第七話
ふぅ、と安堵の息をついた、その時だった。
「よぉ」
びくっ、と肩が震えた。
しまった。誰かいたのか。
慌てて周囲を見渡したが、声の主どころか猫の子一匹見当たらない。
部屋は静かなもので、動くものといえば開いた窓のカーテンが風にパタパタとひらめいているくらいだ。
風の音と聞き違えたのだろうか。
志貴は不思議そうに首を傾ける。
「ここだ、ここ」
今度は、はっきりと耳に届いた。
呆れを含んだその声は、どうやら先ほどまで寝ていたベッドの方から聞こえてくるようだ。
もう一度、注意深く周辺を眺め見るが、人らしき姿は見えない。
気になるものといえば。
隣の壁に、黒い大振りの剣が立て掛けてあるのが目に入る。
柄の部分に唐草模様の装飾が施され、よく研がれた刀身はまるで鏡のように滑らかで。素人なりに美しいと思う。
鋭い切っ先が、キラリと光った。
「おう、俺だ」
今度は、正面から声が聞こえた。
ようやく見つけてくれたのが嬉しいのか、目の前の剣は上機嫌に口を聞いた。
「あんまり驚かないのな」
思ったよりも薄い反応が気に入らなかったのだろう、彼は不服そうに言った。
正直なところ、先ほどのことで頭がいっぱいだった彼女にとって、剣が喋ろうが何しようが大した問題ではない。
問題。そこまで考えて、彼女はピタリと思考を止めた。
「えっと・・・、」
ようやく落ち着いてきた頭は、どうやら状況に追いついていないようで。
「ここって、どこですか?」
今更ながら、と心の中で思いつつ彼女は口を開いた。