No.61【祭典のレクイエム 銀灰色と死者】 Act4 銀狼の糧
「ほらほら! どうしたよう。デカ魚さん。毒魔法発動【腐敗の毒液】」
『ブオオ……オォォ!』
『だいぶ弱って来たな! 地下水路の主。しょうがねえよな。てめえが一番狙われやすい図体をしてんのが悪いんだからよう! 闇魔法発動【銀闇の刺針】』
ハハハ。戦う相手がどっちもマヌケで助かったぜ。
このまま俺と腐敗野郎が地下水路の主に攻撃し続ければ、主の奴は弱りきりぶっ倒れる。
そして、俺は主がぶっ倒れたと同時に止めを刺して、更なる上位種へと進化する。
俺の予想が正しければあの地下水路の主は上位の特種個体だ。
そんな高レベルの経験値を持った奴がわざわざ、水場の無い地上に現れるとは驚いたがな。
コイツを利用しないてはねえだろうよ。何せ俺も主と同じ特種個体。
奴を糧に強くなる。そして、次は腐敗野郎を始末してトンズラだな。
こんな大騒ぎを起こしたんだ。そろそろ。奴が来る……来るがだ。まだ確かめる事が1つ残っている。
話し方が気にくわなねえ。銀林檎や地下水路の主を裏で操る奴の正体を突き止める事だ。
───俺は銀狼の特種個体だ。俺の嗅覚は尋常ない程効く。
『……やはり匂いやがるな。花の匂いか。はたまたホドの監視かは知らねえが、こそこそと裏で動くつもりなら。上位種となった俺が容赦なく…何だ? 地下水路の主が口から出した麻痺虫か? 悪いが俺には毒や麻痺は効かねえぞ。虫共。スキル発動【銀針】』
「ギギ……ギ」「ギギ!」「ギ……」
俺の体毛の中に潜み、身体中に麻痺針を刺していた虫共を自身の銀毛針で刺し殺していく。
『アルゼル、銀林檎、麻痺虫、テメエ等は俺との力の差をいい加減分かれよな。地下水路の主は戦う場が変わればまた話は違うが。テメエ等と俺とじゃあ、格が違うんだよ。格が! 弱い奴はどこまで行っても強者の餌にしかなれねんだ! 餌は餌らしく強者の進化の為にその身を捧げておけば良いんだよ!』
『ブォォォ……』
「もう少しで死ぬな。デカ魚さんよぉ。それと何だい? 熱く語っちゃってさ。何か楽しい事でもあったのかい? ダンナ」
『ククク……ああ、それは今から起こるぜえ。そして、これでテメエとも少しはマシに戦える様になるぜ。闇魔法発動【銀狼針の射手】』
「ん?……おい! 待て。まさかダンナ。アンタ、特種個体か?」
『気づくのが少し遅かったな。腐敗野郎。そこの魚の莫大な経験値は、俺が有効活用して…』
EXスキル発動……【臨淵羨魚】───【溶解】
水魔法発動……【水の泡】
〈溶けて泡となり弾けろ。巨大主鰻〉
『ブオォ──オオオオ!』
瀕死のフリをさせていた巨大主鰻は大口を開けて咆哮を上げ始めた。
そして、その瞬間。巨大主鰻の身体は溶け始め泡を作り出していく。
「何だい? この匂いは…酒かい? つうか視界が大量の泡で前すら見えねえや」
『…………嘘だろう。この匂いは新緑の樹海の高級素材を使った自然酒。俺が求めていた匂いそのものじゃねえか』
〈ああ、冥土の土産に持って行きたまえよ。白髪騒男君〉
『テメエは銀林檎。また出てきやがったか。大人しく隠れてれば、テメエなんて雑魚見逃したんだがな。話は変わった! テメエを操っている奴に今すぐ会わせろ!』
〈私を操っている者だと?〉
『そうだ。テメエの主人に自然酒を持って来る様に伝えろ。そうすれば。今回の件、アルゼルの件ですら許してやる。酒だ! 俺に自然酒を納めやがれ!』
それさえあればこの国なんて要はねえ。上位種になれる進化だってどうでも良い。
この周囲に漂う最高品質の自然種を手に入れれば拝謁出来る。妖精のあのおか──
「ギチギチ……」「ギギギ…」「ジュルル!」
『ゴホッ……何だ? 俺の口から虫が出てきただと?』
「それは巨大主鰻の体内に生息していた虫。白髪騒男君」
『がぁぁ?!…地下水路の主に生息していた虫だと?』
〈ああ、君が最初の戦いで放った銀針を、巨大主鰻に吸わせ吐かせた時に、あの銀針仕込んでおいたのさ。大量のちいさな虫達を。そして、巨大主鰻が消滅すると同時に動き始める様にしておいた〉
しておいただと? 俺の体内に蠢き回ってるコイツ等をか?
