ハロウィンとヴァルプルギスの夜
ハロウィンと言えば現在では万聖節前夜と訳されるが、元々は古代西欧、特にケルト系の祭りに由来するものである。中世から近代にかけてキリスト教へと取り込まれてはいるものの、世俗の風習を排除しきれなかった教会による苦肉の策であり、現在でもキリスト教の祭りとしてはあまり認知されておらず、大衆行事の一つである。また、異教の祭りとして禁止されることもある。
日本においてハロウィンが紹介されるとき、秋祭とお盆を合わせたものといった紹介がなされることがある。死者の祭りと収穫祭という意味ではそれほど間違った認識ではない。しかし、日本における収穫祭は穀物の収穫に由来するものが多いのに比べ、ハロウィンはカブや果実などに由来する。西洋における主要な穀物である小麦の収穫は夏であるため、日本の収穫祭とハロウィンを安易に同一視することはできない。
ハロウィンと言えば、現在ではかぼちゃのイメージが強いがかぼちゃの原産地は南北アメリカであり、元々はカブの類を用いていた。現在のようにかぼちゃが用いられるようになったのは、アメリカにおいてアイルランド系の移民が用いたのが始まりだとされる。
また、フランス語のリンゴを意味する「pomme」の語源とされるローマの果実の女神ポーモーナとも関わりがあるとされ、ポーモーナの象徴であるリンゴに関わる行事がある。
さらには、寒季の訪れを象徴する祭りでもあり、暖季を迎えるヴァルプルギスの夜と対をなす。どちらも生死の境が曖昧になると考えられており、どちらでもかがり火などを用いて、悪霊などを追い払う。
ヴァルプルギスの夜はハロウィンから数えてちょうど半年後であるが、冬を迎えるハロウィンに対して、ヴァルプルギスの夜は春を迎える行事である。魔女たちがサバトを開くとも伝えられている。
ヴァルプルギスの夜を越えた五月一日からは五月祭となる。麦が色づく初夏の祭りであり、豊穣祈願などを内包する。それと同時に、生育や繁殖といったことも象徴し、夏至祭りと並んで恋愛や結婚といったものとも関わりが深い。そもそも北欧においては夏至祭自体が五月祭りに由来するものだとも言われる。
五月祭りは、現在では民俗風習や宗教行事の他にもメーデーへも引き継がれている。




