小麦粉
日本で市販されている小麦粉には主に強力粉、中力粉、薄力粉の三種類がある。他にも、同じ分類であれば準強力粉、加工方法の分類では浮き粉、全粒粉、セモリナなどがあり、灰分の含有率により等級が決められている。
強力粉や薄力粉といった違いは加工方法ではなく小麦の性質によるものである。強力粉は粒の硬い硬質小麦から薄力粉は粒の軟らかい軟質小麦から作られる。
硬質小麦はデンプン粒子とほかの物質が強く結びついているため、挽いた時に粗い粒子になりやすい。粒子が粗いことで吸水性が高くなっている。また、たんぱく質含有率がやや高く、グルテンの性質が強靭かつ伸展性に富む。こういった性質から製パンに用いられるほか、乾燥パスタなどにも用いられる。基本的に製菓にはあまり向かないが、家庭でカステラなどを作るときはしっかりした生地になる強力粉を用いることがある。
軟質小麦は硬質小麦とは逆に細かい粒子となりやすい。たんぱく質含有率も低く、グルテンの性質が弱い。製菓や生パスタに向いているほか、揚げ物の衣やソースのとろみづけなどにも用いられる。粉の状態で薄力粉と強力粉を見比べると薄力粉の方が白っぽく見えるが、これは粒子が細かい分光を乱反射しやすいためである。
準強力粉や中力粉は薄力粉と強力粉の中間である中間質小麦から作られ、フランスパンや菓子パン、日本の麺類、お好み焼きなどに用いられる。
乾燥した気候に強いデュラム種は非常に硬質ではありたんぱく質含有率も高いが、グルテンの割合が他の硬質小麦と比べて低い。挽き割りのような粗い粒として用いられ、主に乾燥パスタやクスクスに使われる。一般に使われている小麦と比べると黄色味が強い。
小麦の硬さによって粒子の粗さが変わると言っても、完全に均質なわけではなく、硬質小麦であれば粗い粒子の割合が大きいというだけである。また、薄力粉であっても用途に応じて粗めに挽いたものを用いることもある。例としては、軟らかい口当たりを維持しつつ保湿性も高めたい、スポンジケーキで多めにシロップを打つ場合などである。
小麦には冬小麦と春小麦があるが、冬季の寒さが厳しい地域以外では主に冬小麦が栽培されている。一方で、硬質小麦の場合製パン適正は春小麦の方が高いとされる。
小麦粉の性質として、水の配分を変えることでパン生地、うどん生地のような硬めの生地からケーキ生地や天ぷらのタネなどのような軟らかい生地まで異なる状態にさせることができるというものがある。また、そこからさらに水を多めに加えて過熱することで他のデンプン類と同じように糊としても用いることができる。
さらに、油も吸着する。揚げ物では生地の水分を飛ばしつつ熱を加え、油を吸着させることで独特の食感が生まれる。クッキーやビスケットなどの焼き菓子では油を吸着させた粉を水分でまとめることで生地を作る。他にも、バターなどの油で炒めて水分で伸ばすことでシチューのルーを作ることができる。
他の粉と混ざりやすく、全体を均質にさせやすいため、作り方や環境にもよるが仕上がりにムラができにくく、プレミックス(調整粉)を作ることもできる。また、臭いを吸着しやすいため香りづけに使いやすいが、一方で保存状況次第では悪臭も吸着する。
添加用のグルテン粉も市販されているので、薄力粉から中力粉や強力粉、各種のデンプン粉から薄力粉などを作ることも可能と言えば可能である。しかし、グルテン粉は強力粉や準強力粉から作られるものであるため、中力粉や薄力粉とはグルテンの性質が異なり、食感などに違和感を感じることもある。また、強力粉と薄力粉と各種デンプン粉ではデンプンの性質が異なる。特に、デンプン粉と言ってまず思いつく馬鈴薯デンプン粉は粒子が大きいため保水力が高く、糊化したときの粘りが強くなりやすい。