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道聴塗説  作者: 静梓
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大学

 ヘレニズムとヘブライズムが中世西洋の柱だというのは言うまでもないことである。中世西洋における学問においても伝統的な学問の柱としてこの二つは受け継がれていくことになる。


 西洋中世における大学の設立は修道院などに附属した学問所と十字軍遠征による東ローマ及びイスラム圏の文化の発見とそこに内包されていたギリシア・ローマの学問の再発見が契機となっている。


 聖界と俗世、諸侯と国王・皇帝の対立や軍事行動による交通網の発達などによって交易商人や彼らの所属する都市の発展が促進されたという背景も存在する。


 現在ユニヴァーシティと言えば総合大学のことを、カレッジと言えば単科大学のことを主に指すが、ユニヴァーシティの語源であるウニヴェルシタスもカレッジの語源であるコレギウムも組合つまりギルドに近いものである。コレギウムに関して言えば寄宿舎のような意味もあったようである。


 法律の解釈書、教科書が現れたイタリアのボローニャでは各国から学生が集まった。そうした学生たちは消費集団として商人などに足元を見られ始めることになるが、そうしたものから身を守るために学生組合を結成、その後同郷団を編成することで市民や都市に要求を通すようになる。こうした形で生まれた大学では学生が教授の雇用主として強い力を持っていることが多かった。


 逆に教会付属学校から出たパリ大学では教授の力が強く、学生は教授たちに弟子入りに近い形をとる。パリ大学には人文学部、神学部、医学部、法学部の四学部があり、これは中世大学の基礎となった。学生たちはまず人文学部において学士を取得することが義務付けられており、その後他の課程のマスターやドクターへと進むこととなった。人文学部で学ぶのは文法・修辞学・論理学の「三学」と、算術・幾何学・天文学・音楽の「四科」のあわせて自由七科と呼ばれる当時の教養科目である。人文学部で学位を取得し教授として働く一方で、他学部の学生となっていることもあったようである。


 後に世俗諸侯や都市が大学を設立するようになると、学部がいくつか欠けることもあり、大抵は神学部がなかった。


 ボローニャ大学などでは富裕層や有力者の子弟が多く通い、平均年齢も高かったのに対して、パリ大学などではやや貧乏人が多く、平均年齢も低かった。後者の場合、生まれにかかわらず学位が取得できれば知識階級へと上昇し得るし、もし学位が取得できなかったとしても秘書や祐筆、家庭教師としての仕事を得られるため貧乏学生が集まった。


 現在のように大学入学試験というものは特に存在しなかったが、教科書も講義もラテン語や古代ギリシア語であったため、前提としてそれらを習得していなければならなかった。これは知識の保護や権威主義という側面の他に、複数の国から学生が集まるため、共通語としての側面もあった。


 ラテン語を学ぶ場は教会や都市当局が設立した中学校か、あるいは家庭教師を雇っていた。中学校では他に実務教育や宗教教育なども行っており、いわゆる初等教育とは異なるが簡単な読み書きを教える小学校も存在していた。


 話を大学に戻すと、大学に所属するためには登録料が必要であり、また、教科書は一つ一つが効果であった。当然図書館なんてものは存在しないため、貸本屋や書籍商から本を借り、筆写職人に書き写してもらっていた。これは学生に限らず、教授についても同じことが言え、一回の写本で教授の月収分が消し飛ぶということもザラだったようである。中には筆写職人として働くものもあった。


 授業は教授が教科書を注釈しながら読み進めるもの、教授の授業の解説、教授の論題に対する討論といったものが存在していた。何年通えば卒業というものではなく、論文や口頭試問などで学位を認められた時点でいわゆる卒業となる。各課程によってまちまちであるが、六年程度を基準に半分から倍程度の時間がかかったようである。


 大学の規模が徐々に拡大してくると、大学の周辺にラテン語や古代ギリシア語、ヘブライ語などの言語や自由七科の入門的部分などを教える予備部門が生まれていくことになる。

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