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元暗殺者現執事  作者: 夕霧
華の夜会と蠢く陰謀
13/31

呼ばれた先には真実の目

難産の上でこの出来です・・・申し訳ありません!

ネティがトラップに掛かり、私は寸ででかわした後、仕掛けた本人、レンが現れた。

取材の為に突撃はあるが、こんな挑発じみた罠は初めてで、一応注意をしようとしてやめた。

しかし彼女はいつもとは違い、真面目な表情で付いて来い…てかついて来てと涙目の懇願。

しかも

「お姉ちゃんが直々に、来ないと言ったら生徒会長の危機と言えと」

と、ぼそりと一言。お嬢様の危機?そんなこと言われたら付いていくしかありません!

え?ネティですか?罠を見抜けなかったのでしばらく拘束されてなさい。


6/23

1220hrs

学院総合棟図書館地下

レンに連れられたのは図書館の蔵書庫の下

照度を落とした蛍光灯の下、薄暗く、広大な空間には何十列もの本棚と資料保管の引き出しが並ぶ。

総合棟が存在する前から地下に存在している資料格納庫、現在は真上に図書館も出来ているので、古い本や大衆雑誌も一時保管されているが、奥には一部の人以外立ち入り禁止区域、それこそ禁術書や魔力が込められた本が多数存在する。


そしてその立ち入り禁止区域の中にある、書棚群の中にぽっかり空いた空間に、大きめの机と椅子が数個。

「さて、私達の秘密の場所にようこそ」

「何でこんな所に入れるのですか?」

「私たちヘッドフィル家は非公式ながら数少ないこの禁止区域立ち入りを許可されているので、だから少し改造して密談に適した場所にしたんです。お姉ちゃんが」

珍しく呆れているレン、改造って…ていうか

「お姉ちゃんって…」

「お疲れ、レン、そして帰りなさい」

笑顔

「えっ…でも…」

「帰るか黙らされるかどっちがいい?」

にこやかな笑顔で握り拳を作る。

「了解です!それじゃチェ―ニさん!それと女性の救世主の正体特集をもう組んじゃったので今度会った時は取材決定です!」

「ちょっと待てや!やらないからな!」

「聞こえな――い!!」

「おいこらっ!」

「あの、私の話もとりあえず聞いてもらえませんかな?」

「ああ、申し訳ありま・・・でかレン?」

「軽く失礼な言い方ですね・・・」

私の目の前にいるのは顔立ちがレンを大人びた風にして、茶色のジャケットを羽織り、胸ポケットには色んなペンを差している。

一見すると…

「記者?」

「そうです。初めまして、レンの血のつながった姉にして、ダ―リア・クロニクルズ記者、シ―ク・レティアル、昔の名前はラン・ヘッドフィルです」

「ダ―リア…真実の目が何をしに来た」

「まあまあ警戒しないでください、殺戮機械。基本回避不可能な妹の拘束魔術をたやすくよける瞬発力、おみそれしました」

「・・・・」

「あれ?逆効果?」

シークはてへっとしてるが、絶対にわざとだ。

一気に警戒心が高まる。まあこの組織に属するものなら私の正体を調べる位容易いだろう。

ダーリア・クロニクル・・・名の通り、この惑星で唯一の大陸、ダーリア大陸の年代記を作成し、毎年その年に大陸で起きた事件を片っ端から紹介して、発表する会社。

しかし裏では国家の秘密情報局以上の伝手と通信網を持ち、社長以上にベールで包まれた盟主の下、注目記事や闇の事件の真実にはどんな犠牲を、文字通り自分の所のジャーナリストが死のうが、報復で組織の攻撃を受けようが調査して発表する、上から下まで、命を捨てる危険な行為を毎度犯して真実追求を求めすぎている結社である。

そして私が元々属していたギルドで受けた依頼で起きた事件の闇の部分を調査しようとして、度々ぶつかってきて、争っていた。

そこから畏怖と敬意を込めて「真実の目」と呼んでいた。

「まさか子爵令嬢とあらせられる方がなぜ名前を変えてこのようなことに?」

「簡単に言いますと、この学院を10年生の時に勝手に辞めて、週刊報の実績を評価されスカウトされたこの会社に入社して、家から勘当されました。今は慕ってくれるのはあの妹だけです」

「・・・何やってるんですか?」

心から突っ込む。彼女は魔術師で貴族でこの学院の卒業という、この国、いや、伝統主義陣営では一番の出世街道をコースアウトして、昔の私の居た最下層に落ちるなんて・・・

「後悔は?」

「真実を知りたい私にはうってつけの職場ですから、全然。もしもの時にはもしもの時です。さて、前置き長くなりました、本題に移りましょう席にどうぞ」

途端、空気が変わる。私は席に着くと

「さて、お嬢様についての話があると聞いたが?何かあるのか?」

「なかったらここには居ません・・・単刀直入に申し上げます。一週間後の華の夜会、ここで現生徒会長の運命が決まる」

「?、何の冗談だ?」

私は思わず吹く。運命だと・・・?

