No.98 【貪欲なる白き嬢王】Act4 水銀体と聖母慈愛
『ルアァァアアアアアア!!! よくも。よくも私の身体を……よくも溶かしててくれわねぇぇ。外来種っ!!』
アドラだったどす黒い泥から叫び声が上がる。
〈外来種はそちらも同じ立場の筈だ。外来種……〉
おそらくこの世界でも毒性と可燃性を有する王水と空洞主液を同時に喰らい生きているとは想像も出来なかった。
だがアドラの身体は失わせた。これでマリアの身体も……
『余所見してる余裕はねえだろう。外来種っ!! 土魔法発動【水銀輪舞曲】』
どす黒い泥から液状に形成された銀の塊が私が寄生している節即魔獣との間合いを一気に詰め襲いかかって来た。
〈?! これは非常に不味い……〉
昇華スキル発動……節即魔獣【尻切蜻蛉】
謎の銀の塊に完全に覆われる前に節即魔獣を最終進化形態へと強制的に進化させ宙へと脱出した。
『ギギギギギ!!』
『……チッ! 案外鋭いじゃない。初見殺しのこの技を空に逃げて回避するなんて……(空気中で氷を作れる様になったフリューゲルは現環境では殺す事が不可能になった。殺るならあの外来種や空飛ぶ小娘を排除したから再び環境を乾燥地帯に戻さなくてはならないじゃない)』
【【【ルオオオオ!!】】】
【【【ギチギチギチ!!】】】
『五月蝿い雑魚共っ!! 土魔法発動【水銀の死柱】』
ドスッドスッドスッ!!
『ゴミが焦るなつうんだよ。(万を遥かに越える雑魚が私目掛けて迫って来る。強い個体の眷属達はその雑魚の大群の対処で身動きが取れないじゃない。圧倒的な個の孤立。あの外来種はこれを狙って今まで潜伏してたって事……戦闘における判断能力も高ければ。事前の用意もちゃんとしてたって事かよ。くそったれ)………なら万だろうが億だろうが排除して排除して殺すのみよ。土魔法発動【水銀の侵燭】EXスキル発動【白金浸蝕】』
《ルア・シンベル草原 上空》
やはり相性が悪いフリューゲルや空を動き回るクロナ嬢には近づきもしないか。
〈ならば当分2人の安全は確保されている……む? 何だね? あの白銀の沼のような広がりは……アドラが居る中心にゆっくりと広がり始めていく〉
◇
【【【アァァァア?!!】】】【【【ギギギギギギ?!】】】
『アハハハハ!! どおぉ?! 身動きすら取れずに殺されて逝く気分は? 最高でしょう? ねえ? 最高よねぇ? ねえ? アスクラム時代の塵共』
聖煌国家セフィラの王都ラビリンスで戦ったリリトの戦法によく似てはいる
だが私が出現させた飛蝗達の身体は彼等がこれまで貪り尽くした魔力で出来た身体。一定のダメージを負えば荒砂海の大地へと帰り時代の肥料となる。
その一定のダメージを負った筈の飛蝗達の身体が銀色の斑点模様が出来たのちに絶命している?
