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No.71 北雪国の覇者・フリューゲル


《数ヶ月前の荒砂空洞 アガル・サンドル》


 (オウルも死んだ。コクマーはまだまだ未熟者で、俺も奴の転移でこの様な死地に飛ばされ、飲まず食わずでいずれは死ぬ。このままでは我々は負けるぞ。ウィリディス。それに加え、友であるお前も思念体となるとは)

『……面白い苗木を見つけたのだ。フリューゲル』

「苗木? 何の事だ? 今はこの劣勢をどうするか相談しているんだぞ」

『……その苗木は過去の行いをい。正義を選び、みずからの力のみで強くなろうとしている。いずれお前を救う程の知と力を付けたと判断すれば援軍として送ろう。余の友・フリューゲル』

「待てっ! ウィリディス。話はまだこれからだぞ……再び眠りについた。援軍とは誰の事を言っているんだ?」




《荒砂空洞 アガル・サンドル》


「ここは荒砂海ルアマリアでも唯一の安全地帯。荒砂空洞 アガル・サンドルと言ってな。遥か昔は罪人の流刑地としてされていたんだ」

〈荒砂空洞 アガル・サンドル? 安全地帯か。ならばソフィア嬢達を外へ1度出してやっても大丈夫の様だな……〉

「それは人族か? それとも亜人種か?」


 フリューゲルは鋭い視線で私の行動を静止する。


〈む? あぁ、人族とエルフ族だが。それがどうかしたのかね?〉

「ならばした方が良い。人型の生き物はこの環境では直ぐに殺されるからな。ギエナが何の空間を所有していおり、どんな仲間が居るのか知らないが。外に出すのはリスクが大き過ぎる」

〈……そうか。ならばフリューゲルの言う通りにしておこう〉

「あぁ、それが懸命だ。俺やクロナにとってもな」


 一瞬。フリューゲルの顔が不気味に見えた。とても不気味に────




「…………お師匠様。御姉様が……」


 不自然な青い炎が暗い洞窟を明るく照らす。そして、フリューゲルの膝に頭を乗せて寝息きを立ている。


「……クロナには負担をかけてしまった様だ。食事をした後、直ぐに寝てしまうとは。それにまさか。ギエナが陰ながらクロナを守ってくれていたとはな。感謝しよう」


 最初に出会った時とは違い。穏やかな表情している。


〈あ、あぁ、クロナ嬢が無事で何よりだ〉


 現段階で敵わない相手と対話するという事は、相手に自身の生殺与奪を握られているという事になる。それは今の弱い私にとってはとても不味い状況だ。


「そうやって警戒するな。先程はお前がどんな存在なのか知らなかった故の行動だった。今は同士……いや。同じ仲間として接している」

〈同じ仲間? それはどういう意味かね? フリューゲル殿〉


「俺は北の雪国から仲間を求め、南下し来てな。まぁ、なかば強制的にここへは飛ばされて来たのだがな。ちょっとした油断で死にかけていた。それと俺の事はフリューゲルと呼び捨てで良いぞ。だから俺もお前をギエナと呼ばせてくれ」


〈了解した。それで? 仲間集めの為に北の雪国から来たとは、どういう事なのかね? フリューゲル〉


 なんとも気さくな性格をしている人物だな。このフリューゲルという青年は、利発そうでもあり。思慮しりょ深い人物に見える。


「………まだ。知らない方が良い。コクマーの小僧にもまだ教えていないからな。自身が特別な存在とおごり、闇落ちされても困るからな」

〈闇落ち? 私は既に谷底まで深く落ちしているがね〉

「ハハハ。何の冗談だ? それよりも食料を分けて貰って助かった。後1日でも遅れていれば俺もクロナも死んでいたかもしれん」


 フリューゲルのこの言葉で私はある1つの疑問を彼に投げかける。


〈それよりも何故、この様な食料も無いに等し場所で過ごしていたのかね? ほどの力の持ち主ならばこの世界では好き放題出来るのではないかね?〉

「馬鹿を言うな。俺は護る側だぞ。征服狐バンキッシャー、眠りスリルミスリム奴隷王アグノスの様な奴等と一緒にするな」

〈……また。私の知らない強者の名前か。この世界にはまだまだ強い者達が沢山入るとのだな〉

「ん? あぁ、沢山いるぞ。まぁ、強さにも色々な基準がある。魔法、職業スキル、スキル、称号、権能。それらをどう使うかで強さの優劣も変わってくる。それに環境や地形もその地の支配者で左右される事もあるな。俺はそういった全てのものに関係なく別格だがな。ハハハハハ!!」


