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No.77【千脚の蟲魔獣】Act4 無理心中


 昇華スキルの一部【金薔薇の脚】の効果により金のいばら根、蔓により全身を捕縛され。


 木属性魔法【つぼみの開花】で巨大害虫プレウラの身体からあらゆるエネルギーを魔力の花弁へと変化させ、私へと還元させていく。


 蜈蚣むかでという生き物はたとえ手足や身体の一部を切断されても数時間は生き延びるといわれている。


 それがあの大きさの場合はいったいどれ程生き延びるのだろうか? 数日? 数ヵ月? もしくは数年単位で生き残るかもしれない。


 生命力が異常過ぎる。もしここで彼を全力でもって切り刻まなければ。傷を癒し再び襲って来るかもしれない。


 だから一切の手加減など出来るわけもなかった……言い争う彼等の隙を突き一気に決めた。


 それがズルだとは言わせない。これはどちらかの生存を懸け更なる高みへと行く為の闘いだった。


 彼等の中に何かの慢心はあったのだろうがこの勝負は私が勝たせてもらう。そして、次のステージへ上がるんだ。


〈下へと向かおう。世界観測。彼等の悪意以外の全てを吸収し進化する為に〉

〖……ええ。そうしてあげなさい。かつて天上の虫遣いと言われたプレウラの為にも〗



「切られた。切られた。私達の身体……切断された」

「黙れ。成れの果て。そんなもん分かってんだよ! たかだか身体を8等分に切断されたからって騒ぐんじゃねえよ。こんなもの身体を付け合わせて【脱皮】していけばそのうち治る……」

「兎……さそり……来てる来てる……今の私達は動けない…のに来てる」

「あん? 兎とさそ…何だと?」


「ギュル……」「ギチギチ!」


 茶色兎のは何かが入れられた小瓶を数本手に持っていた。


「ギュギギギ!」


 そして、その茶色兎は切断されたプレウラの身体に近付くと立ち止まり。蠱毒と強烈な酸が配合された小瓶を無造作に投げつけた。


パキンッ!

「………ギガァ? 何だ? この感覚は? 俺の身体が溶けて」

「逃げろ。逃げろ。ヤスデ……溶かされる。お前のお前の身体が全て溶かされるぞおぉ」

 

 そこで巨大害虫ヤスデとプレウラは気づかされる。切断されても残っていれば復元出来たであろう自身達の身体が蠱毒の猛毒で身体は腐り、強烈な酸であらゆる細胞が溶かされている事を。


「ギギギ!!」

ドスッ!


 そして、黒色の小さなさそりも無抵抗な巨大害虫ヤスデとプレウラの切断された傷口に【毒針】を刺した。


 この【毒針】も茶色兎が投げた小瓶と同様な効果を付与されていた。


 刺された傷口はみるみるうちに紫色へと変色し、魔獣が焼き焦げた時の独特な死臭の臭いが辺りに漂った。


「止めろおぉ! てめえ等!! 俺の身体を溶かすんじゃねえぇ!!」

「あ、あ、アアアアア! 痛い痛い痛い痛い!! 身体が溶かされいく強烈な酸と猛毒でえぇぇ!」

「うるせええぇ! 黙ってろ。成れの果てえぇ!」


「ギュル……」「ギギギ……」


パキンッ!……ドスッ!……パキンッ!……ドスッ!……パキンッ!


 それは何かを奏でているかの様に静かにリズミカルに巨大害虫ヤスデとプレウラの身体を頭頂部だけ残して溶かしていった。



《地殻脱け殻の巣》


「くそがぁぁあ!! これじゃあ。【再生】すら出来ねえじゃねえか! ふざけんなぁ!」

「あ、あ、あ、アアアアア。私が付いていながら。済まねい。済まねい。ヤスデヨオォ」

「黙ってろ! 俺の名前はプレウラだぁ!」


〈……仲間割れはその辺にしておいたらどうなのだね。巨大害虫プレウラ君〉


 私は彼等を追いかけて荒砂空洞アガル・サンドル 中層へと降り立った。


「……やっと感知出来たぞ。てめえが俺の身体を溶かしやがった元凶かぁ?!」

「ああ……助けて下さい。助けて下さい……せめてヤスデだけでも助けて下さい……私はこの子為なら何でもする。この子は本来こんな姿になるはずなったんだ」

「だから黙ってろって言ってんだろう。成れの果てえぇ! まだ俺は負けちゃいねえぇ!」


〖…………プレウラさん〗


〈そうかね。ならばかかって来たまえよ。その頭だけの姿でね〉


 私は巨大害虫ヤスデにあえて冷淡に接した。プレウラの気持ちを読み取れない巨大害虫ヤスデに向かって。


「この子は本来あちら側だったのだ。それがあんな存在にあい反転させられただけだった……この子は本来良い子に育つ筈だった……筈だったんだ」

「………うるせえ。黙れ……成れの果て……俺は俺だ。プレウラだ。ヤスデ何て名前は知らねえ……それに俺は負けちゃいねええぇ! まだまだ戦えるんだよ! 虫魔法発動【群体蜈蚣双曲】」


