貨幣3
今度は中世の貨幣価値を現在の価値に換算してみることにする。もちろん、今と当時では物の価値が違いすぎるため、単純に比較することはできない。また、時代によって貨幣の重さも違い、また地域差もあるためそのすべてを追うこと困難である。あくまでも一例として挙げていく。
今回も貨幣の単位が統一されていて分かりやすいイングランドを例にとる。
まず、基準となるデナリウス銀貨相当のペニー銀貨。これは、ペニーには大銅貨も存在し、これらは同じ価値である。これを現在の価値に換算すると、
銀貨=大銅貨=700~800円
程度となる。ここをこれからの基準として考える。
イングランドの低額補助貨幣には半銀貨、四半銀貨に相当する中銅貨、小銅貨が存在する。
中銅貨(半ペニー)=ペニー/2=350~400円
小銅貨=ペニー/4=175~200円
この下にも二十四分の一ペンス(ペニー)に相当する単位マイトが存在するが実際の貨幣は発行されていないようである。
また、ペニー以下の銅貨は内乱時に製造が中断されたため、トークンと呼ばれる代用貨幣も登場している。内乱の終結後、貨幣の製造が再開されると当然使用は禁止されている。
高額貨幣にはまず、大型銀貨であるグロート(ゴート)銀貨がある。これはペニーの四倍に値する。
大型銀貨=4ペンス(ペニー)=2800~3200円
この下にも一.五倍銀貨や二倍銀貨、三倍銀貨なども発行されているが、換算は省略する。
ペニーより上位の基準として古代ローマのソリドゥス金貨に相当するシリング銀貨がある。これは銀貨の十二倍であるため、
シリング銀貨=12ペンス=8400~9600円
となる。その下にも半シリング銀貨(6ペンス銀貨)が存在する。
金貨としては六シリング八ペンス(八十ペンス)に相当するノーブル金貨が発行されている。同価値の金貨としてエンジェル金貨というものも存在する。
ノーブル金貨=80ペンス=56000~64000円
ノーブルやエンジェルには半金貨や四半金貨に相当する貨幣も存在する。エンジェル金貨は後に十シリングに改定されている。
他にも一ポンド相当のソブリン金貨や二ポンド金貨、五ポンド金貨が存在し、一ポンドは二十シリングであるため、
ソブリン金貨(ソブリン/ポンド)=20シリング=240ペンス=168000~192000円
程度となる。
また、元々は金貨として発行されたが、のちに大型銀貨へと変更されたクラウン金貨・銀貨が存在する。さらに、フランスにおけるフィレンツェのフィオリーノ金貨を表すフローランからきたと思われるフロリン銀貨もある。それぞれ、
クラウン銀貨(金貨)=5シリング=42000~48000円
フロリン銀貨=2シリング=16800~19200円
となり、また、二フロリン銀貨や半クラウン銀貨なども存在している。しかし、あまりに大きな銀貨は流通に不便であるため、貯蓄用や記念硬貨としての側面が強い。
ノーブル金貨は元々フィオリーノ金貨の二倍程度の価値であったことを考えると二フロリン銀貨はノーブル金貨を意識したものであろう。実際に銀貨の前にフロリン金貨も発行されているが金の含有量が低すぎて流通にのらず廃止されている。
それぞれの貨幣の名前が単位としても用いられることもあるため、かなり複雑である。
以上の換算は単純に貨幣価値からの算出であるため、物価から考えるならばさらに三から五倍程度上昇する。というのも、労働者の日当が四ペンスであり、現在の肉体労働系のバイトが一万円前後となるため、一ペンス二千五百円程度とも考えられるからである。食費から考えると成人男性一年分の穀物で五シリング程度であり、一石の米が七万五千円程度、一ペンスあたり千二百五十円程度となる。
また、アメリカ大陸から銀が流入してくると、銀の価値が下落し、物価が主食で二倍から四倍、他では五倍から六倍程度まで上昇する。それに加え、ペニー銀貨の重さは当初1.5g程度であったが、貨幣経済の浸透とともに徐々に軽くなり、最終的に0.5g程度になっている。つまり、貨幣価値が三分の一程度まで下がっている。銀の価値の下落と銀貨の軽量化により、銀貨一枚が五十円から百円程度になる。労働賃金からの換算ならば千円程度。食費から考えると二百円程度となる。
中世のコインは鋳造ではなくハンマーで叩いて作られている。その他にも、水車などが用いられ、蒸気機関の発明後は蒸気力でプレスされることもあった。




