水際戦闘
え~、まとまらなかった・・・。
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2105hrs
フェルザーノ王立学院北門近く
完全に使用されなり、廃墟と化している旧校舎とつなぐ北門近くの手入れされていない雑多な林に隠れる連中。違法庸兵団でも最強であり最低な直轄部隊の10名。
山道から来るはずのクリークの部隊は来ないで緊急シグナルを受信する。つまり奴らに何か異常事態があったという事だ。
「おい、クリークの野郎、いきなり緊急シグナル鳴らすとは・・・一体何やってんだ?」
「さあな、しかし結局は役立たずだったな」
「そうだな」
超大国がAKに対抗して作ったM16小銃のコンパクト発展型、M4小銃を構える傭兵達。
彼らは王室からの規約を平然と破り、街に潜伏して、そして今も侵入経路に指定していない北側で突入用意をしている。ばれなければよいが彼らのモットー。
「まあ、クリークの事なんざどうでもいい、あいつとあの隊は捨て駒みたいなものだしな」
隊長がクククと笑い、周りも同調する。
奴らは正直言ってあの庸兵団に合わない存在で、くそまじめに約束を守るから団長は表では一応信任してたが、裏では軽蔑していた。だから作戦が成功しても失敗してもどの道、クリーク達は団長の方では密かに始末の用意はあった。
奴らが居なくなっても、今回の報酬や身代金の3分の1使えば、更に良質で平気で人が殺せる人材をすぐに埋め合わせ獲得出来るからだ。
「まっ、クリークの奴らは裏切られるという惨めな目に遭う前に死ねたならいいんじゃないか。さて、楽しいお仕事の時間だ」
「やっとか・・・この学院の女って、結構上物が居ると聞いてるが、つまみは?」
「駄目だよ、それをしたら王室が殴りこんでくる。まあ侍従程度だったらな・・・」
「仮にもクリーク達がやられてるんだぞ。少しは緊張感持たないか」
と言う人間も笑いを抑えきれない。
「まずは外の執事どもを殺しながら行くか、作戦開始、10分で制圧する」
10名の兵士は素早く動き出す。そして北門に辿り着く直前
フォン
「なっ・・・」
「しまっ、緊急たい・・」
言う時には既に遅く、傭兵10名の下に透明の蝋で描かれた魔法陣が発動して、白い幾何学模様が浮き出て、更にそこから白金に輝く拘束糸が腕や足に絡まりつく。
「くっ・・くそ」
「拘束魔術か?」
傭兵達がこの異常事態に困惑していると
「う~ん、半分正解で半分間違い」
「えっ、拘束じゃないんですか?」
「味方の貴方もそういうの?全く、あなたは師匠さんから何を学んだの?てか、後輩のレンのバインドに捕まったんだって、情けない」
「なぜそれを?!」
現れたのは、学院の平民が着る礼装を纏った、生徒と思えない大人な感じの女性と、整っているほうだと思うが、あどけなさを感じるスーツ青年、しかし肩に小銃をかけているので普通ではない。
「貴様らは・・」
「あ~、どうもこんばんは、イルミナル家従僕のネティと申します」
「フェルザーノ王立学院9年生、セネル・・・ものすごく面倒だけど、とある人に頼まれたから仕事に来ました。とりあえず大人しく死んで」
穏やかに自己紹介するネティと、本当にめんどくさそうにしているセネル。チェーニに頼まれなければ絶対に参戦していなかった。
「早く外せ!」
「外せと言って外す馬鹿が居ますか、黙れよオスピア、被差別民族として生きてきた辛さから隠したい名前か・・・」
「なっ・・・なぜそれを・・・」
隊で一番の暴れ者が絶句する、オスピアは、彼の中で封印したいトラウマを簡単にこじ開けるセネル
