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元暗殺者現執事  作者: 夕霧
奪還作戦
27/31

密会

7/8

2100hrs

密会場所前

「あーー、なんで私は入店禁止なの?!」

「そりゃ貴様が憎き敵だからだろう、少しは成長しろ。ラン」

「今はシークです、学長殿」

二人の男女がとある店の前に車を寄せて、その中で待機している。

一人はフェルザーノ学院の学長ジャニストと、真実の目ことダーリア・クロニクル記者のシークである。

この店は一見すれば裏路地に隠れた知る人ぞ知るカフェであるが、今は閉店している。それも強力な認証魔術をかけて・・・このカフェの裏はこの大陸を牛耳り、チェーニが所属していたギルドの派遣受付所兼密会場所である。

「シークなんぞものは知るか、それよりも早い内にコンタクト出来たな、相手はあの「透明人間」だぞ」

ジャニスとは裏の繋がりがないわけではないが、ギルドには人脈が少なく、シークの力をある方法で借りた

「そりゃ粘りましたし、本人につないでくれてからは即座に決まりましたが・・・それに」

シークはジャニストに向けて笑顔で

「私の大切な妹を人質に取られれば誰だって死に物狂いでやりますよ」

ジャニストのとった手段は、盗聴していた妹のレンの処罰の軽減を条件にシークを動かしたのだ。最初は渋っていた彼女も、妹となればそりゃ面白いように働いてくれた。彼はは悪びれもせず

「使える駒とカードはとっとと使うのが私でね、ましてや生徒で無くなったものを動かすのに躊躇いはないし、生徒でも必罰の必要な生徒は有効なら利用しない手はない」

「・・・学長はやっぱいい性格してますよ・・・学院在籍時から付きまとってましたけど予想以上です・・・でも」

シークは笑顔から一転、鬼も殺す勢いで睨み付け

「私が減免したんですから、次、妹を駒のような発言したら殺す」

彼女の周囲の魔力が渦巻く。彼女は妹のレンの防御、拘束魔術より圧倒的に攻撃魔術の方が得意であった。だがジャニストは鼻で笑い

「殺せるもんなら殺してみろ」

挑発する。そんな険悪な雰囲気が起きた時

「!、伏せろ」

「なんで・・・」

ジャニストの言葉に反発しかけてシークも察知して反射的に取材で使う車の中を見られない無詠唱魔術をかけた上で伏せる。

その人物は二人の存在に気付かず、閉店しているはずのカフェにすんなりドアを開けて入っていく。

完全に居なくなったことを確認してから

「学長・・あれは・・」

「透明人間はどうやら面白いことを考えているようだ」

「奇遇ですね、学長と意見が合いましたよ・・・さて・・・いったい何が起きてるのかしら」

ジャニスト、シークの両名は不気味に笑う。


同時刻

ジャニスト、シーク搭乗の車より更に後方

不穏な影が見え隠れする。そこに男の陰

「真実の目に、フェルザーノ学長、それにあいつは・・・こりゃいい副産物だ、大当たりだ」

そいつはチェーニを拉致している、セガールの側近で私兵班長であり、刺客である。

リュミエール含め数人のメンバーが既に動いているという情報を察知して泳がせたら大当たりだ。既に周辺には10名以上の傭兵で取り囲んでいる。

大よそ結束とは無縁な奴らだが、金で雇われている分、一応のコントロールは取れるし、精兵だ。これはあの生意気な側近のゴルトを蹴落として出世できるかもしれない・・・


ドスッ・・・・


「グフッ」

なんだ・・・この音は何自分変な声出しているんだ・・・なんだ・・・なにが・・・苦しい・・寒い・・チカチカする・・・なにが・・・なにが・・・・・・・・・・・・・・・・・

体は何かに押された感覚がした瞬間から一気に寒くなり呼吸が出来なくなる・・・生命の警告と分かったときには地に伏せていた・・・。そして声も出さぬうちに絶命した。


「ふう、これで4人目っと」

<<ネティ、油断するな、2ブロック先、2人だ>>

「多くないですか?フェン先輩」

<<文句いうな>>

リュミエールの警護だが、カフェに入ることが許されなかったネティとフェンは、フェンが高い建物から俯瞰の視点と狙撃で、ネティは狙撃でねらえない敵を静かに黙らせていた。さきほどの男も、ネティがチェーニ仕込みのステルスで背後から胸を一突きした。

