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道聴塗説  作者: 静梓
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ゲームの世界へ?

 現実世界にあるモノがファンタジー的な世界に呼び込まれるという物語類型は異界や貴種流離譚のところで述べたように歴史として古いものである。そうした物語類型を支える創造力というのは文学というものが生まれる以前から存在したと考えられる。


 物語世界の外(とはいっても、読者から見れば依然物語世界の内部ではあるが)からやってきたモノは幸福や災厄を運んだり、あるいはメタ的な視点から世界を批判する視点を読者に提供することができる。


 その類型の中の一つのパターンとして定着した、あるいは定着しつつあるものの中にゲームの世界にプレイヤー入りこむというものがある。


 そうした物語における利点は不可視な情報をゲームシステムというフィルターを介することで可視化することができるというものである。あるいは、そうした情報の可視化という仕組みをゲームというシステムによって説明することで、そういったものに慣れた読者に納得してもらうことができる。


 ここでいう不可視な情報の可視化というのは、キャラクターの持っている技能をステータスやスキルといったもので表すことである。現実世界では個人能力は体調などによって変化するものであるし、一部の例外を除けば技名を叫ぶなんてことはしない。


 まんがやアニメではそういった記号化がある程度文法の中に含まれている。まんが・アニメ的文法を小説の中に取り込むにあたって、ゲームという場はとても都合が良かったのだろう。


 本来不可視であるはずの情報は可視化されることで系統的に整理されうる。経験から乖離されえないはずの情報さえ系統化されるのである。プレイヤー視点からは系統化されている情報がキャラクターからは経験的に認識されているというギャップを利用した作品もないではない。


 プレイヤーとキャラクターという別々の視点をトリップという仕組みによって半ば強引に同一化することで、メタ物語世界の視点を物語世界の中に回収してしまうというのが、おそらくこうした小説の面白さである。


 そうした場ではリアリティというハードにファンタジーというソフトを読み込ませるのではなく、ファンタジーというハードにリアリティというソフトを読み込ませることになる。そこでは繊細なディテールすらすべてゲーム上の可視的なシステムや設定となる。また、物語に取り込まれたメタ物語世界の視点も、リアリティの重さに耐えかねて読者の想像力によって立つ舞台装置未満のナニカに貶められる危うさもはらんでいる。

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