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3/11

其の参 小春の入学3ケ月前

毎回書いていますが(笑)、この作品は「星杜学園1年 波原小春 168㎝ 60㎏。 けっこう大食い!」の番外編です。本編のネタバレ?を含む、裏話のあれこれとなっていますので、本編の方をちゃっちゃとお読みになってからお越し頂くと、よりいっそう味わい深く読めるかな、と……^^

 桐生、見知らぬ番号からの電話に出る。


早見坂

「突然の電話で申し訳ない。私は、星杜学園に在籍している生徒で、早見坂恭一という者なんだが、桐生誠也くんの携帯電話で間違いないだろうか?」

桐生

「ええ、そうですけど……僕になにか?」

早見坂

「実は、君の高校進学の件で、話したい事があって電話をさせて貰った」

桐生

「高校進学……? どういったことでしょうか?」

早見坂

「桐生くんは、どこの高校を受験するかもう決めているだろうか。ぶしつけな質問で申し訳ないんだが」

桐生

「え? ええ、まぁだいたいのところは」

早見坂

「どうだろう、桐生くん。私が通っている星杜学園も、君の進学先の検討対象に加えて貰えないだろうか?」

桐生

「星杜学園……ですか。始めて聞く名前ですね」

早見坂

「星杜学園には、桐生くんが通う中学校からの卒業生はまだ一人もいないんだが、だがとても素晴らしい高校で……」


 早見坂、桐生に星杜学園の宣伝を多いに語る。


早見坂

「そして、桐生くんに星杜学園に進学して貰いたい最大の理由というのが……」


 早見坂、桐生に星杜学園の伝統のヒトツである『学園全体で1年かけて映画を撮る』ことについて多いに力説する。


桐生

「そうなんですか。僕の知らないおもしろい高校があるんですね」

早見坂

「興味を持ってくれたのならありがたい。手前みそにはなるが、我が学園は、文武両道を言葉だけでなく、きちんと実践していて、努力を怠らなければその先の進路についても問題はない。設備だって十分以上に整っているし、決して君にとっても悪い話ではないと思う。どうだろう、星杜学園で楽しい高校生活を送るのも良いとは思わないか。そして桐生君の持つその特別な力を、映画の中で存分に生かして貰いたい」

桐生

「僕の持つ力……。そうですか、そんな事までご存じなんですね」

早見坂

「申し訳ないが、そうだとしか答えられない」

桐生

「早見坂さん、でしたよね。それじゃ僕のクラスには、僕よりも強い力を持つ人間がいるのもご存じなんですか?」

早見坂

「なんだって? それは本当の話かい?」

桐生

「ええ。ただし本人は、自分の力についてよく理解できていませんけどね」

早見坂

「それは凄い! 君よりも強い力を持つ生徒がいるだなんて、そんな事は全く知らなかった」


 興奮を隠せない早見坂。


早見坂

「やはり君たちは、我が星杜学園に進学するべきだよ。星杜学園は、神聖かつエネルギーあふれる場所に建てられた気脈の通る学園なんだ。だからこそ、そういう特殊な力を持つ生徒たちが、毎年エネルギーに引き寄せられるように進学してきている。君たちも例外ではない」

 

 会話に少しの沈黙。


桐生

「そう、なんですか。わかりました。それに全寮制というのも、僕にとっては魅力です。それはきっとアイツにとっても同じでしょう。僕たちは2人とも、親を亡くしていますから」

早見坂

「あ、これはすまない。言いたくない事を言わせてしまったかな」

桐生

「いえ、構いません」

早見坂

「ちなみに、その力を持つクラスメートの名前を教えて貰えるとありがたいんだが」

桐生

「彼女は、なみはら……波原小春といいます」

早見坂

「これは驚いた……女の子だとは。女の子が強い力を持つことは、まれなんだが。なみはらこはる……うん、良い名前だ」

桐生

「あいにく僕と波原は、相性があまり良くないのですが、星杜学園を紹介するくらいはできるでしょう。それに、アイツにもいろいろ事情がありそうなので、誰も知らない遠い高校や、全寮制という単語にはひきつけられるはずです」

