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道聴塗説  作者: 静梓
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コミューンとギルド

 中世の都市について少し見ていくことにする。


 中世の都市は元々、国王や聖俗諸侯という都市領主によって支配されていた。しかし十二世紀ごろに広まるコミューン運動によって自治都市や自由都市が成立していくことになる。大商人たちが主体となって同盟・連盟を結び、都市領主に自治を求めてときに武力行使も含めた民衆運動を行っていく。基本的には都市やその影響下にある周辺地域の安定のためのものであり、都市領主の勧奨による共同体の結成も多かったようである。


 その結果として新しい市政機構の下の安定が築かれることとなる。聖俗諸侯が都市領主であった場合は、領主を含む都市在住の有力者を中心とした共同体が新機構を担い、寡頭政治的性格を有することになる。


 一方で王が都市領主であった場合、王領内では共同体による反乱は鎮圧、解散させられたが、聖俗諸侯と対立している都市では積極的に共同体を支持し、軍役賦役と引き換えに自由や自治を認めていった。


 また、周辺農村の領主や諸侯が都市に集まり、共同で都市を治めることで、実質的に都市国家が成立していったところもある。


 さて、中世都市における社会の構造は基本的に血縁・婚姻関係による世帯を中心とし、氏族としての大きなつながりや、奉公人などを含めた家族を基本としていた。親、子、孫のそれぞれの夫婦や兄弟がそれぞれの配偶者とともに一つ屋根の下で暮らすということもあったようである。


 中世の社会は身分制社会であり、自己の身分に応じた団体に一つ以上所属しなければならない。一般的には同業者組合に所属していたようである。いわゆるギルドであり、血縁関係だけでなく、同業という仲間意識によってつくられた団体である。


 商人のギルドは大都市を中心として活動する交易商人たちが商業上の目的で結成したものである。上記のコミューン運動が上位者からの許可という形であるのに対し、ギルドは下からの秩序形成であるといえる。


 手工業者のギルド(ツンフト)は、同一職種の手工業者たちが共同の利益の保全と生産と販売の競争の規制のための自主的な団体であったが、都市領主側が労働市場への介入するために規約を与えたことで、組織化が促進された。


 商人のギルドは都市や大都市を中心とした諸都市の経済活動全体を制御しており、手工業のギルドは親方が集まり、製品の品質と価格の管理を行っていた。手工業ギルドは専業分業が進み、大都市で少なくとも百、最大で三百以上もの職種が存在していたようである。同じ職種で二つ以上のギルドが存在している場合、それぞれの過程によって階層が生まれ、経済格差が生まれることもあった。


 職業集団は一般に、親方、職人、徒弟によって構成されている。


 徒弟は、金銭を親方に支払い、親方に雇われることで、衣食住を提供されながら親方の下で技術指導を受けることができた。徒弟期間は最短の職種で一年程度、最長のものでは十年以上も修行を積まなければならなかった。最も多かったのは五年前後である。


 徒弟期間が終わり、一定以上の能力と資金があれば、親方の承認と加入金の支払いによって親方になることができた。また、職種によっては親方の寡婦も親方権を継承しえた。親方の役割は新規の親方の承認やギルドの運営への参加などの権利を持っていた。


 親方になるには力量が足りなかったり、力量が足りていてもすぐに店を持つことができない場合、ほかの親方の下で職人として働くことになった。また、修行の一環などを含め、都市から都市へと渡り歩く遍歴職人も多く存在していた。職人の雇用は多くが一年契約で遍歴職人などの場合には仕事の請負をすることもあった。外部の職人を雇う場合には、技術を盗まれないように親方は気を遣う必要があったようである。


 商人たちの活動は商会を中心にし、各地に支店を設けていった。単純な交易のみでなく、金銭の貸付などの金融業も行っていた。海路が開かれると海上保険や為替などの技術をイスラム圏から取り入れ、また、新大陸から金銀が流入し始めると金銭の預かり証書による取引を始め、これが紙幣の走りとなった。


 単純なものづくり集団のみでなく、医師や法律家のような同業者組合も存在していた。大学もその一つと言えなくもない。親方‐徒弟という関係はそのままとは言えないが教師‐生徒との関係に類似する。


 大学の成立はまず学生の組合が認められることもあれば、教師の組合が中心となることもある。大学に所属する人々は教会の管轄下にある存在として聖職者特権が認められていた。大学で教えられていたことは神学、法学、医学及びその他の教養とされる諸々であり、これらは同時に研究もなされていた。


 各地、各国から集まる労働者階級にない多くの消費者の存在は、食品や消耗品をはじめとした各種の需要を創出したほか、書物や写本製作や製紙業、居酒屋や宿屋などのサーヴィス業の発展に寄与し、都市社会の活性化を引き起こした。


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