No.62【祭典のレクイエム 銀灰色と死者】 Act5 擬態VS腐敗
これがEXスキル【幻草】の本当の力──擬態創造という感じだろうか?
顔もある。左手も右手もある。左手も右手もだ。五体満足の感覚はいつぶりだろうか?
ここで1つ私はゆっくりと瞬きををし、思考を整理する。
【智慧】が体験したあらゆる経験が私の中に流れて来る。この世界で人と接し、触れ、会話し、分かりあっていく過程の記憶だ。
「成る程。君は私にこれを学ばせ、成長させる為にこんな危険な場所まで早急に来てくれたのだな。改めて感謝を伝える。人の優しさの一部を学ばせてくれた事に」
「おいおい! 何を呑気に目なんか瞑ってるんだい? そんな隙だらけだと、先に攻撃をさせてもらっちゃうぜえ! 少年。毒魔法発動【毒の長剣】、スキル発動【毒宿】」
「私が彼に感謝を伝えているんだ。邪魔をされると困るのだがね。リリト君……まだまだ初級魔法しか使えないが、それはスキルと併用すれば補える。この巨大主鰻が残したの飽和した自然酒や【水溶】の様に、雷魔法発動【雷の光】」
私は指先に雷の閃光を放った。
「馬鹿かい。少年、そんな雷の光じゃあ。俺にかすり傷も付けられないぜ」
「ああ、だが度数の高いアルコールは些細な着火点でも、火を瞬時に広げる。今、この場に広がっている自然酒のアルコールの様な。空魔法連続発動【籠の鳥】」
「あ? アルコールの度数だぁ? なんだいそれは……」
バチバチ……バリバリ……ドゴオオオン!!
私は進化して移動距離が5メートルまで拡大した空魔法を発動し、空の上へと駆け上がった。
その次の瞬間だった。
リリトが居る周囲一帯。自然酒が撒かれた場所だけが火の海になり、リリトを巻き込んで空高く舞い上がった。
「ぐおおぉ!! 何だいこれは? 俺の身体が燃えいきなり燃えやがああぁぁ!!」
◇
あれ程の炎上で身体の形を残している。やはり燃やした程度では消滅しないという事は───彼は屍体か。
身体が腐っている為、状態異常のスキルも使えない。傀儡を出現させても彼の毒魔法で毒に犯され、消滅するだろう。
フラマやアリーナの世界では、屍体には聖水や光魔法が有効だったが、私は光魔法は習得していない。
ナヘマやアレゼル少年にこの毒素が充満する環境化での戦闘はさせられない。
こんな時にソフィア嬢がサポートとしていてくれれば良かったのだが。
地上で燃え終わり再生し始めたリリトを観察しながら、あらゆる倒す手を思案しているがなかなか良い案が思い浮かばない。
「恐らく。彼を倒した後にも何かが来る。それは地下水路なのか、それとも別のどこ…」
「キュキュイィ!!」
ん? あれはシルか? 何故、こんな危険な場所に来ている。
ああ、そういえば。【智慧】が最後に言っていたな。もう少ししたらやって来ると……戦いに巻き込んでは不味い。
《 吸収装飾館 》の中に避難させておかなければ───
私はそう判断すると空魔法の発動を解いて、シルが居る場所へと降りていった。
「あのガキ。突然、出てきたかと思えば。いきなり周りを火の海にしてくれたな。自分だけ空の上に逃げやがって……そんで相手は今どこに? 何でよりにもよってサン・コクマー大聖堂に降りてってんだよ。それにこの気配───ティファレトか!」
◇
「キュイイ!!」
「シルちゃん。待って下さい! ここは危険ですよ」
「こらぁー! 肥満兎。貴様、また単独行動をとりおって! 何故、ソフィア様の言うこと聞かないのだ? この! やっと捕まえたぞ。肥満兎」
「キュキュイ!」
「何? 話してよだと? 誰が離すか。王都中に排出物を撒き散らしおって! おかげで水路中に可笑しな種が詰まっていると報告をだな」
「……シャーロットさん。お静かに。誰か来ます!」
「ソフィア様? どうされましたか?」
シルの近くに誰か来ていると思っていたが……
「だ、誰でしょうか? 人間の姿のヘルナさんを私、位に若くした様な……」
「ソフィア様。お下がり下さい。コイツは危険です…」
「キュキュイイ!」
「シル。数日振りだな」
シルが私の肩へと飛び乗って来た。だがソフィア嬢とシャーロット騎士は私を警戒して、私に近付いて来ようとしない。
どうやら、いきなり空から降りて来たせいなのか。2人には警戒されている様だ。
「ソフィア嬢とシャーロット騎士とは驚いた」
「キュキュイン!」
「ああ……【智慧】には感謝しているよ。シル」
「キュキュ?」
「〖君の善の成長を知れてな〗と最後に言われた。だから勝つさ。この戦いに……勝ち次なる進化に進む。その為には先ず……ソフィア嬢」
「は、はい! 何でしょうか? え~と」
「ギエナだ。直ぐにその杖に光魔法を発動してくれたまえ、時間が余り無い。私を信じて直ぐに行ってくれないか?」
「へ? 杖にですか。わ、分かりました。光魔法〖耀の盾〗。で、出来ました! シロナさん」
「私はギエナだ。ソフィア嬢。では、それを私達の後ろにおもいっきり振り下ろしてくれたまえ」
「は、はい! 渡りました。全力で振り下ろす!!」
ソフィア嬢は、白色に発光した杖を誰も居ない筈の場所へと全力で振り下ろした。
「(ハハハ! これは儲けもんだねえ。こんな所で最後のノルマも達成出きるとはね。コクマーが来る前に)───1人を消せるんだからな……ごがぁ?!」
バチッ!!