「何の冗談だ?」

「冗談だといですね、これどうぞ」

シークは私の目の前に資料を置く。表紙には最重要機密・・・てか

「王国紋章付き国家機密・・・あなた・・・死ぬ気か?」

シルバニア王国王族が直接機密指定にした、表に出ることのない資料、これを奪った者は、即時、手段を選ばず抹殺される。

「ばれなければいいんです、中身をどうぞ」

彼女の笑みを見て、武とは別の怖さを感じた後、その資料を見ると・・・

「勧告書・・・て・・・」

シルバニア王国軍フェルザーノ学院介入と警備、そして魔術を組み合わせた新兵器開発の同意・・・

学院には警察、軍、更には王国の学校に介入出来る教育省ですらこの学院の自治権介入は出来ない。これは伝統主義陣営内で定めた、魔術師特権を守るため、

そして軍事転用しないのはいつの日にか言った、兵器に転用する技術が無い、仮に出来たとすれば、それは恐るべき兵器となり、大陸最大の超大国、ティガ連邦も警戒して大変な事態になるからだ。

内容はあまりに衝撃的である。

しかし

「王国軍がこんな勧告書を出すとは・・・王族と軍の仲の悪さは常識だが」

魔術重視の王族と、国を命がけで守ってるのに、魔術師による文民統制で、国防省あっても上からの命令にイエスしか出来ない軍、今までなら軍事費を出せば一応黙ってたのに・・・彼女はやれやれといった表情で

「同じ伝統主義でも、こちらはやり過ぎてしまいまして、対立は既に最終局面、もはや革命を起こさんばかりにまで来ています」

「そこまでか・・・」

私は資料を返すと、頭を抑える。革命が起きるものなら今度は王国軍までお嬢様に向かってくる可能性も無きにしもあらずだ。そして気付く

「じゃあ今度の夜会で選ばれるフェルラ王子とハルネス様は・・・」

「王国軍の重鎮一家の娘を王族に入れることでの、文民統制維持で軍の直接政治介入権限を与えたも同然ね、これで今まで腑抜けの官僚に代わって、鬱憤が溜まってた制服組が乗り込める」

あの副会長は生贄か・・・少し同情してしまう私

「しかしもう手遅れ、遂に彼らは最終通告にして、最大のこの学院の門戸開放を要求したの。政治介入とこの二つが呑めなければ、特権ある魔術師を潰すと・・・」

「なんてこったい・・・もう・・・」

私は目の前が暗くなる、あ~、これはお嬢様成分が必要だ・・・

「あ~、あと」

「まだあるんですね、そうですよね」

まだそのお嬢様の運命について聞いていない、

「これに対して、王族は、軍が調子に乗らないように、聖地の学院に介入されない為に、王族の命令が学院にすぐ反映される体制を整える為に、フェルラを生徒会長にして、一手に牛耳る計画があるんです」

「軍からの自治権侵害の次は王族からかい!」

どっちに転んでもこの学院の完全なる自治権の喪失が起きる。

てか・・・

「お嬢様は・・?」

「そう、現生徒会長は有能で魔術師の今後を引っ張る重要人物、しかしこの水面下の内戦に耐えられる裏のコネもないし、純粋すぎて真正面から突っ込むタイプで実力も未熟・・・つい先日、副会長が陛下の手紙で文化祭予算にいちゃもんつける理事会を黙らせたらしいね」

「ああ・・・そうだが」

忌々しいあの日、お嬢様の努力を・・・

「それが公式の記録で副会長の実力だけで成功した事になってるの、更に言うと、現生徒会長は副会長の威を借りた狐とか、ルックスと頭の見せかけで、実は生徒会の仕事は無能だとか・・・と、ほら吹く者たちが突如現れました」

なん・・・だと・・・そんな一大事を見逃してたとは・・・不覚・・・あまりに不覚っ!!

殺そう・・・後でそれに関わった奴ら全員殺そう・・・。

彼女は私を見て苦笑いしながら

「まあ現在の所は素人たちの非効率さと、あなたみたいに生徒会長の実力を知り、心酔者が防諜したから被害が広がらなかった・・・まあそれは想定の範囲内・・・しかし・・」

彼女は一泊置いてから、また表情を戻し

「華の夜会、王族のメンツがあり、全ての失敗がたとえ理不尽でも生徒会長に責任問題が発展するこの会、ここで何かが絶対に起きます。そして地位も名声も全て奪うはずです」

「なぜそこまで執着を?」

何とか気を取り戻した私は聞く。彼女は、推測ですが・・・と前置きしてから

「軍の介入阻止の為に学院の一時支配を皮切りに、現生徒会長を失ったら、魔術師の最高峰、魔導院は誰を後継の長にすると思いますか?」

「それはもちろん、王族クラス、特にシルバニアの・・・」

私は止まってしまう・・・まさか・・・

「そう、王国軍の牽制、そしてシルバニア王族の魔導院の支配、そして・・・実は、魔術と現代医療を取り入れて、上流階層からスラムの人に慈善活動と病院業をするイルミナル家と王族の密かな対立の決着、もちろん生徒会長の責任を家の責任にして爵位剥奪や迫害とかをね・・・」

「・・・・」

彼女の意見は突飛だ、しかし、今までの話を聞く限りでは・・・

私には戦慄が走る・・・来週・・・何が起こるんだ?

「どんな計画が夜会の日に待っているんだ?」

「それは分かりません。本来は見届けて、ヒントは出さないのが原則ですが、私もこの学院には一応思い出もありますので可能な限り調べましょう、五日後のこの時間、ここでまた会いましょう。ああ、あとこのことは他言無用で・・・それでは・・・」

彼女は地上に出る階段の方に向かって歩く。

「ふむ・・・情報を集めるか・・・」

お嬢様が笑顔で学院に居られる為に、家に汚点を付かせない為に・・・

見てろよ、お嬢様を愚弄する者ども・・・私の手で・・・お前らを潰す!

殺戮モードとは違う冷たい目で、チェーニは決意を固めた。





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