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No.80 種子は汚染された荒砂海ルアマリアの真実を聴く


「かつてこの荒砂海は豊穣の地として栄えていたのよ。マリアと言う聖人によってね」


 ほこらに集められた後、アスタルテは静かに語り始めた。この荒砂海ルアマリアがどの様にして出来てきたのかを───




緑蛇神トネリコ新歴1年 》


「アスタルテ様。本日のアスタルテ様の加護のお陰で、この豊穣海ルアは新緑生い茂る場所になっています」

《聖煌国家〖セフィラ〗派遣者 聖人マリア》


(この娘が毎日。地上の実りを祠に持ってきて来れるから。私の力も日増しに増していくわね。その影響で地上の新緑も地下水脈のここも彼女な正の力で満ちているわね)


「そうでした! アスタルテ様に大切なご報告があったのでした」


(ご報告? いったい何かしら? もしかして新しいお供え物でも持ってきてくれるのかしら?)


「私。スコピオ族の殿方と添い遂げる事になったんです……つまり結婚ですね。フフフ」


(マリアが結婚?……へー、それはおめでたいわね。これで彼女の正の力がまた増え───)


 許さない…許さない…何故、私以外の女が幸せになるのよ。


(?! この声は妹のセルの声? あれはちゃんと身体と切り離して地下水脈の下層に封印した筈なのに)


「大切なご報告も済みましたし。また明日、お供え物をお持ちしますね。アスタルテ様」


 迎え。迎え。豊穣の地上へと。そして、新緑を滅ぼし破滅の荒野へと姿を変えろ。


 そして、さようなら。哀れな力と愛を失ったアスタルテ。


 力を過信し力を失ったアスタルテ……ここから先は私がここを蹂躙するわ。


(つっ! ま、待ちなさい! マリア……その娘を地上に行かせないで。選ばれた娘なら私の声が届くでしょう?)


「地上に戻れば彼に……あのお方に会えますね。フフフ、待っていて下さいね。私の大切な人」


 そうだ。迎え……大切な存在の元へ。そして、起こしてやるわ。悲劇の瞬間を────そこから始まるは惨劇と殺戮の世界だけど。


(邪悪な気配を地下から感じる。いったいどこのどいつが封印を解いたのよ! あの娘を止めないと豊穣の地が終わる)


「……地上に戻ったら私の思いをもう一度伝えないといけませんね」


 そうだ。会い伝えろ……それがこの地を終わらせる。


(マリア! マリア! 聴きなさい! それは悪の───駄目。祠《私》の結界の外に出てしまった)


《豊穣海ルア・アスタルテ》


「フゥー、やっと洞窟から抜けられましたね。この洞窟、外に近付くにつれて道が細くなっていくのが難点ですね」


「おーい! マリア。約束の時間通り迎えに来たぞ。どこに居るんだ?」


「この声はあの方の声ですね……スコーさん! 私はこちらです~!」


 そうだ。出会え。出会え。愛しき人と。


ガサッ!

「……マリア。探したんだぞ。何でこんな木々が生い茂る場所に隠れていたんだ?」


「エヘヘ。内緒ですわ……それよりも私。スコーさんにとても大切な事を再びお伝えしたかったんです」


「俺に大切な事?……それってまさか」


「……はい。スコーさんからは言って頂けたのに私はまだちゃんと言えてませんでしたので……コホンッ! お伝えしますね」


「マ、マリア。そんないきなりそんな──」


「スコーさん。わ、私スコーさんの事が──」


 人とは愚かだ。幾ら凄まじい聖人としての力を有していても。いざ心を許した者と話した時、最大の隙を生む。


 貰うわ。その清き器……聖人マリアよ。


「好……がぁ?!……これは悪のた……あぁあああああ!!」


「マリア?! どうしたんだ? 何でいきなり苦しみ出して…」ドスッ!


「……気安く近付き私に触れようとするな。下等な虫と人の混血種が」


「はぁ?!……何で俺、腹に穴が空いて……?」ドスッ!