「ごあぁぁぁ!! 何だこれは? 俺の身体に正義の力が侵食してきやがる!!」
その液状と化したドロドロの者は。突然、姿を現すと、ソフィア嬢だけを標的として襲いかかって来た。
だが、襲われる前に、ソフィア嬢は私が指示した光魔法を纏った杖を全力で振り下ろし、屍体の身体へと当たった。
「これは……グールですか? ギエナ殿」
「いや違うさ。シャーロット騎士。彼は屍体。炎も毒も切り傷も効かないほぼ無敵の者だ」
「屍体? あの霊国にしか生息しないという魔獣種が何故、神聖な王都ラビリンスに?」
「おぁぁ!!……くぞが形が変な形になっちまた。それにしてもこの王都か神聖ねぇ……それも1つの言い方だわな。くそ……嵌められたね。まさか聖魔法で俺、最大の弱点をついてくるとはさぁ」
「君はソフィア嬢を殺意を持って殺そうとした。ならばそれに全力で対応させるのは当然の事だと思わないかね? リリト君」
「思わねえわ。まだ自分の力にさえ自覚出来てねえんなら、それに気づく前に消すのが上作ってもんだろう?」
「そうか。ならば君はやはり君との決着はここで着けるべきと見た。木魔法発動【宿り木】、昇華スキル発動〖白銀林檎〗」
「……少年の気配が変わった。何かする気かい? ならやられる前にこっちも発動するぜえ。害毒魔法発動【瘴気の猛毒】EXスキル発動【臨海蠱毒】────宙にはは瘴気の毒に。地面は蠱毒の沼に沈みな。ティファレトとその守り手共!」
教会の周りの地面の下は黒紫の毒の沼へと変化していき、空気中には白髪騒男君が吐いていた時のものよりも遥かに強力とみられる毒素が漂い始めた。
「……ケホッ! これ…」
「キュ……」
「身体が痺れ……」
「皆、刷ってはいけない! くっ! 魔法とスキル練度で遅れを取ってしまった。スキル発動【痕邸】LV4。シルよ。中にエルフの少年が居る。その子に解毒薬と回復薬の部屋へと案内してくれる様に頼みたまえよ」
「キュ……キュイ!」
「ああ、ソフィア嬢とシャーロット騎士は君に任せた。2人共、ここは私に任せて回復していてくれたまえ」
「ギエナ殿……すみません」
「……もう。意識が保てませ……」
ズズズ……
「へー、やるね。少年、その若さで空間系統スキルを持っているなんてな」
「そんな事はどうでも良いさ。君はその猛毒で一国の中枢首都を滅ぼす気なのかね?」
「あん? そうだな。あれが来るまで時間がある様だし、そろそろ逃げる時間にもなりつつある……なら半壊半死人って所で被害を与えてから、このセフィラにさいならするのもありかもな! おい!」
「そうはさせないさ。行け、銀の【宿り木】よ。そして、深緑魔法発動【花蜜の誘惑】、スキル発動【銀針】」
私は昇華スキル発動〖白銀林檎〗で造り出した白銀林檎の上に乗ると、白銀の宿り木、花弁、針を同時に操りリリトへとぶつける。
「白銀の棘って所かそれを俺に放ってどうしようってんだ……」
「こうするのさ。EXスキル発動【白銀狼貪】」
私は白髪騒男君を倒して新たに得た力を解き放った。




