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元暗殺者現執事  作者: 夕霧
華の夜会と蠢く陰謀
14/31

潜入

近日中に投稿予定の次話で夜会での陰謀の全貌が分かります。

6/27

1700hrs

フェルザ―ノ王立学院中央塔屋上

「ししょ…チェー二さん」

「いい加減慣れろ、ネティ」

私が振り返ると、ネティが階段から現れる。未だに師匠と言いかけるが、今は同じお嬢様の下で働く人間なので名前で呼ぶようにさせている。

「で、資料は?」

「済みません。こちら側には」

「ん、まあ予測通り…か」

真実の目から伝えられてから4日間、明日までに夜会で行われる陰謀の計画を調べ上げたかった。だからネティと私で学院の隅から隅まで徹底的に探した。

「はっ?もしかして当たりつけた上でここまで徹底的に?」

「理事会が本当に偏屈で実はここにという、意外な隠し場所を持つ可能性もある。そして出来れば私は行きたくない場所だから」

「行きたくない場所?」

ネティが首を傾げる。私はため息を吐きなががら

「ときにネティ、問題だ。理事会が多く出入りしても不審に思わず密会出来て、なおかつ関係者以外には絶対防備で無理して通ろうとすれば命の保障は出来ない場所…分かるか?」

「理事会が出入り出来る…?」

「ヒント、お嬢様の執務の場所」

「……、ああ!生徒会棟!」

「正解だ、大胆だが、理事会なら専用の部屋を使えば秘密は基本的に漏れないからな」

ネティが答え私は頷く。

「しかし、あそこには固有結界が…」

ネティが心配するのは、生徒会棟に入って目の前にある二階に続く階段の先には生徒会長室や理事会の会議室、重要情報の管理室へ繋がる為に24段ある階段の12段目に電磁結界がある。また他の方法での侵入も考え、二階の窓なども結界が張られている。

「学院でのあらゆる状況に備えて、昔その結界について調べたが、あの結界は毎日23時から5分間、力が弱まり、魔術師はやられても私達みたいに鍛えている者なら何とか通れるんだ。ただし、非常に厄介なのはその後、結界がセンサーの働きをして、宿直教員の攻撃魔術師に緊急警報するんだ。後は学院の機密漏洩阻止の特例に基づいて殺される可能性が高い」

「逃げる事は?」

「特殊な筆とインクで描かれた絶対に消えない魔法陣で瞬間移動してくるらしいから無理だな。更に言うと、ここの教員は優秀な学生に教えを授ける為に集まったトップクラスのエリート集団、無詠唱で確実に単体を殺人する魔術もあるはずだから、気絶させて無傷は難しい」

「本当に命の保障がありませんね…」

ネティは苦笑する、だが私は真面目な表情で

「しかし先に叩けば問題ない。ネティ、仕事だ」

「なんなりと、どのように・・・あっ、教員とガチの対決だけは勘弁で」

「望むなら?」

「望んでません!」

ネティは真剣な表情で宣言して、私は少し笑ったあと。

「じゃあ・・・宿直室に通気できる部分を探せ」

「・・・はっ?」

大真面目な表情で言う私にネティは固まる。





2255hrs

学院生徒会棟階段前

一度お嬢様と邸宅に戻り、一通りの仕事の後にまた学院に戻ってきた。

生徒と教員のほとんどが家か学院寮に帰り、昼間とは比べものにならないくらいの静けさと闇で支配される。

特に生徒会棟は全部の校舎の中で一番古く、今年で120年目であり、歴史の深さも相まって独特の雰囲気を醸し出している。

「それにこの結界だからな〜」

私は静かに呟く、目の前にある大きな階段の真ん中には、ぼぅっと薄く青がかった光の壁が、認証された者以外の立ち入りを拒む。昼間は建物の採光で見えにくいが夜になると不気味に光る。ここだけは警告を込めて色付きだが、二階部分の周りには無色でこの結界が覆われている。


眺めていると、背後の入り口の扉が開く。

「済みません!遅くなりました」

振り返ると扉を閉めてこちらに来るネティの姿

「予定より手間取ったな…結果は?」

「もちろん成功です、良く眠っています、仕掛けもしっかり回収しました」

「結構」

私はネティの成功の言葉に安堵する。



彼は邸宅に戻らず、宿直室の換気などの通気口に繋がる配管を通じて、気体で副作用の無く、即効性のある催眠ガスを撒き、甘い匂いを感じた時にはすぐに意識を奪う代物を用意し使用した。


これにより、宿直室には教員以外は立ち入った形跡も無く、証拠もない。



これで面倒な対魔術師戦闘は無くなる。

まずは第一段階クリア。


「よし、第二段階に行くぞ」

「了解です…その前にこの壁…電気通っているのに、普通の格好でいいんですか?」

「大丈夫だ、これを使う」

取り出したのは一本の黒く短い棒

「これは?」

「特殊加工された強力な集電棒、まあこれで壁に流れている電流を一時的にそちらに集めてうちらに害は無くなる」

「ほぅ〜」

ネティは興味深げに眺める。私は時計を見ながら。

「カウント10から始める。0になったら突撃だ」

「了解」

目は自然と厳しくなる。


短針は11、長針は間もなく真上


そして


「10」

私の言葉でネティは構える

「5.4.3.2.1…GO!!」

私は思いっきり棒を上に投げると、壁に当たり青白い光が巻き上がる。

今だ!

一気に駆け出し壁に突撃すると柔らかく受け止めてはねのけようとするが、


ビリッ!


電気とは違う音が響く、結界が破れたのだ。

「よしっ!抜けた!」

「やれば出来るんですね〜」

ネティが感心したように言う。

「第二段階クリアだ、よ〜し、探すか…」

執事として使う白手袋を外し、ギルド時代から愛用している店で調達する黒い手袋をはめて、ニヤリとする。


「おお〜、プロだ」

ネティは苦笑しながら付いていく。


そして理事会専用室で見つけた資料、それは

「笑えねぇ……そしてゆるさねえ…」

チェ―二の怒りの導火線を着火させるのに十分だった。


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