フェンの過去、実力
何でこんな回想にした?
変なシリアス好きでごめんなさい。
今回は影が薄かったフェンの初無双。
次回はチェ―二や傭兵たち
そしてその次は意外な人たちの無双。
戦闘回が続きますが、終わったら甘い展開予定です!多分!
6/30
2030hrs
国道沿い廃ビル
フェン視点
「本隊観測より狙撃手へ、敵の斥候が通過した、車種は黒のワンボックスカ―、情報通り6人と思われる」
「了解した」
学院のある都市の入り口手前の廃ビルに潜む私は短い交信をしたあと、インカムを外し愛銃をさわる。
PSG-1
生産したG-3の中で選抜された良品から、更に職人の手により精度が高められたセミオ―トマティック方式の狙撃銃である。
手動で弾の装填と排出を行うボルトアクション方式より機構が複雑で耐久性は負けるが、セミオ―トマティックなので、今までにない速射が出来る為に、複数の敵を早く狙撃出来る大きな利点がある。
更に言うと、この銃はチェ―二の伝手の裏工房で加工されたものなので、命中精度は純粋に狙撃銃として作られた奴にも劣らない出来である。
本隊からここまで推定10分はかかるので、久しぶりに煙草を吸う。
軍人時代は煙草は手放せなかったが、ここに来てからはお嬢様を始め女性陣は嫌い、更にチェ―二はお嬢様に煙を向けるなよ?
と、本気の殺意と銃口を向けられたので、禁煙を開始、荒療治ながら重要任務前以外には完全に煙草断ち切りに成功した。
私はここの王国軍中尉の肩書を有しているが、元々この国の軍人ではない、正確には西方の軍事主義陣営の国民皆兵小国の少年狙撃兵。
9歳から銃を持ち、12で狙撃中隊に配属され、以後戦場を駆けまわった。
低倍率スコープと整備部品もあまりない粗悪な狙撃銃で目標要人を次々と的確に撃ち抜くとして、敵からは「最悪の敵」と称され、味方からは「カシウス家の狙撃兵」と呼ばれた。
そう、家族はみな勇敢な兵士で、父は一兵卒にはあり得ない最高勲章を授かる男で、母は山岳ゲリラの天才、兄は浸透戦術のフィールド制圧が上手く、妹は装甲車などを巧みに操る最高のドライバーだった。
しかしみなみな祖国の為、生まれた故郷の為、そしていつか侵攻してくる憎むべき大国を打倒して、必ず来ると盲目に信じた平和の為に猛々しく戦い、そして戦死し、家族、連絡取れた親戚の中で生き残ったのは私しかいなかった。
家族が戦死したという報を聞いても正直悲しくは無かった。既にその時、悲しんでいられないほど必死だったのか心が壊れてたのかは分からない。
ただ、妹の戦死を聞いた直後の20の時、突如終戦した。
正確には東方の伝統主義陣営の守護、シルバニア王国軍の突然の介入と双方に停戦要求を出したのだ。守らなければ我が国側に最大限支援して大国と抗戦する条件で・・・。
我が国にとってはありがたく、敵の大国も疲弊してしてシルバニアの本格介入など受けた瞬間に降伏は目に見えたので即時に停戦した。
しかし私は生き残れた喜びより呆然とした、今まで雨あられの砲弾の雨の中敵の司令部に行き、何人もの要人を殺したり、殿軍として森林地帯からの狙撃などしてた日々がいきなり無くなったのだ。
「君たちは徴兵された兵士だ、只今より軍務を解く、ご苦労だった」
と、高級将校が偉そうな表情でいきなり解雇宣言も受けて、殺人以外の技術を持たない私達をいきなり野に放ったのだった。
あるものは何とか職業訓練を始め、あるものは今までの殺しと占領地での女性への凌辱を忘れられず村を襲う盗賊となり、そしてあるものは傭兵協会に入り、庸兵団の一員として戦地をまたかけたり・・・。
大半はまともな道より、本能がうずき戦いの道へと突き進んだ。
そして例外も居た。私を含めて、有能な少年兵をまとめて買い取った国があった。それが停戦で一時的に両国国民の英雄になったシルバニア王国であった。
彼らは私達に適性検査を行い、下士官候補生か士官学校のどちらかに入隊させた。
私は年齢もあって、軍務経験も長く、意外と頭はちゃんと回ったので、特例で下士官から士官の昇格に使う士官短期養成学校に入学、そして卒業後は青空見ることなく、また闇へ・・・。