 目の前の銀髪の青年フリューゲルはかなりの強者だ。彼はこの世界について私があったどんな者達よりも詳しいのだろう。


 欲しい。彼の持っている極上な世界の情報が私は欲しい。そして、今よりも強くなり。ソフィア嬢達を守れる程の力を手に入れたい。


 王都ラビリンスでは、屍体リリト銀狼フェリックスの毒により、ソフィア嬢やアレゼル少年達を危うく死なせる所だった。


 私はこの世界で私に優しくしてくれた人達を大切にしていきたいんだ。


「…………ここまで来るまでの間。色々あった様だな」

 

 フリューゲルは私を見詰めて静かにそう告げる。


〈君に質問したい〉

「………あぁ、現段階の世界開示でギエナが知れる範囲までなら答えてやろう」

〈随分とふくみのある言い方だな。その言い方。まるでまだ私が弱い様に聞こえる〉

「まぁ、実際にお前はまだまだ弱いだろうな。俺の愛弟子クロナよりな」


 私はそれを聞いて少しイラッとした。なのでこちらの戦績でも伝え様と語り始めた。


〈……いちを私はこの世界に来て、ナヘマやリリト等といった強者達を倒して来たのだがね〉

「ナヘマにリリト? まさか。ギエナはここまで来るのに【不安定】と【物質主義】を……ギエナ。少しお前の過去を見させてもらってもいいか?」

〈私の記憶? どこまで探る気かね?〉

「この世界に来た時までの記憶だ。戦闘だけのな。他は絶体見ない事を約束する」


 フリューゲルのこの真剣な眼差し。これは嘘をついていないという眼だ。


〈あぁ、良いとも。好きに見た前よ。この世界での私の戦闘の記憶をな〉

「そうか。感謝する……EX スキル【心理掌握しんりしょうあく】」


 ……心の一部分を深く読み取れる感覚が、脳裏に電撃の稲妻の様に走る感覚だ。


「ふむ…ふむ…ここまで来るのに2人を倒したのは見事だ。だが進化は余り上手く進んでいないのだな……なんとコクマーの小僧に焼かれてここへと来たのか? あの小僧。また味方の話を聞かずに1人で判断したのか」


 フリューゲルは目を閉じながら、私の戦闘記憶を見ているのだろうか? ぶつぶつと独り言を喋っている。


〈どうだね? フリューゲル。これで私もクロナ嬢に引けを取らない事が理解できただろ…〉

「進化だな。そして、職業スキルも必須ひっすだ。さいわい、この地には高位の経験値持ちが待ち構えている。絶好のチャンスだぞ。ギエナ」

〈……か? 進化? いや。進化ならば2日程前にしたばかりだがね〉

「遅い! 俺だったらとうに四足歩行型にまで登り詰めている。せっかく出会った仲間をこのまま死なせるわけにもいかんのでな。お前が俺程になれるまで、強くしてやろう。ギエナ! 光栄こうえいに思えよ。ハハハ!!」

「………私がフリューゲル程に強くなるだと? そんな事、現段階で可能なのかね?」


 私は高笑いするフリューゲルを見詰めながら、質問したが。何故かスルーされた。


《地殻脱け殻の巣》


「ギヘヘェェ! 狩り! 狩り! 狩りいぁああ!! 楽しい楽しい。殺す狩り!! 俺が傷を負わせ殺るぜぇ! フリューゲリュウウ!」


 その時の私とフリューゲルは気づいていなかった。膨大な経験値を持つ怪物が直ぐそこに近付いて来てる事を……

 

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