生き絶えれば消滅するのは同じだが。その過程が侵しい。まるで何かの有害な物に身体の内側から浸蝕されているようだ。
〈銀色の液体……身体の内側からの浸蝕……実体は無いが液体状の姿……!……水銀かね?……確か水銀の対処方法は彼が昔私に教えてくれた事があった様な〉
(ギエナ研究員。水銀はとても危険な金属物質だ。とりあえずそんな危険な物は何重にも何かで覆ってどこか安全な場所に廃棄するんだぞ)
(何だね? 昨日は飲み過ぎてしまってね。頭が痛いのだよ。カーマ君)
(………いや。お前まだ未成年だろう。何やってんだよ)
私は一度目の人生の記憶を必死で辿り彼の金言を思い出した。
〈危険な金属は覆い対処しろとは。それでは根本的な問題解決になっていないのだよ。カーマ君〉
〖じゃあ。その対処は私がやるから安心してギエナちゃん〗
〈む? この声は……マリアかね? 身体と心の傷は大丈夫なのか? 痛むようならば吸収装飾館 の中でまだ休んでいたまえよ〉
〖ううん。もう大丈夫だから心配しないで。ギエナちゃん〗
〈む? なんだね? マリアよ〉
〖貴方はこの土地とは何の関係もないのにずっと命がけで戦ってくれたわ。それなのにこの土地に住んでいる私達は貴方の邪魔ばかりしちゃった……だから……だから今からは貴方の力になれる様に私達が頑張るから〗
〈……マリア。何を今更水臭い事を言っているのだね〉
〖え?〗
〈私はこれまで戦った彼等の思いや記憶を知った……そして、今、下に居る元凶がいかに危険対処かという事も。そんな自然環境を破壊する存在が居るのならば自身の利益など考えず彼等の怨みを晴らすのに全力になるのは必然ではないのかね?〉
〖ギエナちゃん……君〗
〈ああ。私は元来。関わった存在達に感化され感情的になりやすい単純な性格らしいのだよ。フラマ時代の友人に良く言われたものさ……先ずはあの水銀体を対処しよう。マリア。覆いは私が。消滅は君に任せた〉
〖うん。完璧にこなしてみせるはギエナちゃん〗
〈あぁ、君を信じようっ!〉
昇華スキル発動……【百合可憐】【金触掌の誘い】
〈一気に下降し。積年の怨みを晴らせっ! メガネウラ〉
「ギォォオオオ!!」
私が寄生しているメガネウラに向かって激を飛ばすと。メガネウラはそれに強く反応し下に居るアドラに向かって全速力で下降し始めた。
◇
【【【オオォ………】】】【【【ギ……ギギ……ギギ】】】
『キハハハ!! どんどん死ね。私に負けた敗北者ど……』
「ギォォオオォォ!!」
『この羽音は……来たのね。裏切りのメガネウラ。今度こそ殺してその外来種ごと……』
メガネウラはアドラが喋り終える前に水銀の沼と化した位置の真ん中へと落ちて行った。
ドガアァァン……ゴポッ……
『プッ……アハハハハ!! 馬鹿じゃないの? まさか自爆? とんでもない馬鹿じゃない。メガネウラも……あの外来種も……アハハハハ……ハ?』
ドックンッ!
昇華スキル【百合可憐】はどんな物質の動きを止める花弁を咲かせ身動きを拘束し。【金触掌の誘い】はその花弁と化した物体を狭め縮小させていく。
「オオオオォォ! 消えろ本当の外来種!! これで貴様の時代は終わる」
『……てめえは怨念か何かかつうの。死んでも尚私に楯突くなんてろくでもない奴。そんな攻撃で私の特殊な身体《水銀》は対処出来るわけが』
〈ならばその身体と能力事彼女に返還したまえよ。本物の外来種君。ハロエ嬢、マリア来た前よ〉
『……私の力が失われていく? まさかソイツは……2000年前に全てを奪って殺した筈のソイツは……まさか?!』
アドラの身体だった水銀が忽然と消え。水銀の沼があった場所から小さな蠍が姿を現した。
〖これまで大変遅くなりました。ギエナ様。マリア《・・・》様【厄災母胎】の反転に成功しました。このスキル反転によるリソースは───北の砂上の大地から受け取りました。これは反転というよりも復元でした。そして無事に復元完了しました。マイナススキル【厄災母胎】はアルティメットスキル〖聖母慈愛〗へと変化し。
「……ずっとお待たせしちゃってごめんね。ギエナちゃん……これからは私も善の1人としてちゃんと戦っていけるから。今後は絶体に君の力になってみせるわ。アルティメットスキル発動〖聖母慈愛〗」
〖正常なアルティメットスキルの発動を確認しました。ここに8番目の───栄光の完全復活を宣言します〗
善と悪の力の均衡はここから崩れ始める。
全てを一粒の種《奇跡》から始まったこの数千年にも渡る戦いは8番目の栄光の復活により今後は更に加速していく事になる………




