No.57 最後の路地で彼等は出逢う
アレゼル少年がアンテラリエ闇市を案内してくれた事で、アレゼル少年の知り合いを紹介してくれた。
今後、この世界で生きていく為に必要な物。本、武器、魔道具等も大量に買う様に指示され、言われた通りに買ってしまった。
そのせいか大量にあった金貨も半分程に減ってしまった。
……今更。冷静に考えたのだが、本はともかく大量の武器や魔道具は買う必要があったのだろうか?
まあ、良いか。無くなったのならば、また稼げばいい。一度目の人生の時も、毎日の様に金銭に苦労していた。
そして、その都度。私の世話約だったメイドにどつかれお仕置きされたものだ。懐かしい思い出だ。
しかし、アレゼル少年は得たいの知れない私の面倒を、本当に良くみてくれるものだ。
彼がどんな異質な人物であろうと。頂いた恩には、それなりのお返しをしなくてはならないな。
そうだ。彼が何か困った事に遭遇した時は、彼の力になるとしよう。それがどんな事であってもだ───
◇
アレゼル少年のフードの中でそんな事を考えながら過ごしていると。突然、アレゼル少年が立ち止まり私に念話で話しかけて来た。
(やっと見えて来た……ギエナさん。あそこがアンテラリエ闇市の出口。ラテルの扉だよ)
アレゼル少年はそう告げると、とある裏路地の奥にある鉄格子扉を指した。
(ラテルの扉? はて? 私には何の変哲もない鉄格子にしか見えないがね)
(そうだね。このアンテラリエ闇市に初めて来た人は、まだ眼が慣れてないから見えないよね)
(見えないとはどういう事かね? アレゼル少年。それは王都内の結界と関係しているのかね?)
(うん。そんな感じかな……それで、あの扉は王都ラビリンスとアンテラリエ闇市を繋ぐ唯一の入口だから。今度、1人で来る様な事があったらあそこから入って来てね。地下水路の入口は多分、場所が入れ変わって使えなくなってるからさ)
(成る程。了解した、覚えておくとしよう)
(うん……それじゃあ、戻ろうか。聖煌国家〖セフィラ〗の中にね)
アレゼル少年はそう言って、鉄格子扉──ラテルの扉に向かって歩き始めた。
薄暗い、最後に通る路地裏の道を。そして……
「御客さん……そこの高貴なる御客。どうだい? 1つ未来の占いは如何かね」
その人物は突然、現れた。路地裏の隅にはさっき程まではなかった台と水晶がいつの間にか置いてあり、占い用の台の用な物が設置されている。
そして、その近くには小汚ないフードで顔を覆った人物が椅子に座っていた。
その人物の声は枯れており、老人とも老婆にも見える背格好だった。
「こ、高貴なる御客って……もしかしてボクの事?」
「……未来の占いは如何かね? 高貴なる御客。今日はアンテラリエ闇市の経済を回してくれたお礼に、特別にただで占ってやるよ」
その胡散臭い占い師は、アレゼル少年の質問に答えなかった。
(どうしよう……ギエナさん。変な人に絡まれちゃったけど)
(フム。こういう類いの者の礼には素直に従った方が良い、アレゼル少年。反感をかい。呪いでもかけられたら厄介なのでね)
(呪い? 良く分からないけど。ギエナさんの言う通りにするね)
「あ、ありがとうございます……じゃあ、お願いしようかな」
「……ふむ。承った───」
占い師はアレゼル少年の顔と私が隠れ潜んでいるフードを一瞬見ると。水晶へと手をかざし始めた。
「アハタナブア……ふむ。これはかなり難儀な……」
「あ、あの何か分かりましたか?」
「──暑さと湖にお気をつけられよ」
「暑さと湖……ですか?」
「さよう。特に前者は特に危険と出た。長い日数危険になる」
(長い日数危険?)
「あの……それはどうやって回避すれば良いか分かりますか?」
「遠くへ逃げれば新しい道は幾つか出来るが、それをすれば。足踏みは止まりそこまでの人生と出ている」
「はぁ……そうなんですか」
「だが、新たな出会いと楽しみも幾つかある…獣の子、聖なる子に新たな本当の人生とな……では伝えた。後は、高貴なる御客次第の選択で決まる事を夢夢忘れぬよう───」
「あのそれってどういう事…てっ、あれ? 占い師さんが居なくなちゃった?」
(……ああ、一瞬で透明化し消えて行ったのを見ていた。暑さと湖。いったい何の事なのか全く検討もつかないが。今はあのラテルの扉を急いで潜ってしまおう。アレゼル少年、ここに長いすれば何か不味い事が起こりそうな気がするのでね)
「う、うん。分かった……急いで王都に戻ろう。ギエナさん」
アレゼル少年も私が何かに気づいた事を察し、慌て始めたのか、小走りでラテルの扉へと歩き始めた。
「あそこを潜れば王都の大通りに出れるから、襲われる事はないと思うよ。ギエナさん」
(そうか。それならば安心して、ソフィア嬢達と合流して──)
「アレゼル…」
私がさそう言い終えようとした時であった。不意に通って来た後ろの路地裏から、男の低い声が聴こえて来た。
「その声は……まさか!」
白髪の男が通路の真ん中に立っていた。その表情は怒りに満ちており。
血管の筋が浮き上がり、眼の瞳孔は開き切っていた。
「金の匂いだ──大量の金貨の匂い。お前。やってくれたな。俺が手に入れる筈だっった自然酒を闇市で売って大金を手にしやがったな。エルフ野郎」
「フェリックスさん……違うよ。自然酒はまだ騎士団所に……」
「闇市から王都にそそくさと逃げようとしてる奴の言い訳なんか聞く気になるかよ。自然酒さえ、入手して俺の所に持ってくれば、イヴァイロの馬鹿を殺した事は許してやろうと思ってたのによう。裏切りやがって……許さねえ……絶対に許さねぞおぉ! アレゼル・ハインセブルク!」
【幽々《ゆうゆう》たる暗殺者 首領 フェリックス・シルリングス】