「心の内の深層を読み取っただけです。それとこの隊の中には魔術師はルールに縛られて簡単に魔術を使えないから安全と思っているお馬鹿さんもいるみたいですね。本当にお気楽」
傭兵の数人がギクリとする。
「うっわ~、いじめっ子」
引いてるのうに見せかけて楽しそうにするネティもネティである。
「でも、ここ一帯に範囲無音魔術、多人数に伝導拘束・・・さすがに疲れたし、じゃあラッキー7にかけて7人解放するわ・・・ネティから逃げてみなさい」
「まさかのここで自分っすか?!」
「自信ないのかしら?」
「まさか・・・やらせて下さい」
ネティは今までの穏やかさから一転、目から感情が抜け落ちる。気温が少し低くなる感じがする。
「あら、あなたも出来るの、まあまあの人よりかは研ぎ澄まされてないけど、じゃっ、スタート」
7人の傭兵を解放する
「やってしま・・・」
傭兵がM4を向ける前に既にまるで一瞬で肩から愛銃であるガリルが火を吹く、しかし無音魔術のおかげで周囲には音もなく傭兵は吹き飛び死ぬ。
「くっ・・・」
後ずさりしようとするのを見逃さず、ネティは一気に間を詰めて今度はナイフの接近戦に入る。
銃を、構え、狙い、引き金を引くがあるが、ナイフなら接近して一閃で殺すことが出来るのでこういう味方と敵が密集してる所では有効だ。
拘束から解放された組とネティが間近で戦闘してるのを無視して、ゆっくりと拘束したままの傭兵に近づくセネル。
「この女が」
隊長である男がかみつく
「まだそんな元気があるの・・・そうね、まだ貴方の中では私が人を殺せる人間ではないと高を括ってるみたいね・・・でもね、私は真逆なの、じゃ、ネタばらしといきますか、なぜこれが伝導拘束と呼ぶか」
「はっ?」
「爆ぜろ」
セネルが呟くと、隊長の両隣りに居る傭兵にまとわりつく紐の色が白から赤くなり
「う・・うがああ・・熱い・・熱いい!」
「助け・・燃える、燃える燃える!!」
2人は悶絶しながらやがて体に着火して火だるまになる。しかし周辺には悲鳴も、火の輝きも少しも漏れない。
「ふふっ、いい悲鳴、これが伝導拘束、属性の魔力を抵抗値なくダイレクトに紐に通してその人間を攻撃出来る上級魔術ですよ」
「なんてことだ・・・貴様は」
「ネルシアの女なら普通ですよ」
「悪魔の国か!」
隊長は後悔する。小国ながら傭兵に頼らず、規模は違えど超大国と渡り合える実力を持つ正規軍を筆頭に、良心免除や女性免除がない完全国民皆兵国家、ネルシア共和国の人間ならあり得る・・。セネルも一応ネルシアの予備役登録をして、銃の扱いも出来る。
「彼はどうやって殺すんですか?」
既に解放組を皆殺しにしたネティが正気に戻って聞く。セネルはどうしましょと呟いてから、何かいたずらめいた笑みを浮かべ、傭兵隊長の懐に手を入れる。
「なっ・・・何だ?!」
「うーんと・・・あった」
取り出したのは大口径のリボルバー
「なにこれ・・・実用的じゃない・・・」
「戦場でも見栄張りたい人間はそんなものですよ・・・で、相手の銃を奪ってどうするんですか?」
ネティが聞く前に彼女は少し離れて、安全装置を外して弾を確認すると、両手でしっかりと構えて
「自分の愛銃で死ぬという面白いオチで終わりなさい」
「なっ・・・それだけは・・・」
隊長が言い切る前に引き金を引き、額に打ち込んで後頭部は弾の威力で大穴があく。
「お見事」
ネティは拍手して
「手がしびれた・・・肩が痛い・・」
セネルは珍しく苦笑を浮かべた。
これで全ての戦闘が終了した。
結果は全員無傷、そして敵、合計66名は殲滅された・・・。
次回もまた更新が遅くなりそうです。