「私の許可なく発言もするな。ああぁぁぁ!! 私のスコー! スコーの身体に大きな穴があぁぁぁ!!……黙れ。私の中の娘……フム。頭部を刺したつもりが肩に刺さるとはな。1つの器に2つの精神では不安定にも程があるが長い年月をかけて苦しめながら磨耗させ、重なっていけば良いか」


「……あがぁ……マリア。どうして俺に攻撃……なんでぇ?!」


「まだ息があるのか? 貴様。流石、魔獣の血が半分入っているだけはあるな。どれ褒美に生かしてやろう……地を這う虫ケラとしてな。スキル発動【変異】。これでこれからは好きに息よ。本物の虫ケラ同然にな。アハハハ!!」


「ギャギ……ガアァァ!!………ギチギチ……」


「そんな。スコー! 私のスコーがあんなに姿に……良い悲しみの感情だぞ。聖人マリア。それだけでお前の身体を乗っ取っただけはある。そして、その清流の様な人格を残したままお前が慈しんだこの地。豊穣海ルア・アスタルテが死に行く様を見届けさせてやろう……権能発動【蝗災こうさい】……い、いや……いやあぁぁあ!!」


 ズズズ……〖キシシシ!! 白い嬢王。どこまでやって良い? どこまで喰えるんだ? キシシシ!!〗


「……全てだ。全てを喰らうことを許可する。汚物よ。長い年月をかけても構わん。この豊穣の地を荒廃した腐敗と枯れ草も残らぬ不毛の地に変えろ」


〖ギシシシ!! 了解了解了解了解了解了解了解了解イイィィ!! 全てを喰らうゼええ! スキル発動【悪食】……草も人も魔獣もその女もなああぁ!!〗


「イヤ?!───イヤアァァァ!!」



「これが私が地上で聴いたマリアの記憶よ。それから2000年の長い年月をかけてこの地は豊穣の地ルア・アスタルテから荒砂海ルアマリアの地へと変貌を遂げたわ。そして、それを引き起こした奴等は今も群れで生きているの」


「そんな……まさか俺と別れた後、そんな状況になっていたとは思いもしなかったぞ。何故、ウィリディスや俺を頼らなかった? あの頃ならば俺はまだ……」


「無理よ。私は世界樹ユグドラシルとの契約でほこらで護られているけど外には出られないもの。それに下層の封印が解かれるなんて考えもしなかったわ」


「裏切り者がいたんだろう。2000年前の俺達の中に……そして、これで合点がいった。今のアスタルテが昔の様な荒さが失くなっているのかをな」


〈それで? 私にその話をしてどう動いてほしいのかね? その様なこの世界の根幹を成す話を情報開示のレベルを無視をしてまで教えるという事は、私に何かをさせる気なのだろう?〉


「へー、貴方って感も良いのね。流石がウィリディスに《眼》を貰っただけはあるわね。話が早いわ。なら早速、お願いしようかしら……そうね。先ず最初は北から来る災害の対象かしらね」


〈下から来る災害の対象? 災害などこの地では日常茶飯事ではないのかね?〉


「その災害じゃなくて……虫による蝗災こうさいよ」


《荒砂海ルアマリア 地上》


 北から南下してくる群れが入る。


 黒、緑、茶、灰色等。その身体の色は種族によって多種多様に。


 ただその群れには意志がある悪食という群れ全体の食への意志が。


 2000年前からその特殊災害は続いている。

 

 冠位グランドの上位種の身体の中へと生き延びたモノ達以外を生き残る事が不可能な災害───蝗災こうさいがやって来る。


「シャハハ!! お父上様! デッケエ化物共以外は全部喰って良いんだよな?」

「地上も地下も全部全部?!」

「お父様。お父様。お父様の遠い子孫共が荒砂海のあらゆる生物を食べてるぜぇ!」

「食べる。食べる。食べるー!」


『おお! どんどん喰って喰って喰らい尽くせ。子供達。嬢王様からは喰える奴等は全てを喰らい尽くして良いと許可を貰ってるからな。そして、その手柄で空いたプレウラの席はワシが奪い取ろ。悪食の様にな』

《最上位種 飛蝗螽老グースベリー・エンペラー よわい2000才 》

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