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道聴塗説  作者: 静梓
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輸送

 蒸気機関や石油燃料エンジンの登場、道路状況の改善などにより人類の文明は一気に加速することになる。それ以前の輸送手段は人力か家畜に頼ったもので、生物的・肉体的な制約にとらわれていた。逆に言えばそうした制約にとらわれない速度を操作し得たことが、近代以後の急速な文明発展を支えたといえる。


 さて、徒歩で移動する場合、個人の能力にも大きく左右されるが、旅慣れた者でも一日で進める距離はおよそ三十から四十キロメートル程度だと言われる。ものを運ぶのであれば、途中で交代すれば人力でももう少し速くなろうが、個人が継続的に移動するのであればその程度であると考えて良い。


 馬車であれば速く進めるということは基本的になく、速度の面では徒歩とあまり変わらない。馬車馬というのは力こそあるが、速度はそれほど出せないものである。もちろん、短時間であれば多少速度は出せるが、それを継続させるのは難しい。物資の輸送という観点から論じるならば人力よりもかなり優れている。馬も生き物である以上、途中で休憩を挟まなければならないし、食事や給水は必要である。時期や地域にもよるが、整備された馬車道であっても現在の舗装された道とは比べ物にならないほど凹凸はあるし、馬が歩く生物的な振動もある。そのため、乗合馬車であってもそこそこ疲労は溜まるものである。


 乗馬ならばどうかというと、継続的な移動ということを考えるとやはり徒歩とそれほど変わらない。訓練された馬であっても人をのせて移動しようとすれば、一・五倍程度が限界である。乗っている者や荷の状況にもよるが、馬車よりもやや長時間走らせることができ、途中で馬を交換すれば徒歩の二倍程度の距離は稼げる。


 徒歩にせよ、馬車にせよ、乗馬にせよ、あくまでも移動に適した環境や状況があってのものである。悪天候であれば、もちろん速度はかなり落ちる。


 他にも、行軍などの集団行動であれば、一日で進める距離は半分程度まで落ち込む。また、輸送手段が未発達な状況であれば、集落などを襲撃し、人や馬などの食糧を確保しなければならない。襲撃された集落の人々を人足として雇ったり奴隷としたりすることもあり、徐々に集団が肥大化し、さらに行軍速度が落ちることもあった。


 水上の移動手段は地上以上に地域差や時代差が大きいので詳しくは述べないが、近代の実用帆船が一日七百キロを走破したという記録がある。近代の帆船で平均時速としては二十から三十キロメートル、それ以前は三分の一程度だと言われる。地上とは異なり継続的に移動させやすく、大量に物や人を運べる反面、環境による速度の差が大きくなりやすい。


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