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8/11

其の八 4月 入学式から数日後

この「其の八」あたりで外堀もだいたい埋まることになり、本編での撮影話が進むことになりました。

番外編は、其の九にていったん終了します。

続いて、本編の第二弾をUPしていければいいなぁと^^



其の八 4月 入学式から数日後


 放課後、生徒会室のドアをノックする桐生。


桐生

「失礼します。1年桐生誠也、入ります」

早見坂

「あぁ桐生くんか。待っていたぞ。遠慮しないで中へ入ってくれ」

桐生

「はい、ありがとうございます」

早見坂

「入学おめでとう。君の入学を、私もここにいる琴音も待ちわびていた」

藍原

「桐生くん、ご入学おめでとうございます。お会いできて本当に嬉しいわ」

桐生

「それは、星杜学園の映画撮影のためでしょうか」

早見坂

「ふむ、やはりいきなり核心をついてくるか。君と話す時は、気をつけないとならないな」

桐生

「自分で言うのもどうかとは思いますが、僕と早見坂会長は似てるように感じますが?」

早見坂

「そうかもな」

 くっくっと笑う早見坂。


藍原

「それじゃ、もう映画の話を始めちゃっても大丈夫かしら」

桐生

「はい、構いません。その為にここへ来たんですから」

藍原

「ありがとう。えっと自己紹介が遅れましたけど、私は藍原琴音といいます。早見坂会長から、直接、映画の話を聞かれているとは思いますが、今年度の脚本は私が担当しています」

桐生

「藍原……副会長さんですね。1年の男子生徒の間でも、いろいろと話題になっていますよ」

藍原

「まぁ、話題だなんて、悪口だったら嫌だわ」

桐生

「きれいな先輩だって、もっぱらの評判です」

早見坂

「ゴホンゴホン。あー、桐生くん。琴音は、昨年の創立記念前夜祭でミス星杜に選ばれているくらいだ。そういう男子生徒もたくさんいる事だろう」

桐生

「そうですか」

早見坂

「まぁいい。琴音を誉めて貰うと、私も嬉しいからな」

桐生

「……。その発言の意図は、ストレートに受け止めて構わないのでしょうか」

藍原

「桐生くん、ヤボな質問はなしね」

桐生

「すみません。失礼しました」

早見坂

「琴音、いいじゃないか。恥ずかしがる事でもないだろう」

藍原

「えぇ、でも……だって」

 早見坂と藍原、すっかり自分たちの映画設定にはまり、藍原、もじもじと恥ずかしそうに頬まで染める。


藍原

「それでね、桐生くんには、キーパーソンを演じて貰うつもりなの。桐生くん、私の想像していた雰囲気にかなり近いみたいだし、いいものができそう!」

桐生

「僕なんかでお役にたてるんなら、いいですけど」

早見坂

「桐生くん。君にはこの映画の全容を明かそうと考えている」

桐生

「ということは、他の生徒は、ちゃんとしたストーリーを知らされないんですか」

藍原

「そうね、各自が自分の出演するシーンから想像するくらいかしら」

桐生

「なぜ、僕には?」

早見坂

「以前桐生くんからも言われたんだが……主人公役の波原さんには、映画の件を話さないで進めることに決めた。映研の部長の見たてで、彼女には演技はできそうにもないだろうという事もあってな」

桐生

「本気でいい映画を制作したいと思うのならば、僕もそれが最善だと思います」

藍原

「なのでね。主人公が映画のストーリーを知らないままで、撮影が進んでいく事になってしまうのよ」


 しばらく考える桐生。


桐生

「要するに、僕から波原の情報を引き出したい、ということなんですね」

藍原

「流石は桐生くん、その通りよ。そして、できれば私が思い描いているストーリーに沿って撮影が進むように、まわりの登場人物たちへの接し方などのアドバイスを頂きたいわ」

桐生

「そうですね……アイツの性格は単純ですし、手に取るように分かりますが」

早見坂

「それは良かった。桐生くんに力を貸して貰えるならば、主人公が何も知らなくても、なんとか琴音の脚本通りに進められそうな気がしてくるな」

藍原

「本当にそうね」


早見坂

「ということで、まずは桐生くんの立ち位置を確認しておきたい」

桐生

「立ち位置といいますと?」

早見坂

「映画の中での設定なんだが、君の本当の年齢は、私と同じということになる」

桐生

「僕は高校3年生なんですか?」

藍原

「桐生くんはね、この星杜学園に早見坂会長と一緒の年に入学したのよ。そして1年間、2人はクラスメートとして時を過ごし、ひょんなことから学園のある秘密を知ってしまうこととなるの。2人は学園を守るためには特殊な力を持つ生徒が必要で、桐生くんは高校2年に上がるはずの年に、中学3年と偽って波原さんの中学校へ転入することにする。そして、その力を持つ生徒というのが波原さんである事を確信し……」


 藍原さんの説明が続く。


桐生

「だから僕は、本来は高校3年生のはずなのに、今年波原と一緒にここの星杜学園に入学したきた、という設定になってるんですね」

早見坂

「そうだ。君と私は、誰も知らない秘密を分かち合い、完全なる信頼関係で結ばれている親友同士だ」

桐生

「会長と、僕が親友同士って」

早見坂

「どうだ、なかなか面白いだろう。入学したての1年生が、3年の生徒会長と親しいんだぞ」

桐生

「そういった事にはあまり興味はありませんが」

早見坂

「まぁ、いい。そうそっけ無い事を言うな」

藍原

「それでね桐生くん。あなたには、これから早見坂会長のことは『恭一』と呼んで貰うわ。早見坂会長は、あなたのことを『誠也』と呼ぶことになる」

桐生

「きょう……いち……」

「桐生くんには、私を下の名前で呼ぶところから始めて貰う事になるな」

藍原

「会長。『桐生くん』じゃなくて、『誠也』ですよ」

早見坂

「おっと、そうだった。気をつけないと、なかなか呼べないもんだな」

藍原

「ちゃんとお願いしますわ」

早見坂

「わかってる。大丈夫だ、心配するな。琴音の時にはすぐに馴染んだろう?」

藍原

「そうでしたね」


 早見坂と藍原、意味ありげな微笑みを交わし、多少とまどい気味の桐生。

3人、続けて具体的な小春攻略作戦を練り始める。



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