私に与えられた任務は王国軍の規律強化の名の下、王室にすり寄る将校の粛清の任務・・・。
軍は王室に懐柔されるのを嫌い、そしていつか王室と魔術師の特権剥奪と転覆を狙っていた。しかし最近の士官や兵士はこの状況でも良いと感じている腑抜けで、更に情報横流しもあったので、これを防ぐために、自分の手の汚れを最小限に防ぐために、私達の存在がばれても強制送還や始末でもいくらでもうやむやに出来るように、王国軍は紛争国家の停戦を相手政府に恩を売り、そこから優秀な兵士を引っ張ってきてこれに当たらせたのである。
私はそれを知った時には中尉に昇進して、王国軍の思惑にしばられ逃げられないように工作されていた。
結局は昔も今も・・・いや、遥かに昔のほうがマシだと思えて絶望した時、幸運は訪れた。
「こんな闇より明るい世界に行ける仕事があるんだが?やってみるか?」
見上げた先に居たのは一人の中年男性、これが後にお仕えする、お嬢様の父上にしてイルミナル公爵家当主、ガルモンド様との出会いでした。私がその誘いにのった翌日、私は今まで除隊もさせてくれなかった上官から名誉除隊を言い渡され、そのままイルミナル家邸宅に飛びました。
そして2年前から、お嬢様の従僕として、そして盾として今まで来ました。
ここに来てから一番驚いたのが、お嬢様の執事があの「殺戮機械」のチェ―二だったこと。彼は西方でも有名で故郷の国の要人、相手の大国の要人が彼の手で何十人も暗殺されて、特に特殊部隊20名まとめてやられた事件の時は、全軍警戒の命令がされたほどだ。
それが1人の女性に全力を傾けている。
一体全体なにがあったのか…てか本気で夢を見ているんじゃないかと思いましたよ。
とまあ、従僕になってから、こんな驚きや、ルノーさんのスパルタ教育に苦労しながらも、最下層の闇から明るい青空の下、誇りが持てる仕事ができ、そして……ドジを超越しながらも、一生懸命でどこか惹かれるユウとの出会いに、私は初めて神の存在を信じて感謝しました。
煙草を吸いながら思い出に耽っていた時
「きたか…」
微かな車のエンジン音、そしてあまり車の通らない道を照らすライト。
スコ―プを覗くと
「ビンゴ!」
黒のワンボックスカ―。
本来ならマテリアルライフル[12.7mmの大口径狙撃銃]で車を吹き飛ばして爆発させるのも手だったが、大きさに難があったのと、チェ―二から、私達に楯突いたらどうなるか見せしめる公開処刑の為に、全員射殺に変更した。
まあ最近は暇で腕が鈍っていたので丁度良い機会だ。
まずは…
前輪に狙いを定めて、PSG-1の引き金を引く。
弾は寸分違わずタイヤに当たり、車は蛇行しながら目の前を通り過ぎ、そして200m先で止まる。
さて…祭りの始まりだ。
タイヤのパンクを調べようと無防備にドアを開き頭を出した運転手の後頭部少し下を狙い撃つ。
また弾は正確に目標の脳幹を貫き、多分何が起きたかも分からずに車から半身出して即死する。
次に後部席の奴らが小銃を持って出てくるが即、現世から退場してもらった。
助手席の人間が車を放棄して近くの建物の陰に逃げようとするが、足を撃ち抜きそして頭を撃ち抜く。
「あと2人…後部か?」
車から降りない残り2人、と、突如後部ガラスが割れる。
中の傭兵構えるのは高性能ながら値段の高さとオ―トマティック方式の複雑さから軍から採用されず惜しくも生産中止になった狙撃銃、WA[ワルサ―]2000。
そして隣には狙撃の観測手。
狙いが定まっているのか、暗視装置で表情は分からないが、僅かに目標がニヤリとしているように感じたが…
「銃に頼り、慢心で勝利を確信する二流未満が……死ね」
私は動揺もせずに、敵が放つよりも早く撃つ。
そして弾はWA2000のスコ―プを貫き、目標の右目を抉り、そして脳に達して死ぬ。
恐怖と絶望に体を震わす観測手も一発で仕留めて楽にさせた。
「……制圧完了…生存者なし」
感動もなく、淡々と撤収準備をする。
そして、仲間達の戦況を聞こうとして…やめた。
山道側の山を見ると、森林から煙りが上がっている。
直感で、友軍優勢を感じた。
その頃、他の場所ではフェンの予測通り、友軍の殲滅戦が行われていた。