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元暗殺者現執事  作者: 夕霧
華の夜会と蠢く陰謀
16/31

華の夜会 開演

とりあえずチェ―二を壊してみる。

女性の表現が下手ですみませんと、先に謝ります。

6/30

1930hrs

フェルザ―ノ王立学院夜会会場脇

生徒会長であるお嬢様の素晴らしい声での開会宣言とスピーチ、そして続いて学院長、教務部長、理事会代表、国王陛下の代行読み上げ人、代表魔術師のスピーチが終わり、夜会は自由時間に入る。

王族のフェルラの婚約発表は予定では最後、22時を予定している。

一応この間の時間はフェルラの次期正室選定時間とされているが、既に確定も同然なので、自由時間だ。


この学院には通常の貴族の嗜みである舞踏会などの会場は無い。

あっても使わないし、何より魔術師は貴族はもちろん平民も多く、また魔術優先で、高位魔術師こそ相手に対して、求婚でも出世でも最大のアピールという伝統主義陣営の独特の根強い思考があるからである。


まあ時に高位貴族の肩書きで女性に迫るクズも居るが、そこは黙っておこう。


夜会の会場が無い。

正確には、一応、全校集会や入学、卒業式に使う全校生徒が入れて、パーティーの会場に耐えうる会場もあるが、大々的にやるには狭い。

だから改造しよう…と。

「確かにシルバニアの王子の婚約お披露目パーティーは重要だが」

「だからといって…」

「凄いですね…一体どれだけ使っているんでしょう」

「億は軽くいってるねぇ」

上から私、フェン、ユウ、ノル―である。

ネティはシ―クと我々の伝令役として今は居ない。


そう、今回は全力で夜会をぶち壊しにくる傭兵達をお出迎えする為に、こちらもいつもは邸宅にいるフェン、ノル―、ユウも動員している。

と言っても、実際の戦闘は私とフェンとシ―クが用意してくれる予定の傭兵で、ネティはお嬢様の直接警護、ノル―とユウは侍女として私が居ない間にお嬢様の側近をする。


そして今私たちが居るのは、攻撃魔術などが平気で放てる広大な室内練習場だった場所。

一週間前から改造が始まり、無機質な壁やむき出しの鉄骨類はパネルで隠し、1平方メートル、うん十万の上質な壁紙に囲まれ、下には赤い、これも高い絨毯を敷き学院や貴族諸侯、魔術師の各種協会から提供された豪華絢爛な彫刻や花などで彩る。

扉も鉄製の無機質なドアでなく、特別な木で作られた、初めての華の夜会時代から使用されるこの日のためだけに出される学院伝統の大扉がある。

これが国民の血税でなく、大陸の先輩魔術師が所属する各種協会の基金、更に王族の株や国営の時価資産で全て賄われているのだからまた凄い。


貴族の大半は豪華な衣装に身を包み、化粧して香水を振りまき、一部は狙う異性と音楽に合わせてダンスを、一部は将来の為に学年越えて人が集まり交流する会に好機を感じてコネ作り、そしてまた一部は来賓している偉大な先輩魔術師のありがたい教えを授かる為に卒業後の弟子入り志願をしたり三者三様である。


一方、平民組は、服装自由と言われるが、ほとんどは夜会の為だけに支給された超高級素材で作る学院特別礼装を身に付け、また平民同士で恋愛したり、弟子入り志願したり、貴族にすり寄ったりしている。


「そういえば、お嬢様はドレスを着ないみたいですね」

「ああ、暗黙の拒否だな」

開会式は普段の制服という、不思議な学院伝統のスピーチ方法で終えたお嬢様は今回の夜会の自由時間はドレスを着ない。代わりに貴族の学生が有料で買う、学院特等礼装を着る。

これは実質、求婚やごますり、弟子入り志願をしないで、ただこの夜会を楽しむという無言の意思表示。通称、暗黙の拒否という。

まあお嬢様クラスになると、生意気とか思われず、ああ、休みたいんだな…と皆理解する。

それだけ、求婚や偉大な魔術師達からのスカウトが激しいのです。

まあ通常時、有力を残して他九割ほどは私が握り潰していますが、それでも月に100くらい残ります。迷惑メールより性質が悪い。


しかし、お嬢様のドレス姿が拝見出来ない、少し残念な気がするのは私だけではない気がする。

そのとき

「お待たせしました」

「いえ………」

「わぁ」

「ほう」

私は言葉が続かず、周りも感嘆の言葉しか出ない。

会場の脇に設営された更衣室から現れたお嬢様、

学院のシンボルカラ―である白が基調で、カフスの部分には青の線、胸に学院の刺繍のされた礼装は、お嬢様の清廉さを引き立て、碧眼よりも青く透明感のある瞳と蒼髪にマッチして。更に唇にはリップが塗られ、柔らかさと魅力が増し、自前でやったと思われるヘアアイロンでの少しロ―ルさせただけのシンプルなヘアセットが今までの素晴らしさに更に乗っかる。

それはまさに…

「聖女…いや女神…」

どんな言葉にも形容しがたい美しき存在。

神はこんな身近に居たのか…と心から思う。

とりあえずドレス姿希望してた昔の自分をボコボコにしたい。

どんな死地でも震えなかった足が震え、今すぐ跪いて生涯下僕宣言がしたい…いや、させてくれ!