〈そして、君が弱いと言って簡単に殺した、麻痺虫の針には麻痺針ではなく自然酒の液を混ぜた強いアルコール性の酒針だ〉
『酒針だあ? そんな針聞いた事もねえ……あ?……何だ? 体内の虫共が急激に暴れだしやがあぁぁぁ!!』
激痛が体内中を走り回る。血中にも、体毛にも、脳内にも、ありとあらゆる俺の身体中に虫共が押し寄せてくる。
『テメエの仕業かあぁ! 銀林檎!』
「度数の強いアルコールは菌を殺すのに適しているのさ。それが体内に仕込まれた寄生虫だろうとね……お別れだ。白髪騒男君。今後のアルゼル少年の面倒は私に任せて逝きたまえよ。安らかにね」
『ゴオォォ……オエェェ!!』
「ギギギ……」「ギチ……」「ジュル……」
大量の瀕死の虫の死骸が俺の口から這い出される。体内にある死骸も毒素を放ち始め、更に俺の死を早めていく。
『くそがあぁぁ!! こんな惨めな死に方があるか! 俺は銀狼の選ばれた特種個体だぞ! こんな最後であってたまるか……オェェ……』
「ビギィ!!」「ギリリ!」
最後に小さく口から吐き出した虫は、俺が簡単に殺した麻痺虫の子供だった───
◇
〖特種個体・銀狼の撃破に成功しました。続いてスキル【吸収】で銀狼の死体を吸収します〗
スキル強制発動……【吸収】
〖成功しました。また幻草種・白金林檎のLVが10に達しました。これにより幻草種・白金林檎は幻樹種・輝金種子LV1へと強制瞬間進化を行いますがよろしいですか?〗
緊急時だ。よろしく頼むよ。
〖了解しました。ギエナ・セフィロを幻草種・白金林檎から幻樹種・輝金種子LV1へと進化させます……尚、この過程により。進化消費コストとして、貴方のスキル【智慧】を消費します。その為、今後は【智慧】スキルはしよう出来なくなります〗
何? 何故だ? 何故、【智慧】だけが消費コストに……
〈了解した。オリジンの為、私はここで糧になろう〉
君は【智慧】の…私のコピー? いつの間にここに?
〈もうすぐシルヴァーフェアリーも来るぞ。それと君の質問に答えようか。次の進化に必要な事なのだ。オリジン〉
次の進化に? それはどういう事かね? 【智慧】よ。
〈次の進化先に耐える為の人格の補強をするんだ。オリジンよ〉
人格の補強?
〈ああ。君は少し脆いところがあるからな。それを私で補うのさ。この世界で産まれ、この世界の人々を見た私でな……それが今後の君の糧になる〉
私の糧……
〈そうだ。ではな。オリジンの私……短い間であったが楽しかったぞ。君の善の成長を知れてな。去らばだ〉
待ちたまえよ。【智慧】よ。そんな唐突な別れ、私は許さな……
〖……幻樹種・輝金種子レベル1への進化に成功しました。各種ステータス上昇、各特種スキルレベルが1上がりました。また銀狼の悪性以外の全能力を解析中………成功しました。【銀針】、【暗器】各スキル及び、称号【闇の欠片】【白銀の討伐者】を獲得しました。そして、現在保有する全てのEXスキルの真なる発動が可能になりました〗
〈ああ、迅速な対応に感謝する。世界観測…………【智慧】よ。君が授けてくれた新たな力を持って、この戦いに勝つと約束しよう〉
EXスキル発動……【幻草】
◇
「視界は見えて来たけどな。ダンナの姿が消えたな。そんで? 新たに現れたアンタは何者なんだい? 少年君」
「ああ、私かい? ギエナ・セフィロ───1度目の人生で世界最悪の大罪人となった悪い者だよ。揺動のリリト君……君を葬る者さ」
◇◇◇
ギエナ・セフィロ
幻樹種・輝金種子LV1
称号【緑蛇神の眼】【水路の権力者】
権能【三種の無】【緑の初典】
各スキル、魔法構成中
───EXスキル【幻草】により1度目の人生に擬態中
◇◇◇




