No.63【祭典のレクイエム 銀灰色と死者】 Act6 揺動のリリト
時間が刻一刻と迫って来ている。EXスキル【幻草】の効果が無くなるまで後、数分といった所だろう。
私が考えいたよりも白髪騒男君やリリトは強かった様だ。時間配分を間違えしまったな。
EXスキル【幻草】で1度目の人生に擬態しているとはいえ、今の状態は何故か少年期の姿だ。
これでは思う存分には戦えないのも当然だろう。だが、それでも勝たなければならない。
私が負けて死ぬ様な事があれば、《 吸収装飾館 の中へと避難させているソフィア嬢達が、外へと強制的に排出され。この死の毒素が充満する場所へと来てしまうのだからな。
「しかし、何で少年は俺が放つ腐敗で身体が解けないんだい? 可笑しな奴だな。お前」
「金や銀は腐食しにくいのだよ。リリト君……だから私の体《金》も武器《白銀》もそう易々《やすやす》とは錆びないのだよ。スキル発動【銀縛】」
「ちっ! 拘束のスキルを更に付け加えやがった……がぁあ?!」
白銀色の花弁が周囲に舞い上がりリリトの視界を奪い、白銀色の宿り木の蔓が身体縛り。白銀の針がリリトの全身に突き刺さった。
「────やるねえ。少年の一撃、一撃には、殺意も重みもある。まさに短期決戦に相応しい必殺だぜ………なら俺も出し惜しみはしねえ……ルシフェリさん。頼むは」
【………畏まりました。。リリト様。私は貴方、絶対的な勝利を確信しております。では………行ってらっしゃいませ。我が主様。またお会いしましょう……】
「ああ、俺が正気だったらな……【権能】行使するぜえ! あらゆる物を腐敗させろ。【不安定】」
屍体がそう叫んだ後だった。彼の身体は全て溶け、巨大なゲル状の化物と変化していく。
「少年に勝っても、俺が元の姿に戻れるのは数十年はかかるが……あれと殺り合うよりは遥かにましな選択だよな」
「ああ、慧眼とも言っても間違いないだろう。君と私が思い描いてる私達共通の脅威が、この王都の惨状を見れば。消されると思われるのでね」
「だな……それを考慮したのこの逃げやすい身体さ」
一瞬。私達の間に間が出来る。そして────
「君には因縁も恨みも一切無いが、立ちはだかる脅威は対象しなければならない。済まないがこれで終わりたまえよ。EXスキル発動【枯樹生華】」
「この気配。ナヘマちゃんを倒したのもどうやら少年だったみたいだな。これも因果かね?────悪いが返してもらうぜ。【唯物】はよう。害毒魔法発動【毒腐揺動の屍】EXスキル発動【死屍累累】」
猛毒の沼が出現し、リリトと一体化していく。そして、その沼の中から人型、獣型、植物型の屍体が沼の中から這い上がって来た。
「一国を崩壊させうる力だぜ。何せ俺が巨大な沼となって移動し、毒素まみれのコイツ等が人や建物、水原に至るまで全てを腐食し、汚染させちまうからな。これで終いだぜ。少年!」
「まさに強者に相応しい能力だ。だが、それも腐敗させられなけば、無意味と思わないかね?」
「あっ? 何だと」
「……今こそ、【智慧】が施してくれた。罠を使う時、一斉に発芽せよ! 王都中に散らばった。私の輝金種子達よ」
私のその言葉が切っ掛けとなり、王都ラビリンス中の水路からギシギシと言う騒音が聴こえ始めた。
「何だ? 何をしやがったんだ お前?!」
世界にはどこにでも動植物達が暮らしている。植物は種から発芽し成長していく、やがて蕾を付け、太陽や月明かりに照され、開化する。その後は実を付け、次の世代の為の種子を付けばら撒き朽ちる。それが植物のサイクルだろう。
ではその、ばら撒かれた種子は、どの様にして、他の土地で芽吹くのだろうか? その答えは単純だ。鳥獣達が口に運び、食し排出する。
あらゆる種子はありとあらゆる場所で、鳥獣達に運ばれて種をばら蒔く。【叡智】とシルがそうしてくれた様に。
「終わりだ。リリト君、君の敗因は1つだけだった。身体を変化させた事だけだった。これにより君の腐敗の栄養が効率良く、私がばら蒔いた種子達を成長させてくれるだろう。黄金木々の質量に押され、吸い尽くさらせると良い。去らばだ」
「何だこれ? 俺に向かって金色の木の枝が向かってくる?……がぁ?! 腐食できねえ?……俺の腐敗が吸われていく?! がああぁぁあ! 止めろ! 俺の死体共を貪るんじゃねえよ!! ああぁぁ!! こんなあり得ねえ……俺の身体が侵食されて……俺、自身が巨大な……木にな……る……なん……て……」
リリト君はそう最後に告げると、黄金種子に無理矢理結合され。その存在をこの世から消した。
「……ふー、丁度終わった……」
私が一息着こうとした瞬間だった。EXスキル【幻草】の効果が遂に切れ、元の……いや新しい身体の輝金種子へと変わったのは。
〈綠樹種。新たな進化形態か〉
〖【揺動のリリト 】の撃破を確認しました。スキル【吸収】を強制発動し。回収、解析を行います〗
〈む! 世界観測か。待て、そらよりも今は他にやる事があるのだよ。一先ずは実を隠せる場所へ〉
〖何よ? 別の脅威は全部去ったじゃない。それに目の前は《サン・コクマー大聖堂》安全よぉ……バチンッ!……失礼しました。【吸収】スキルを発動します〗
どうやら世界観測よりも上の者に怒られた様だな。
スキル強制発動【吸収】
サン・コクマー大聖堂に散らばる、黄金樹木、リリトだった物、散布する毒素、沼。ありとあらゆる物が【吸収】スキルで吸収されていく。
〖回収完ました。これにより。綠樹種・輝金種子LV1のレベルがLV4へと上がりました。また新しく毒魔法を取得しました。各種毒系統スキルを取得しました。称号【毒の匠】を取得しました。またありとあらゆる毒耐性が付与されました……そして、【不安定】を獲得しました。こちらは《 吸収装飾館 》内にある《 緑美術館 》で展示されていますので、後程、ご確認下さい。また今回のスキルポイントの贈呈は一段進化と【揺動のリリト 】の撃破に伴い10000ポイントを贈呈致します〗
〈何? 10000ポイントだと? 何故、そんなに破格な数字を……〉
そう私が世界観測に尋ね様とした時、それは現れた。
ドガアアアンン!!
〈? 何だ? いきなり〉
〖あっ来たじゃない強い援軍が〗
〈援軍だと? いや、この殺気はあまりにも〉
「人が祭典の儀式で留守中によくも好き勝手暴れてくれた様だね。魔獣君」
何だね? これは───大量の熱い火? 今は私は燃やされているのか?
何故、気づかなかった? いつの間にこんな。
「まあ、良いや。僕の権能で王都内の変な木は燃やせるしね。だから君は燃え尽きて良いよ……さようなら」
〖待って下さい! ソイツはアナタの───〗
「〖終炎の彼方〗」
私、白髪騒男、リリトがもっとも警戒していた者が現れた。
そして、現れたと同時に、私は一瞬で身体《種子》を焼かれた消滅した。
《聖煌国家セフィラ編》終了