早見坂

「では近いうちに、星杜学園の高校案内のパンフを桐生くん宛てに送る事にしよう。桐生君から、その波原さんとやらにも渡して貰えるとありがたい」

桐生

「はい、わかりました」


 その後も、早見坂と桐生の会話しばらく続く。


早見坂

「今日はいきなりの電話、すまなかった。そういう事で、くれぐれもよろしくお願いしたい」

桐生

「こちらこそ、楽しそうな魅力あふれる高校を紹介して頂き、ありがとうございました。波原なら、今日僕が聞いたような話を聞けば、一も二もなく星杜学園に進学したいと思うはずです」

早見坂

「それは良かった。こちらも楽しみに待っている。星杜学園には、先ほども話したように足長制度もあるから、桐生くんの成績ならば授業料その他全ての費用が免除になるだろう。ただし、波原さんについては、よく分からないが」

桐生

「彼女は、ドがつくほどの天然ですが、テスト成績は悪くはないはずです。自分の力をコントロールできないようですから、もしかすると切羽詰まって試験に力を発動させて、満点合格なんてことも起こりうるかもしれませんよ」

早見坂

「それはそれで問題ではあるな。やはり我が学園に進学して貰って、波原くんには力を制御する方法を覚えて貰った方がいいかもしれない。もちろん桐生くん、君にしてもそうだ。強い力を持つ者は、その力が強ければ強い程、コントロールする力も強くなくてはならないのは分かるだろう?」

桐生

「そうでしょうね」

早見坂

「何かあれば連絡するかもしれないが、構わないかい?」

桐生

「はい」

早見坂

「それじゃ今日はこれで失礼する」

桐生

「わざわざありがとうございました」


 それから数日後。


早見坂

「藍原。映画の主役の件なんだが、心あたりがあると話した生徒に、先日連絡をとってみた」

藍原

「まぁ、そうなんですか。で、どうでした?」

早見坂

「手ごたえはあったと思う。桐生誠也というんだが、実はそいつからヒトツ面白い話を聞いた」

藍原

「面白い話ですか?」

早見坂

「なんとな、同じクラスに、そいつよりも強い力を持つ生徒がいるらしい」

藍原

「同じクラスに、特殊な力を持つ生徒が2人もですか!?」

早見坂

「彼いわく、そうらしい。もちろんその生徒もここに進学するように誘ってもらう事にしたが」

藍原

「さすがは早見坂さんですね。役者候補が多ければ多いほど、私にとっては好都合です」

早見坂

「だろう? ただな、藍原。その生徒は女子だぞ」

藍原

「女子生徒さん、なんですか?」

早見坂

「確か、おまえの中では男子生徒が主役のはずだったな」

藍原

「男子生徒の方が、持つ力が大きいと認識していましたので……いえ、でも大丈夫です。少し手を加えれば済みますし、それに学園を守る生徒が、女子生徒っていう設定も、それはそれで面白くなりそうです」

早見坂

「藍原に問題がないのであれば、それでいい。さて、ここまできたら、後はその2人が無事に進学してきてくれることを願うことぐらいしか我々にはできないな」

藍原

「はい、そのようですね」

早見坂

「おっと、そうだ、そうだ。肝心な事を忘れるところだった。藍原、桐生は、もしこのままお膳立てが揃って映画撮影になるとした場合、その女子生徒には、映画だって事は話さない方がいい、と言っていたぞ」

藍原

「それは、全校ぐるみでその女子生徒を騙す、ということになりますが?」

早見坂

「桐生は、波原には絶対に演技なんてできないだろう、って断言していたからな。あぁ、その生徒は波原小春というんだ」

藍原

「でも……早見坂さんも台本は読まれましたよね? あれを、主役の生徒に何も言わないで撮るというのは、いろんな意味で難しいというか、精神的な面などは大丈夫なんでしょうか」

早見坂

「桐生いわく、彼女はかなりな天然だそうだから、途中で本人が気付くことはまずないだろうとも言っていたが」

藍原

「そうは言っても……。でも、そうですね、映研の部長さんたちとも一度話しあってみましょうか」

早見坂

「それがいいだろうな」

藍原

「まぁ本音を言えば、良い映画を撮れるんでしたら、その生徒さんを騙してもいいかしらなんて、思ったりしなくもないんですけど」

早見坂

「やはりな。藍原の性格は、良く分かっている」

藍原

「まぁ、早見坂さんったら」


 2人、顔を見合わせて、にんまりと笑う。



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