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道聴塗説  作者: 静梓
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さとう

 砂糖の話をしよう。


 現在ではテンサイなどを用いても生産されるが、元々はサトウキビから生産されていたものである。サトウキビの原産は南太平洋であるらしいが、砂糖として利用されていたことが分かっているのはインドが最古である。黒糖として用いられていたが、砂糖の精製方法がインドあるいはアラビアで確立され、東西へと広まっていった。精製方法は草木灰や石灰、牡蠣灰を用いて不純物を沈殿させ、上澄みを煮詰めて結晶化させるものである。


 日本へは奈良時代に薬品の一種として持ち込まれている。平安後期頃に菓子の類として扱われ始める。ただし、室町時代に砂糖の輸入量が増加するまで、甘味料は甘蔓やあめが中心であり、蜂蜜や砂糖は薬品としての側面が強い。甘味として用いられ始めたのちも国内で生産され始める江戸時代中期まで高級品であり続ける。


 中世西洋においても高級品であった。これは中世西洋においてサトウキビの栽培に適した地域が尽くイスラム圏に編入され、アラビア商人に独占されていたからである。一時は十字軍遠征の成果としてサトウキビ畑を手に入れるものの、オスマン帝国に東方を抑えられたことによってふたたび流通が制限される。その後、一般的に砂糖が広まり、食生活に変化がもたらされるのは十五世紀から十六世紀にかけて各国の植民地開発が進んでからのことである。そして、十八世紀にテンサイから砂糖が生産可能だということが発見されると、ヨーロッパでも砂糖の生産が広まっていった。


 日本の家庭で最も用いられているものは上白糖である。転化糖が含まれるため甘味自体は強いがコクがあり柔らかい甘味だと言われる。日本ではそういった甘味が好まれ、料理に甘味付けや味を定着させる目的で直接砂糖を用いることが多いことが上白糖の利用料が多い理由である。菓子作りの場合、焼き色を生かしたい場合には上白糖を用いる。


 三温糖はその名の通り、砂糖を精製した糖蜜を繰り返し加熱して精製したものである。転化糖の割合がやや多く、また、特有の風味をもっているため甘味が強く感じられる。そのため、煮物や佃煮などに多く用いられる。上白糖に比べるとミネラルを多く含んではいるものの、一度の食事で差が出るほどではない。流通している三温糖は均質化するためにカラメル色素で着色されている。


 世界で最も用いられているものはグラニュ糖である。高純度の砂糖でサラッとしており、癖がない淡白な甘みだと言われる。水に溶けやすく扱いやすいため、コーヒーなどの飲料に加える甘味料としても用いられる。


 テンサイ糖も黒砂糖と呼ばれることがあるが、一般的には黒砂糖と言えば糖分を分離精製していない含蜜糖のことを指し、黒糖と呼称される。黒糖や一度精製した砂糖に廃糖蜜を加えて再精製したものは加工黒糖として区別される。不純物を沈殿させるために加えられるカルシウムのほか、各種ミネラルを含む。砂糖として見るなら不純物であるミネラルの入った糖蜜を含むため、黒糖のショ糖純度は白砂糖と比較すると低いが、特有の風味や雑味によって濃厚な甘みが感じられる。ただし癖が強いため、用途は制限される。


 調味料としての砂糖は甘味を加えるほか、他の味を定着させたり、辛味や酸味、苦みなどを和らげ、魚などの生臭さを抑える働きを持つ。煮物は「さしすせそ」の順で調味料を加えると良いと言われ、砂糖は一番最初となる。これは塩よりも砂糖の方が分子量が大きく、また、塩に材料の水分を引き出し引き締める効果があることに由来する。


 他にも、食品に照りを加えることにも利用される。


 油の酸化やデンプンの老化を阻害する働きも持つ。バターを用いた焼き菓子の傷みを遅くしたり、わらび餅やすあまがすぐに硬くならないようにしたりする。また、加熱前のデンプンにも働きかけ、沈殿を阻害する性質も持つ。これはデンプンの間に入りこんだ糖分が水分に強く働きかけているためである。


 タンパク質でも同じことが言え、材料に含まれている水分を吸収することで、タンパク質の熱凝固を抑制し、特に卵料理を柔らかく仕上げたり、メレンゲの泡の戻りを遅くしたりすることができる。メレンゲに関して言えば、最初から砂糖を加えてしまうとタンパク質が水分を抱えた状態で安定させてしまうのでメレンゲの立ちが悪くなる。


 酸素の溶解を阻害することで油脂の酸化防止し、水分の吸着によって雑菌の繁殖を抑えることができるため、食品の長期保存が可能になる。


 市販のジャムにはゼラチンが加えられていることが多いが、果物に含まれるペクチンは酸に砂糖が加わることでゼリー状になる性質を持つ。また、水あめのように単体では固まらないものと結晶化しやすい砂糖が混合することで飴状に滑らかに固まるようになる。


 玄米から植物性乳酸菌を培養する場合やパン酵母などの餌として加える。特にパンの発酵は酵母菌が糖を分解したときに出す二酸化炭素を利用して膨らませるので、小麦粉の糖分に頼るときよりもよく膨らむようになる。


 煮詰める温度によって形状が変化し、カラメルやべっこうあめ、キャラメルやフォンダンなどそれぞれの温度で様々な利用方法がとられる。

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