<<これでやり損じたらチェーニに笑われる・・・早めに片づけるぞ>>

「了解です、先輩」

正直お嬢様だけをカフェに入れてカールと会わせるのは躊躇ったし、チェーニにばれたら冗談抜きで殺される。

だがそれが出来ない今は、せめてもの自分たちに出来る仕事をしねければならない。

「さて、やりますか」

血まみれのナイフを紙で包んで隠し、そして3本目の新品ナイフを出してネティは次の獲物を狙って狩りを再開する。



それより10分ほど前

カフェ地下二階、密会場所

この建物には公称で地下二階はない、ただし特別なお客様がいらっしゃればそれは別になる。

「それではごゆっくり・・・」

リュミエール、セネル、レン、この3人だけが入ることが許された場所、カフェのオーナーはギルドの秘密協力員であるが、密会内容は聞かない決まりなのか、案内したらすぐに部屋を出た。

そして数分待つと

「やあ、遅れて申し訳ない、自己紹介は結構・・・ああ、自分は自己紹介しないとね」

リュミエールたちは息を飲む。

優しそうな顔立ちに細身で長身の若い男、だが、何かの違和感を感じる。そう、あるものがない・・・。

「初めまして、カール・セイズと申します。一応「透明人間」という通り名をもっています。よろしく」

彼が手を差し出す、

「よろしくお願いします」

リュミエールも務めて平静を保ちカールの手を握った瞬間・・・


怖い!!


その彼の冷たい手から、恐怖という何事も代えがたいものを遠慮なく注入された・・・一瞬のことだがはっきり確信した。彼が透明人間と言われるゆえんを。

ないと感じたのは気配、ただ、私たちにだけは気付いてもらえるように、限定的に放っていた。気配を感じないということは生活上あることが多いが、これは異常だ。

そして恐怖とは・・・はっきりとした殺意

この覆い隠すが出来ない殺意を発散させず抑え込むと気配も自ずとなくなってしまうということだ。

だが瞬間で手を離すことは許されず、約5秒握ってから離す。顔は変えたつもりはないが、手の震えは隠せそうになかったので、力が全く入らないけど無理やり握り拳を作って我慢する。

すると

「へえ、さすが公爵家令嬢、素晴らしい自制心だ・・・まあ安心してください、体質上この違和感は直せませんが、あなた方を手にかけるつもりは「今の所」ありませんので」

カールが微笑を浮かべるが、先ほどとは違い、それも一種の怖さに感じる。カールの勧めでソファに座ると右隣のセネルは体質で彼の心や殺気に充てられ若干顔が蒼く、レンも平静に見えてペン持つ手が震えている。

感受性の高い人間には酷な状況・・・リュミエールは心の中で二人に謝り、話を続ける。


「カールさんですよね、この手紙を渡したのは」

差し出すのはチェーニが殺戮機械として再起動した夜に届けられた手紙と、若き頃のチェーニの写真

「ああ、やっと聞きに来ましたか、ええそうですよ。これは私が届けました。で、チェーニが貴女の前からいない今、呼び出して何をするつもりで」

カールの笑顔で言う言葉にリュミエールの胸がズキッとする。しかし負けてならない。認めなければならない事実をこれから認めなければならないから・・・

「正直に申しますと・・・・恥ずかしながら私は・・・・・チェーニさんのことを何も知らず・・・そして今も謎のままです・・・カールさん、貴方ならチェーニさんの過去にかかわっていますし、そして今回の件に関しても貴方が関わっていると考えました・・・それで」

彼女は札束を出す。セネルたちはぎょっとする。

「耳を揃えて100万レリル、これで情報を売って下さい。あと、詳しい過去はチェーニさんから直接聞きます」

カールはお金を受け取ると、パラパラとめくり、そして

「クク・・・ハハハ・・クッ」

静かに笑い

「大した御嬢さんだ、俺は嫌いじゃない、むしろそういうことで情報を聞き出すなんて、お嬢様のすることじゃねえ・・・でも、これは楽しい・・・いいでしょう、売った。ああ・・・あとサービスもある」

「え・・・?」

その瞬間

「はあ、呼ばれてみれば貴女たちなのね」

女性の声、その声は聞き覚えがある、振り向いてそれを確認した瞬間、全員が驚愕した。

「初めまして・・・じゃないわね、こんばんわ」

そこに立つのは、華の夜会で婚約したフェルラの相手で、王国軍重鎮の娘、ハルネス・ミッドウェーだった。


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