No.65 種子は旅立つ。荒廃の地を
「ギシギシギシ!」
先程、倒した【毒蠍】に寄生し、【傀儡】スキルで操りながら、途方もなくさ迷っている。
地平線の彼方まで茶色の荒野が広がり、砂塵が時々、巻き起こる。
草木など一切生えておらず。この地帯一帯が高温なのだろうか? 蜃気楼が時折、見え隠れしている。
その原因は勿論、この世界の真上に浮かぶ灼熱の太陽のせいでだろう。
試しに草虫、月熊、屍体等を【傀儡】スキルで出現させたのだが。
(ギギギ……!)(ギャアアア!!)(アアァァ!!)
出現と同時に悲痛な叫び声上げ初め、大陽の直射日光に当てられ、数分も経たずに消滅した。
どうやら地下水路の時と同様にこの地で生きる為の適性がなければ、直ぐに淘汰されてしまう様だ。
◇
〈しかし、数時間前までは擬態状態とはいえ、前前世の姿の人状態でいた為か。久しぶりに【傀儡】スキルで出現させた物体への寄生というものは、変な違和感を感じるものだな〉
〖それは仕方ありません。そもそも人でございましたギエナ様が、自我崩壊を一切起こさずにあらゆる進化に対応しているのが奇跡の様なものですので〗
〈奇跡の様なもの? 何故かね?〉
〖はい。お応え致します。特種個体、人族の特種血統、亜人種、魔獣等の方々は進化をすればする程、強くなっていきますが。進化する方の意志が弱い場合は自我が自尊心と残虐性に支配され落ちています。逆に意志が強ければ高潔な魂として更なる高みへと登って行くのです〗
〈つまり私は意志が強いと言いたいのだね?〉
〖そうです。ですがギエナ様の場合は、何度も進化を繰り返しているにも関わらず。元になる人格は全く変わっていません。本来、これ程の進化を短期間で行えば自我が崩壊します。そして、その後は無差別に他者を攻撃して、力あるものに討伐されその生涯を終えるのです。一部の例外を方もいらっしゃいますが〗
〈成る程。では私が自我崩壊を起さなかったのは【智慧《仲間》】のお陰なのだろう。彼が居てくれたから今の私があるのだな。【智慧】よ〉
〖……(聞いていた話や資料と全然違う方。1度目の人生で本当に極悪人だったのかも怪しくなってきましたね。それにギエナ様は先のセフィラ王国の戦いでは仲間を全て守り抜いて、強敵を倒して更に成長なさいました。この方なら、この草木枯れた荒砂海ルアマリアでも生き抜いていけるかもしれません)〗
◇
代理の世界観測は本当に常時、私に付き質疑応答をしてくれる様だ。ありがたい事だ。
これならば何か知りたい事があれば、直ぐに聴けるし、相談もしやすい。
それに先程のステータス画面の画面整理なども片手間にやってしまうとは恐れ入ったものだ。
このまま臨時の世界観測が私の担当になってくれれば嬉しいがそれは無理といったところだろう。
なんせ私を担当している世界観測は、多分なのだが一度……
〖敵対反応を確認しました。ギエナ様、注意して下さい。その数およそ8匹、蟻地漠です〗
臨時世界観測からの警告が聴こえて来た。先程まで荒野を進んでいたと思ったが、いつの間にか地形も変わっていた様で、周囲一帯が砂に満ちた場所、砂漠であった。
「ギギギ!」「ギゴギゴ!」「キシキシ……」
周囲の砂が突然、減り始めた。いや、穴が空き始めたと言うのが正しいだろうか?
私が歩いていた場所の砂が凹み始め、だんだんと三角状のクレーターの様な状態に変化していき、そのクレーターの真ん中辺りには、謎の虫達が確認出来た。
〈なる程。この突然の地形変化はあの虫達が原因か。やはり虫か。私の未知なる冒険の序盤にはやはり虫が関わって来るのだな〉
〖ギエナ様。感傷にお浸り中の様ですが、失礼致します。現在、この地の生物に対してギエナ様は適性の魔法もスキル取得していません。ですのでここは早期撤退を選ばれるのがよろしいかと思いますが、いかが致しますか?〗
〈いや。撤退はしないさ。全て倒して【吸収】で虫達のスキルを頂こう。代理世界観測……では少し長すぎるな。代理世界観測よ。君には他に何か名前はないのか?〉
〖違う名前ですか?……ではハロエとお呼び下さい〗
〈ハロエか。了解した。ではハロエ。よろしく頼む〉
〖はい。ギエナ様、これより戦闘を開始なさいますか?〗
「ああ、あの虫達は私がこの地で生き残る為の糧に。新たな地での戦い方を学ばせてもらおうじゃないか〉
スキル発動……【毒針】【殻鋏】
「ギシギシ!!」
私が傀儡として寄生している【毒蠍】もどうやらやる気になっている様に見えた。
〖畏まりました。では、このハロエも全力でサポートさせて頂きます〗