 巨大害虫の魔法の発動と共に中層の岩場にあった巨大蜈蚣の脱皮した腐り切った皮膚が巨大害虫に集まっていき。


 巨体な細長い蜈蚣の形を形成し、空中でその巨体な身体をくねらせ私に狙いを定めている。


『ギャハハハ! ここは俺の縄張りであり脱皮した脱け殻がそこらかしこにある《地殻脱け殻の巣》なんだよ! 調子に乗りすぎだな。まさか特種個体ユニーク自身が保有するテリトリーに落としてくれるなんてよう! 仕返しの開始だぜぇ! 喰らいな。虫魔法【頭顎の毒針】』


 巨大害虫ヤスデが私に向かって頭部から突撃して来る。


「止めなさい…止めなさい。ヤスデ。それ以上動けば……」

『ギャハハハ!! うるせえぇ! これで俺の勝ち……』


「ギュル……」「ギギギ!!」〈《昇華スキル発動【黄金薔薇ゴールド・ロゼリア】》。悪夢から覚めてから旅達たまえよ。君達……去らばだ〉


パキンッ!……ドスッ!……スパンッ!……


 私の目の前までに迫って来た巨大害虫に長耳兎ロング・ラビルが【酸蠱毒】の小瓶をプレウラの顔に投げつけ。


 毒蠍ポイズ・ピオンの毒の尻尾でヤスデの頭頂部を突き刺した。


 次に私の黄金薔薇ゴールド・ロゼリアの棘で頭頂部全体を突き刺し彼等を絶命させた。


『ギガァ?!……こんな攻撃で俺が死ぬのかよ』

「………ヤスデ」


〈君達にも君達の事情があるのは理解しよう。同情もする。だが君達は私の新しい友を殺そうとした。ならば私はそれを全力で阻止する義務がある……だが安心したまえよ。君達の糧は私が全て引き継ごう。悪意以外の全てを!〉


『……ギア……俺達の全て……』

「……ああ、そうか。君は新しい光……そうかそうか……そうなのか。ありがとう…ありがとう。私達を解放してくれてありがとう。新しきオウルの後継者殿」

『……ギギャア。あれ? プレウラ……何で泣いてんだ? 俺が泣かせたのか? 大丈夫か? プレ……ウ……ラ』


─────ズズズ………


〖無事、スキル【吸収】が発動しました。プレウラの思考及びヤスデの屍体、脱皮破片、思考を解析。成功しました……莫大な経験値を獲得により幻樹種・夜乃女王サンド・セレノフィルから幻樹種・天竺牡丹ダリア・ラノンケルへと進化可能になりましたがいかが致しますか?〗


〈………今は止めておう。そういう気分ではないのでね。そして、私達が彼等に出来るのはここにある全ての彼等が残した糧を【吸収】し、私達が彼等の存在意義を次ぎに繋げる事だ〉


 スキル発動……【吸収】


 ズズズ……


 私は巨大蜈蚣ヤスデとプレウラが残した全ての脱け殻を回収し、《地殻脱け殻の巣》を静かに後にしたのだった。





「プレウラプレウラ! 起きろ! 早く起きろよ!」

「おや? ここは?……それに君はヤスデか。随分と小さくなってしまったんだな」

「うるせえうるせえ。それよりも早く行こうぜ。あの暖けぇ場所に一緒によう! 俺はお前がいないと迷っちまうんだよ!」

「私がいないとヤスデが迷う………ハハハ。そうか。ヤスデは迷ってしまうのか。そうだよな。まだまだ君は幼かったな」

「……何、泣いてんだ? プレウラ。苛められたのか? お前を虐める奴がいるなら俺がぶっ飛ばしてやるぞ」

「いや。なにもないよ……やはり。ヤスデは優しい子だ…………共に行こうか。ヤスデ、私と共に優しい世界へ」

「ギギギ! おう。俺達はずっと一緒だぞ。プレウラ! ギギギ!」

「ああ……ああ。私達はずっと一緒だとも。ヤスデ!」


 そして、彼等は光の道を共に行く。暖かい場所へと共に共に何人にも邪魔されず安らかに光の場所へと───



千脚の蟲魔獣



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