No.60【祭典のレクイエム 銀灰色と死者】 Act3 三つ巴の殺し合い
『ブオオオオ!!』
『うるせぇ、傀儡だな。(地下水路ならいざ知らず。水路もねえ。こんな巨大魚は後回し、あの銀果実だ。今は、あの【揺動】野郎を始末しねえと、何も出来やしねえ)……闇魔法発動【銀針の鎖】』
「へー、随分とやる気だねえ。白銀浪は直ぐ逃げるって言うのが闇の世界の常識じゃなかったかい? ダンナ……毒魔法発動【毒の長剣】」
白髪騒男君の方は銀毛針を編み込んだ鎖を魔法で作り出し、自身の口へと加えた。
そして、腐敗青年は、何だあれは? 紫色の長剣を作り出し、両手に構えた? 私がいつも使う【蠱毒】のユニークスキルと、何が違うのだろうか?
いや、観察している場合ではないな。私も巨大主鰻を操りつつ、行動を開始しなければ。
水魔法発動……【水の泡】
〈権能【緑の初典】──廻覧〉
EXスキル【幻草】発動……【麻痺虫】×100匹
『ブオオオオ!!』
『何だ? 口から水泡を出しただと? 何を考えてやがる? どこに居るかも分からねえ、魔物使い野郎は? スキル発動【銀舞】』
「その中に虫が入って攻撃かい? ハハハ。この国の生き物は変わった戦い方をするんだね。スキル発動【毒切】」
「キャアア!」「に、逃げろ! 化物共の戦いだぁ!」「剣聖様が留守の時に何故、こんな事に……」「皆、避難してぇ!」
王都の住民達は四方八方へと逃げ惑い、私達こ周辺には人々の姿が消えていく。
『ブオオオオ!!』
「はっ! 人が逃げ惑い怖がる様は絶景だな。おいッ!」
「ハハハ。ダンナ、アンタのそこには…同意させてもらいますよ。よっと!」
スパンッ!
「ギャアアア!」
腐敗青年はそう告げると。彼の近くを通りかかった者を、何の躊躇い無く切りつけた。
『何だ? てめえもこっち側か? 案外。気が合いそうだな』
「だねえ……ただ、所属する組織は合わないと思うけどね。毒魔法発動【毒の弓矢】」
『それは激しく同意してやるぜ。腐れ野郎。闇魔法発動【銀の結鎖】』
……私も一度目の人生では悪人だったと自負しているが。彼等もかなりの悪意ある人間の様だ。
木魔法発動……【宿り木】
◇
ドゴオオオンン!!
「ソフィア様。ここは危険です。お逃げ下さい!」
「で、でも。シルちゃんがまだ見つかっていません。どこにも。どこにも居ないんです」
「ええ、分かっています。数日前からあれ程探してやってるのに、あの肥満兎は王都中を逃げ回り、その先々で大量の排出物を水路へと流し回っていますからね。ええい、あの忌々《いまいま》しい肥満兎めぇ! ソフィア様にまで心配させるなど…」
「シャ、シャーロットさん?」
「はっ! 失礼しました。ソフィア様、先程。ライオネル・リチナ教会での儀式を終えて、帰って来たばかりだというのに。王都がこんな事になっているなんて思ってもいませんでした。申し訳ありません」
「シャーロットさんが謝る事じゃないです。それに教会の儀式が終われば、サイレントさんも戻って来てくれますから。なんとかなります……本当はヘルナ《ギエナ》さんが自由に動ければ。こんな事、起こらなかったのに」
「はい。そして、あの肥満兎が王都中を駆け回らなければ。今頃、騎士団が王都中に配置される事はなかったでしょう?……ん? その騎士団が既に配置されていたから、いきなり戦いが始まっても直ぐに避難誘導できたのか? もしや、あの肥満兎は──いや、あり得ない。幾らあの肥満兎が特種個体だろうと……」
「キュイ!」
「シ、シルちゃんが突然、現れました?! シャーロットさん」
「何ですと? 肥満兎。貴様、よくもこの数日。私のお金で好き勝手に屋台の食事を食い荒らしてくれたな! 捕まえてその毛皮をひん剥いてやる!」
そして、シルヴァー・フェリーの胃袋の中にはオリジンのコピーたる、【智慧】の私も居る。まぁ、あの修道女には聴こえていないだろうがな。
「だ、駄目ですよ! シルちゃんは私のお友達ですし、このセフィラ王国では幸運兎は聖獣扱いなので、酷い事はしちゃいけません」
「キュキュイ! キュイイ!!」
「ぐぎぎ! この肥満兎。危害を加えられなと分かると、私を煽りおってえぇ!」
「キュキュイ!!」
「ごめんなさいって言ってるみたいですよ。シャーロットさん」
「……心ではほくそ笑んでそうですがね。まぁ、良い。それよりも肥満兎。私の財布を返え…」
「キュキュイ!」
シルヴァー・フェリーは、肉段重なる腹部から何も入っていない袋を騎士長の前に放り出した。
ポフッ!
「キュイ!」
「……それは私の財布の袋ではないか」
「……何も入ってませんね。銅貨すらありません」
「こ、この肥満兎があああぁ!」
「キュイイキュイイイイ!」
「ごめんねって言ってますね。シャーロットさん」
オリジンが地上に戻って来たのだな。頼まれていた全ての仕込みは既に終えてある。後は、私《智慧》、自身の役目を果たさねばな。
◇
《王都ラビリンス ラテルの廃墟地》
『ブオオオオ!!』
巨大主鰻の口から、大量の水泡を放ち続け、周囲一帯を泡だらけにし、白髪騒男と腐敗青年の視界を奪っていく。
「おいおい。こっちに今度は攻撃してくるのかよ。デカ魚は。毒魔法発動【毒の檻】、スキル発動【汚染】」
『その泡に隠れて、【麻痺虫】を仕込みやがる……(俺との戦いで疲弊してるんじゃねえのか? それにあんな小っちぇえ虫で俺達、相手に立ち回れるわけねぇぞ)……スキル発動【狼影】』
この2人。私が出現させた巨大主鰻を先に消そうと、攻撃を集中し始めたか。
腐敗青年が紫色の檻を作り出し、白髪騒男は自身の銀毛で狼の形をした物体を作り、突撃させて来た。
〈私の事など眼中に無く、やはり傀儡である巨大主鰻に集中砲火してくれたか。ならば君はここで消させてもらおうか。白髪騒男君〉




