一見すると不可能そうに見える「2040年GDP1000兆円」が「可能」である理由
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は経済産業省の成長シナリオで2040年には「名目GDP1000兆円にする」との目標を作ったとのことでその狙い、実現性、どんな世界か?
について個人的な考察をしていこうと思います。
質問者:
え……日本のGDPって確か令和6年(2024年)に600兆円超えたばかりですよね?
それがたった15年で1000兆円って――経済産業省の担当者の方は頭を強く打ってしまったのでしょうか……。
筆者:
日本は30年ゼロ成長だったので、そう思われても無理は無いことだと思います(笑)。
しかし、注目すべき点は物価変動高を考慮しない「名目GDP」であるという点です。
直近の物価上昇率は3%が続いており、その物価上昇のまま行くと実現可能な水準なんですね。
東京都の最低賃金が2009年が791円、2024年が1163円となっています。この勢いで行けば2040年には1700円ぐらいになっていてもおかしくはないと思います。
またこの記事には「官民200兆の投資」とあるのですが、僕が思うに今後起きるであろう「防衛増税」や「カジノ利権」などで「一般国民とは関係のないところでブースト」をかけていく可能性もあります。
これらのことを勘案すると実はそこまで難しくない数字だと思っています。
質問者:
でも、名目GDPだとしても難しいと思うんですよ。何せ日本は少子高齢化ですからね。
労働者人口は減っていきますから、生産も消費も厳しくなっていくんじゃないかと私は思っています。
筆者:
それはもっともなご指摘だと思います。出生率、出生数共に急激に減少していますからね。24年はついに出生数70万人割れです。
それだけ若者の手元に残っているお金が少なく将来不安が大きいのでしょう。
ところが、2024年の人口動態統計予測ではなんと2040年の日本の人口を300万人ほど上方修正しているんです。
質問者:
えっ!? 少子化対策はどう見ても失敗しているのに!
統計を作っている皆さんの頭のネジが緩んでいるのでしょうか……。
筆者:
いえ、緩んでいませんよ。彼らは「外国人を増やすことを推進」することによって労働者人口を増やそうという計画を立てています。
2040年には688万人まで外国人労働者を増やし(現在は350万人)、労働者人口の1割を外国人で支えて維持する計画なのです。
質問者:
あ……「人口」と言うのは日本人に限った数字では無いという事なんですね……。
筆者:
「国内総生産」についても同様で、外国人の方の生産も含む数字になっています。
勿論AIやロボットの進歩などによって人員を削減して効率を上げることも出来るかもしれませんが、 日本はこれらの分野において現在は後進国ですので、15年後にその青写真を描くことは難しいのではないかと思います。
今後も水面下で密かに「技能実習生」みたいな形で外国人の方の受け入れは進んでいくことが予想されます。
質問者:
しかし、海外の例を見ても安易に外国人の方を入れて労働者として雇おうとしても結局のところ文化的な対立が起きて問題が起きているような……。
筆者:
本当にその通りなんですよ。
しかも現在インフレ状況でありながら賃金が追い付いていない状況が続いています。
皆さんは実質賃金マイナスが度々途切れていると思っているかもしれませんが、それはボーナス込みの金額です。
給料のみの金額で言えば何と2022年1月を最後に37カ月連続減少しているようです。つまりロシアとウクライナの問題以降ずっと下がり続けているのです。
質問者:
つまり賞与が増えていないと……?
