通過儀礼
日本の民俗信仰には、子どもが「一人前」の大人となるまで、さまざまな通過儀礼が存在している。たとえば、着初め(3日)、命名式(7日)、宮参り(30日)、食い初め(100日)、初誕生日(1年)、紐落とし(3歳)、氏子入り(7歳)、少年式(15歳)、成人式(20歳)などである。もちろん、民俗信仰であるため、呼称や内容は地域差がある。
こうした通過儀礼の意義の一つは、その子どもが共同体にふさわしい成長をしているかどうかを確かめることにある。お祝いは子どもの成長を純粋に喜ぶ意味もあろうが、共同体に受け入れることを認めるということをも意味する。
現代では、中学や高校、大学などの入学試験がその内容を一部引き受けることによって形骸化しているモノも多いが、俵担ぎや珍しいところでは花火を用いるところなど「力を確かめる」意味合いが残っている地域もある。
当然、そうした試験に合格できなければ、ムラ共同体に「一人前」として認められない。近代に入り、共同体のあり方そのものが変わったことによって、そうした性質は薄れてしまっている。知力や体力、あるいは時の運によって差別するというのは、建前としては否定されたからだ。輸送・移動手段の発達によって、共同体に所属する必要性が薄れたこともある。
一方で、段階をおった評価や、お祝いといったものが必要なくなったわけではない。前近代は属性に縛られた社会ではあったが、属性に縛られない社会というのはアイデンティティ・クライシスをもたらしたのである。




