ集客力は上がるであろうし、読者が増えればそれだけ評価も高まるはずである。


 そのほかの要素として、内容の質であるとか、題名やあらすじがキャッチーであるとか、様々なものがあげられるが、当然そうした評価は主観的なものにすぎず、普遍的な価値基準を求めることはできない。一話当たりの文字数もよく使う媒体による違いや好みがあるだろう。


 最初の例に立ち戻るが、そうして得られた評価は決して内容の質を保証するものではない。言うまでもなく、書き終えてから投稿しているにせよ、ある程度の書き溜めをしているにせよ、投稿に合わせて書き進めているにせよ、それだけの技能を持っていることは間違いないし、文量を書くことはそれだけで練習となり、多少質を保証することになるかもしれない。


 時間を掛ければ良いものが書けるという根性論は、二つ目の例で挙げたように読者が見つける副産物を軽視していることになり、また、更新頻度の高さも同じような根性論に行きつきかねないものである。


 ランキングを見れば流行のジャンルはある程度予測がつくだろう。そのジャンルで書き進められる最低限度の力量があれば、更新頻度は保てるかもしれない。目標をもって努力すること、あるいは、目標に向かって要領よく物ごとをこなしていくこと、それ自体に価値がないとは思わない。


 しかしながら、目標の外側に思わぬ結果が転がっていることがあるというのは二番目の例からも分かるだろう。更新頻度を保っているのに評価が上がらないという点を突き詰めて考えていけば、行きつく先は“運”である。書店で小説を買って後悔、買わずに後悔というのはよくある話だ。オンライン小説でもどこから辿り着いたのかは分からないが、ブックマークしてあるということもよくある。膨大な小説群から好みの小説を探す、いわゆるスコップも根気も必要だが運が左右する。


 「評価されないのは運が悪かったからだ」などという自己防衛を援護するわけではない。確率を上げたいのであればさらに露出を増やすことを置いて他に手立てはない。


 読者の目に触れることで作品が完成する、つまり、読者のいない作品に価値はないという考え方からは矛盾するかもしれない。一方で、更新頻度や露出を背景とした評価を一先ずは脇に置いておき、改めて創作の根を見つめてみるのも一興ではなかろうか。

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