記者さん
07:30
「しかし、昨夜は随分と遅い就寝でしたが…」
フェルザ―ノ学院までは車で約40分かかるが、それでも圧倒的に近い方だ。遠い人は大陸西端で2万kmある為当然学院内寮に住む。
しかし車内の時間も時間なので、時折雑談もある。
「ん、まあ予算でちょっとね…昨年の文化祭予算を今年は約20%上にしろと。創立300周年記念式典同時開催があるからという理由で」
「それは…いささか多すぎでは?」
フェルザ―ノの文化祭は伝統に名を恥じぬ豪華さで、一般国民に魔術師の良さを知ってもらうための一大行事であり、予算配分も自ずと大きくなる。そこに二割増しは大きすぎる
「生徒数はほぼ一定で、予算も増微でこの要求、しかも最高の理事会[卒業生で国に貢献した人が天下り仕切る。老害とも言う]から。何とかして最高10%増までに留めないと、それでも部費の削減も視野に入れないと…きついわ…」
仕事モ―ドの凛々しいお姿をじっくり見ようと思ったのに…
[ちっ…3か…]
下手な隠密の人間2人と高度な手練れが1人、多分そいつは挑戦状だろう。
素早く指で
[ビル上、3、警戒せよ]
フェンは前を向きながら軽く頷く。
おそらくは偵察だが、一応はSIGをス―ツ[燕尾服は柄ではない]上から触る。
「ちょっと、聞いてますか?」
「え、あ、申し訳ありません、少し…」
「もう、チェ―ニさん」
「申し訳ありません」
お嬢様は少し拗ねたような可愛らしい声で全くもって怖くない睨みをする。
さっきの凛々しい姿が見れなかった分も十分埋め合わせる顔です。本当にありがとうございます。
しかし敵がうざいな…どう始末しよう…。
人差し指を曲げて無意識に唇に当てる。
その動作をバックミラ―越しで見たリュミエ―ルは少し悲しそうな顔になったのを2人は気づかなかった。
0800hrs
フェルザ―ノ王立学院
正門には朝早い生徒達で既に賑わって、ロ―タリ―には高級車が停まり、運転手や執事が降りて生徒を下ろす。
その中で
「来たわ、イルミナルさんよ…」
「生徒会長がいらっしゃったぞ!」
一際高級車が正門ロ―タリ―の一番真ん中に停まる。
生徒達は今までのざわめきが変わり、校舎までの中央通りが十戒のごとく人波が切り開く。
いつも通りに国王SPみたいな眼光鋭いイケメン執事がドアを開けると
「おはようございます」
頭を下げる女性に全員が頭を下げたり見惚れたりする。
この名門フェルザ―ノ王立学院において歴史上最強にして最高の生徒会会長、リュミエ―ル・イルミナルの登校である。
毎度この光景を見ると、いかにお嬢様が凄いかが分かる。
まあそうだ、ここまで容貌整って性格良く最強で絶対権力の理事会を歴代では有り得なかったねじ伏せるという事もやってのけたお方なのですから!
「チェ―ニさんありがとうございます」
「いいえ、お気をつけて」
完全学校モ―ドのお嬢様はさっきまでの笑顔でなく、淑女のように公爵家長女の笑いになる。
あの仮面は親友か学友でも特別な方以外には破れません。
執事は基本的に待機か、学生ならば執事養成コ―スという場所で厳しい訓練をこの学院で受けます。
しかし私は特例でお嬢様の盾となりひいては学院の皆様に害なすものの駆逐を任されていますので、授業妨害無ければ自由に動けます。
「さて…まずはさっきの敵が居るか…」
「見つけました!チェ―ニ・スキアさん!」
「……ちっ…何だ?」
「今思いっきり舌打ちしませんでしたか?!しましたよね?!」
「気のせいだ、チビ」
「ひどっ!成長発展途上です!」
「さいですか…」
ひょっこりと現れたのは、「報道」の腕章を付けた女性。
フェルザ―ノ王立学院7年生、ヘッドフェル子爵家子女のレン・ヘッドフェル様だ。
15歳にしては身長が低いのでマスコットキャラ扱いであり、私にとっては面倒な相手である。なぜなら
「今日こそチェ―ニさんの強さの秘密を教えていただきます!」
腕章通り、彼女はこの学院で購読率90%越えの週刊報の記者なのである。
しかもエ―スで簡単に引かないジャ―ナリズム魂を持っている。
「良く食べ良く寝て良く動く。それだけだ」
「ほうほう…、で、本当は?」
「だから「本当は?」…」
な、面倒だろ?
てか
「私に取材してメリットは?別の記事もあるでしょう」
「今、生徒会長リュミエ―ル様に次いで注目高いのがあなたなのです!」
ずびし!と指される。
………はっ?
「趣旨が良く分からないのですが?」
「女性の救世主[メシア]!」
「ん?」
「校則違反の馬鹿共を叩きのめす人が、10人以上の女性の証言をあわせたら、特徴にあうのがあなたしか居ないんです!」
「ふむん…」
ああ、確か校則を破りみだりに平民階級の国外女生徒に権力振るった貴族生徒が跋扈するから討伐してくれとお嬢様に命じられて…粛清と生徒会法廷に送った覚えが…正直お嬢様のお願いポ―ズ以外覚えていない。
「知らないな」
「そんな事ありません!第一、イルミナル家の執事は最強の傭兵という情報もあるのですから!」
思わず吹きそうになった。傭兵か…まあ似てて似ないが…いい加減うざいし、彼女を改めて脅威と認定する。
だがここで言われっ放しも癪なので…
「時にヘッドフェル様」
「レンでお願いです」
「…レン様、シ―クレットシュ―ズは15より10cmがバレない秘訣です」
思わず顔がニヤリとする。
言われたレンは顔が真っ赤になり、俯いてしまう。罪悪感?ございません
「それでは」
そのまま立ち去ると背後から
「絶対にあんたの正体見破るからな――!!!」
あ…火を付けたか?
しかし気にせずに目的地に向かう。
次回は少し際どいです。