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仮面少女と騎士さま。  作者: 小椿 千冬
一章 目が覚めると、そこは異世界でした。
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第二話

「どうしたの?」


食べないの?

彼はそう言って、目の前に並べられた料理に手を伸ばす。


「あの・・・・・、」


彼女は苦笑すると、先ほどから話そうと決意していたことを口にしようとした。


「ああ、お金なら心配しないで。僕の奢りだから」


またもや目論みが失敗したことに、内心がっくりと肩を落とす。

そんな彼女を知ってか知らずか、彼は頗る上機嫌だった。


さぁ、遠慮なく。

断れずに、皿に盛ってあるシーフードサラダを口に入れる。


「美味しい?」


「はい」


正直、味なんか分からない。

床に赤の毛氈が敷き詰められ、天井を見上げれば豪華なシャンデリア。優雅なクラッシック音楽の生演奏。さながらどこかの式場のよう。


もう予約したからと半ば引きずられるように連れこまれた、洒落たレストラン。目の前の彼はともかくとして、制服姿の女子高生には、非常に居心地が悪かった。


「あのっ・・・・・!」


驚くほど、大きな声が出た。

周囲の人が、何事かと視線を向けるが、気づかない振りをして。


「何だい?」


「どこかで、会ったことあります?」


ここに来てようやく口にできた言葉。


名前も知らないような人に着いてきてしまった。真面目なことだけが取り柄な彼女なら、絶対にしないこと。

だから、自分をそうさせた理由を知りたかった。


少し間を置いた後、ぷっ、と笑いを堪えるような彼の声が聞こえた。


「あの・・・・・」


何か可笑しいことをしただろうか。

笑い続けていた彼は、困惑した瞳に気がつくと、ごめんね?、と小さく呟いた。


「僕は、こういう者です」


質問には、イエスともノーとも言わず。差し出されたのは、掌サイズの小さな紙。黒と白が基調の、和風デザインの名刺。華やかな彼には似合わない、とてもシンプルなものだった。


「・・篠塚・・・・銀之助・・、さん」


名刺同様、和風でシンプルな名前は、色素の薄い髪と翡翠の瞳をした彼には酷く不自然なように思えた。


「職業は・・・、届け人・・・?」


届け人。見慣れぬ言葉に、首を傾げる。配達人?郵便局にでも務めているのだろうか。


「当たらずとも遠からず」


言葉にするより早く、彼は答えた。


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