我慢しているが、今にも私の体はそれを行ってしまう!!

「えっ?へっ?」

一方、私の思わず漏れた言葉にお嬢様がポカンとして、そして頬が紅く染まる。

「似合っているの最大級の賛辞をしてるんだよ、チェ―二は」

と、壊れた私を察して、ルノーさんが代弁しながら私の背中を思い切り叩き再起動させる。

ピンと背が伸ばされ、何とか正気に戻った私は

「申し訳ありません、少し我を忘れていました。しかし本当にお似合いですね」

「ふふっ、ありがとう……あっ…ネクタイが」

「え…あっ…」

さっき会場の熱気に負けて無意識にネクタイの結び目を緩ませていたらしい…

ヤバい……お嬢様の前でこの態度は不味い。

謝罪と早くネクタイを直そうとした時…

「じっとしてて…」

「えっ……」

お嬢様が近づく、そして柔らかく白い手は私のネクタイを掴み、丁寧に、そして早く直す

「これで…よし。苦しくないですか?」


間近にあるお嬢様の顔、そして今気づいたのだが、甘い香水の匂い、脳が麻痺してしまう。

いつの日にか、私の部屋にお嬢様が来た時以上に危険だ。本気で命が危険である。



「お手数おかけしました、ありがとうございます」

私は何とか壊れずに済む

「どういたしまして」

と見せかけてお嬢様の笑顔でKO余裕でした。





1945hrs

夜会会場

お嬢様の入場と同時に、会場は一気にこちらの方を向く。

一気に感じる視線は流れ弾のレベルでも異常、一身に食らっても堂々とするお嬢様に尊敬する。

皆がみな、お嬢様の服装を見ても諦めきれず、誰か高位の人が空気を読まずスカウトした瞬間にねじ込もうとスタンバイしている。まあそんな誰か行けの雰囲気だから、当分誰も来ないが。

「チェ―二さん」

自然にさりげなく私の後ろにつくネティ、ユウとノル―さんは驚き、私とフェンは

「75点」

「及第点ですね」

「あうっ…」

同時に採点した。まあそれはいい

「首尾は?」

「予測エリアから斥候、本隊、別働隊が出動準備をしてるのが確認されました。また、一網打尽を避ける為3隊距離を開けて行動するらしいです。こちらは傭兵団の戦闘要員28名、工兵4名の戦闘準備完了、斥候部隊はフェンさん、本隊は味方傭兵のみ、別働隊は、精鋭が多いのでチェ―二さん、そして精鋭4名で対処するようにと向こう側から要請。概ね予測通りかと」

「予想以上の出来栄えだ。オペレーション発動、ネティ、分かっているな?」

「共闘防衛の件ですね、承知してます」

「よし……これで全てが整った」

さっきまでお嬢様の一挙一動でぶっ壊れていた人間とは全く違い酷薄な笑みを浮かべる。

周りの関係なく、耐性の無い人達にも寒気を感じさせる。


「チェ―二さん」

「何でしょうお嬢様」

一瞬にして柔和な表情に戻る、最早別人レベルだ。

「お仕事があるのですか?」

「あ…ええ、まあ、執事としてやらなければならないことがありますので、一時間ちょっと居なくなります」

「そう…ですか」

お嬢様の瞳が少し揺れるのを感じた、しかし次には笑顔で

「早く帰ってきて下さいね」

「…はっ!ネティは置いていきますので男手必要でしたら遠慮なく、では」

腰を曲げて最敬礼した後に、私は会場から出る。フェンも無言で付いてくる。

武器がしまってある車に早足で向かいながら

「フェン」

「何でしょう」

「早くケリを付けて戻るぞ」

「了解」

絶対に守り、そして愛する人の為に動きだす。



その頃会場

ノル―視点

「………」

「心配でも笑顔で送り出す。いい女の常識わきまえてるね」

「ノル―さん…チェ―二さん達は…」

「知ってる事も知らなく振る舞うのもいい女だよ、お嬢様」

「えっ…」

「私たちは、特にあの執事はお嬢様に役立つことを第一に考えているからね、なぁに、心配しなくともいつも通り帰ってくるさ」

「そうですか…そうですよね」

「そうだよ…笑って出迎えなさい」

私はお嬢様の笑顔を見て安心する。

ェ―二はもちろんフェンも早く帰ってきなさいよ、ユウはいつも通りの天然に見えて心配して軽く動揺してるから。


それと、私は他の家、王室の侍女から聞いたが、お嬢様は恐らく…いや生徒会長としての仕事の中で絶対礼装のスカウトや求婚より大きいもう一つの意味を知って、この格好になったはずだ。

王室の恥曝しとして封印されているが

四代前の国王が王子の頃、選ぶ予定だった才色兼備な女性が特等礼装に身を包み、頑なに求婚を断った。

王子の求婚を断ったのだから、さぞかし凄い魔術師か貴族かと思ったら、翌年その女性は王国城下町で金細工を作っていた職人と駆け落ちしたのだ。


だから、一部で言われたのが、非常に有能で顔も整い地位のある人間が礼装を着るのは、どんな誘いよりも魅力的な階級など許されない恋に燃える人間の意思表示と。


そしてお嬢様にそんな意思表示させる男は一人しかいない。

「私が言う前に早く気づきなさい、チェ―二…」

私は呟いた。


次回は全部戦闘です。

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