密会2
「なぜ先輩がここに・・・」
リュミエールの問いに彼女は
「さあ、カールがここに来いって言うから・・・ああ、カールは知り合いなの、王国軍の黒い部分のね」
ハルネスはさもないと言う。カールは苦笑しながら
「あっさりばらすなよ・・・まあ事実だけど。で、調べはついてるか?」
「ええ、諜報5課の傑作よ、間違いないわ」
「諜報・・・5課?」
セネルとリュミエールが同時に疑問に思う。
王国軍には情報局という公的公安、スパイ組織があり、その主力にして花形の諜報部は諜報1課が国内、2課が海外、3課が要人[事実上王室]、4課が傭兵、ギルドの監視と管理をし、5課は存在しないはず。
「・・・なるほど、私設情報部隊の通称ですね・・・まさか本当に居るなんて」
「よくご存じね、いえ、貴女なら知ってるよね」
その疑問を打ち砕いたのはレンである。
「私たちミッドウェー家は陸空軍の重鎮にして、情報を支配するためにそのような組織を機密費で作っているんですよ、で、いつも依頼している彼から今回は逆依頼を受けたのよ、しかも私も大きく関わっているから協力したの」
「やっぱり・・・」
その言葉にセネルが反応する
「夜会が原因でチェーニが連れて行かれたのですか?」
「ええそうよ、政略半分、恋愛半分の婚約がここまで大事になるなんて、付き合いも大変だわ」
「好きなんですか?」
「まあ少なくとも仮面夫婦ではないわ」
リュミエールとレンが驚く
「どういうことですか・・・華の夜会で大事が起きたのです・・・あ」
リュミエールは察した、ハルネス先輩は王国軍重鎮の娘、そしてその婚約相手は王位継承順1位の王子、相反する二つの組織の子息子女が婚約を結ぶのは並大抵のことではない。
だが、物事が滞りなく進んでいたことに満足してそんなことを忘れていた。改めて危機能力の低さを嘆く。
ちなみにセネルは、恋愛していたことに驚く。
ハルネスは苦笑し
「いやいや、他国の皇族を振った挙句、その拉致された執事のチェーニがその彼を本気で殺す目して戦意喪失させるまで威圧したとんでもない大事やらかしたリュミエールだけには言われたくないわ」
「なんだそれ、面白そう!ああ、見たかった!チェーニが大人気もなく殺意を振りまくその姿!」
ハルネスの言葉に、今度はカールが無邪気な子供みたく目を輝かせている。場の雰囲気がだんだんカオスと化してきた。
「はいはい、ここまで、話をもどしましょう。ねえリュミエール」
「え・・・ええ」
カールの殺意から立ち直ったセネルが強制的に軌道修正を図る。リュミエールも復活し、カールは「えー」と言いながらも元に戻した。
「ま、続きを言うわ。華の夜会の事件のあらましは置いといて、黒幕は既に分かっている。黒幕は王室、そしてセガールよ、まあ更に後ろは暗いけど。理由は王室の面目が潰されて王国軍の勝手が許されそうにあなっているから」
「!!」
全員が驚く。
王位継承順2位の男が、夜会で事件を起こし、更にチェーニを拉致したのだから・・・
「ふーん、なるほど・・、大方、1位のフェルラの失脚と王国軍の反乱計画の破たん、そしてリュミエールを殺しての魔動院のけん制が狙い・・・かな?」
「恐らくは、いえ、かなりの確率でそうでしょう」
カールはまるで見てきたかのようにいい、ハルネスは肯定する。
「と、いうことだ、リュミエールさん、これが敵だ・・・分かってると思いますが、これは強大な敵だ。こいつ単体ならカスだが、そのバックが大きい。正直、貴女ではどうかと・・・そもそもチェーニはこの世界には居てはならない男だ」
「・・・・」
リュミエールは黙る。しかしそれは迷いの沈黙でない
「・・・いくらでしょうか」
「ん?」
「カールさん、それと奪還するための戦力を揃えるならいくらあればいいでしょうか?」
「・・・やる気ですかい」
「ええ、チェーニさんを守ると決めた以上、そのくらいで動じてたまるものですか?強大なバック?叩きのめしてやりますよ。どんな手段を講じてでも、ねえハルネス先輩」
「ええ、私も?」
「婚約した相手の為です、協力願えますよね?」
リュミエールの目が笑ってない・・・
「・・・はぁ~、まあ協力はしようと考えていたけど・・・」
ハルネスは渋々承諾、カールは
「ククッ、主従揃って面白い・・・自分も参加させてもらいましょうか、報酬は別口でね。そちらの御嬢さん方は?」
セネルとレンに振る。
二人は
「まあ、乗りかかった船だしやらせてもらうわ・・・」
「どちらにしてもやること確定ですから・・・」
と即答する。
ということで決まった。
「さて、作戦の詳細は明日にでも調整しよう。時間は急がないといけないが、準備を入念にしないとね・・・とりあえず今回はここで「いえ、まだです」ん?」
カールの話にリュミエールが割り込む。
「作戦に関しては了解しましたが、まだ・・チェーニさんの過去について聞いていません」
「ああ、そうだったね・・・それじゃあ、昔話としゃれこもうか」
そして始まる、チェーニの過去・・・