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第三話
「僕の仕事はね、誰かに『何か』を届けることなんだ」
届け人。
文字通り、そういう意味なのだろう。
彼女は静かに頷いた。
人でも、物でも、形のないものでも。
世界にあるものなら、何でも届けてくれるのだという。彼女が指すそれより広義での意味なのだと教えてくれた。
「これでも、結構大変なんだよ?」
依頼は次々と舞い込んでくるし、危険なところにも行かないといけないし。
彼は、わざとらしくため息をついてみせる。
ズレを、感じた。
今に始まったことではない。彼に会ったときから少しずつ感じていたこの感覚。
彼が原因なのか、はたまた自分の心の中にあるものなのか。
膨らんだ違和感を抱きながらも、説明のつかないその感情を、またしまい込んだ。
「だからね、いつも上手くいくとは限らない」
彼はにっこりと微笑んだ。
再び、ぞくりと背筋を伝う違和感。
彼の表情を見て意味を理解したときには、もう遅いと気づく。
「・・・でさ、僕がわざわざこんな話をするために君を連れてきたと思う?」
その表情を崩さぬまま、彼は告げた。