筆者:
実質賃金は下がり続けていると言って良いでしょうね。
どうして賞与の月だけとりわけ収入が増えているのかと言いますと、
これは実務的なテクニックなのですが、役員などは賞与で一括に報酬を貰う事で社会保険料を削減することが可能(月150万円で厚生年金保険料がカンストするため)になるんですね。
これは月額の給与が一定以上の水準の社員では無い生活すら難しいため、
一部の裕福な企業の従業員とその役員以外の懐は寒いというのが現実だと思います。
◇インフレの「内容」に着目
質問者:
そう言うテクニックを使って裕福な方は節税しているんですね……。
しかし、このような悲惨な状況なのに政府はどうして物価上昇を狙い続けているんですか? これなら「デフレの方がマシだった」まであると思うんですけど……。
筆者:
世間では仕入れ価格や製造費用が上昇したことによるコストプッシュインフレと、
景気の好循環による需要の増大によるディマンドプルインフレの違いについてほとんど解説してくれません。
ロシアとウクライナ紛争以降に起きている現象はコストプッシュインフレであり、
これは消費が冷え込んでいるのに物価が上がるといういわゆる「スタグフレーション」に近い状況だと思います。
ただ、「スタグフレーション」には「失業率の上昇」と言う要素があり、今の日本では人口減少による「人材不足状況」なので、そう言われないだけと言う事です。
質問者:
ですが、望んだインフレ状況で無いことには変わりはなく、多くの国民に対するダメージは大きいですよね……。
筆者:
問題は現在の状況を需要が増えたディマンドプルインフレと混同している政治家がいるために、「減税をするとさらにインフレになる」とかいう現実とは大きく乖離した発言をしている方が散見されることです。
これが一定以上の地位についているために「声が大きい」のが更に悲惨さに拍車をかけています。
実質消費支出増加額は1%未満で推移しており、とにかく節約していることが伺えるために減税をしても問題無いと僕は考えます。
◇インフレ状況で絶対にやらなくてはいけない政策
質問者:
インフレで国民が苦しんでいる中、2024年の税収が過去最高と言う事に納得がいかないのですが……。
筆者:
これは実を言いますと財務省の「狙い」の大きな一つなんです。
まず物価が上がればそれだけ借金が過小評価されていくことになります。
物凄く極端な話、来年の国民全員の収入が年100兆円になれば1000兆円の「国家予算の借金」と言われているものも個人で返すことすら可能になるわけです。
質問者:
だから財務省は強硬にインフレを狙い続けているという事ですか……。
筆者:
実際のところ新規国債発行額を24年度当初計画に比べ6兆8000億円少ない28兆6490億円に減額し、30兆円を下回るのは、17年ぶりとなっています。
ギリギリ達成できなかったものの「PB黒字化」も可能な範囲に存在していたぐらいです。
質問者:
PB黒字化をしなくてはいけないほど、日本の財政が深刻では無いという事をもっと伝えて欲しいですよね……
筆者:
「GDP比債務残高」以外の指標についても示して欲しいところですね。
また、物価が上がると同時に収入が上がれば高額療養費などの上限額も引き上がるために、同じ医療を受けて支払う額が増えれば「国家財政が楽になる」と言った性質があるのです。
勿論その分国民の懐は寒くなりますけどね。
更に所得税や保険料も上がるために支出だけが増えて手取りの額は減ると思います。
相続税に関しても地価上昇で同じようなことが言えて、少子化で相続人数が減っていることも相まって、
相続税を課された割合は2013年が4.3%だったのが今では9.9%と増えています。
(それでいて政治家は政治団体の相続税が非課税なのだから格差が広がるばかり)
質問者:
なるほど、インフレで課税対象者が増えたり増税対象者が増えるという事ですか……。
このような状況下で必要な政策と言うのは何でしょうか?
筆者:
具体的には「各税金や社会保障の基礎控除の壁を引き上げる」政策だと思います。
「年収の壁」と言われるラインを物価上昇率又は最低賃金を基に変動させることで、
国民の懐が冷えにくくする必要があるのです。
国民民主党は「所得税の壁」に着目したまでは良かったのですが、「壁を自動変動させる」ことを政策に入れなかったことが最大の敗因だと思います。
質問者:
安易に国民民主党に「三党合意」をして欲しくなかったと当時おっしゃっていましたものね……。
何年かに1回いちいち壁に引き上げについて討論しているだけ時間が無駄ですものね……。
筆者:
まったく動かないよりはそりゃマシですけど、自民党は「文面に書いていないこと穴を都合よく解釈して突く」ことに長けていることは政治資金規正法で分かる筈です。
だから「敢えて穴を作った」のかもしれないと僕は邪推しましたけどね(笑)。
その時々の時節に応じた問題に対して話し合う必要があると思いますからね、
国会の会期には延ばす限界があるのでそう言った省略できるところは省略した方が合理的だと僕は考えます。
質問者:
そして、そう言った基礎控除引き上げがほとんど無いまま「1000兆円の2040年」を迎えてしまったなら、今後も国民が貧困化していきそうですね……。
筆者:
これもたびたび申し上げていますけど、GDPが「豊かさの指標」だという固定観念にまず疑問を持たなくてはいけないと思います。
実はエコで買い替えが少ない製品より、毎年買い替えてくれた方が「GDPとしては上」なんです。
しかし物を大事に長く使っていく日本人本来の気質とは真逆のものですしね。
「無駄に大量消費させるためのコンテンツを推奨する」のがGDPと言う異常な指標と言う事をこれを読んでくださっている皆さんぐらいはご理解いただけたらと思います。
質問者:
しかし、マスコミはそんなことを全く言ってくれませんよね……。
筆者:
結局のところ「政府や官公庁の広報紙」としての役割しか果たしていませんからね。
一定の緘口令が敷かれており、それから外れる報道をすると記者生命を断たれてしまうんでしょうね。
僕はそんなしがらみはないので、僕なりの視点ではありますが自由にこれからも政治経済について発信していきますのでよろしければご覧ください。