No. 42 進化は果たせど、更なる変化を
〖消費ポイント500を消費し……【空間系統魔法】LV-10を獲得しました。この魔法は空間魔法及び転移魔法を使用可能になります。ですが現在の貴方のステータスでは空間魔法は使用できず転移魔法も使えません。よって転移魔法の初級技である空魔法しか使用できません。ですが今後の貴方の成長によりLVが徐々に上昇すれば、空間魔法や転移魔法の使用範囲が拡大します……正直、使える段階までに時間がかかる為、スキルポイントを使用して選ぶ方は皆無になります〗
……その転移魔法の初級技の効果はどのくらい何だね? 私は気分が沈み始めた心を何とか保ちながら、世界観測に質問した。
〖……貴方が得た空魔法の効果範囲は……半径1メートルの中を転移できる魔法になります……ですが長い年月をかけ、《空間系統魔法》を育てれば《・・・・》かなり有益な魔法です〗
……その育てるのにどれだけの年月が必要なのかね?
〖………恐らく数百年単位はかかり……え? これ以上は時間切れ?……はい。だいたいの伝えるべき情報は伝えましたけど……え? 退勤時間? 先輩そんな! ちょっと待って!……以上で進化の説明は終わ…〗ブツンッ!
退勤時間? 何だね。それは……世界観測との繋がりが切れたか。
───聴くよりも使って見た方が早いか。
空魔法発動……【籠の鳥】
ズズズ……バシャーンッ!!
おお、一瞬だけ空間が歪み直ぐ側に移動し水路の中へと落ちた。
〈…………これが私が渇望した転移魔法。いや空間魔法なのか? 全然、移動出来ていない。世界観測が言っていた1メートル程しか……そして、水路に落ちてしまったが。私は浮いているし、曼陀羅華状態でもないのに言葉を発声している?……言霊というものか? 姿はどうなっている?〉
私は水面に映る自らの新しい姿を確認した。
━━━左半分が緑色、右半分が青色の蕾だった。草霊の時の様に精霊体化は継続している。葉《手》は円乗に広がり、私《蕾》の身体を浮かせる役割を担っているのだろう。そして、根《足》の部位は幾重にも伸びていた。
〈ほう。蕾に進化するとは……何とも面白い姿だな。そして、今までと違い。精霊体化状態でも物に触れたり、水面に浮かぶ事が可能とは幻草種・蓮蕾睡蓮か……本来ならば蓮蕾と睡蓮の別種の進化先だったのだろか? 名前が合体しやたらと長い種族名になってしまったな。他にも何か変化していないか後で確認してみるか……〉
大量のスキルポイントを犠牲に《空間系統魔法》を手に入れ、その性能に絶望したが。進化した蓮蕾睡蓮の姿を見て心を持ち直した。
〈おっと。私が進化した事をナヘマやアレゼル少年に報告しなければな。スキル発動……【吸収】【収納】〉
私は【吸収】と【吸収】のスキルを発動し、《 吸収装飾館 》から二人を外へと呼び出した。
ズズズ……
「流石、《新緑の樹海》の蜜葉ね。お茶に使うと美味しわ……ゴボボ……」バシャーンッ!
「うん……香りからして違うね……ゴボボ……」バシャーンッ!
……おっとしまった。私は今、水面にいるのだったな。ならば《吸収装飾館 》から呼び出したならば水面に落ちる可能性があるわけだ。
そして、ナヘマとアレゼル少年は水路の下へと沈んで行く。不味い助けてやられねば。
私は急いで自身の根《足》を水面の下へと伸ばし、沈んで行く二人の身体に巻き付かせ助け出した。
フム、以前よりも身体の自由が効くのは助かるな。今後の戦闘も少しは素早く動ける様になるだうか。
◇
「……ゲホッ…ゲホゲホッ……死ぬかと思ったわよ」
「ガハッ!……ケホケホ……ここは水路?……もう着いてたの? 主が近くに居なくて良かった……」
〈おお。二人共。無事だったかね? 呼び出したかと思えば突然、水路の底へと沈んで行ったので驚い……ムガ?〉
ナヘマは私の蕾《頭》を手で掴むと宙へと持ち上げた。
〈ナヘマよ。何をする?〉
「……何をする? じゃないわよ。アホ 草。アーレとゆっくりお茶を飲んでたのに、何でいきなり水の中に沈まされないといけないのよ? 枯らすわよ」
「うん……びっくりして死んじゃうかと思っちゃたよ。でも助けてくれてありがとう。ギエナさん」
〈そ、それは悪い事をしてしまった。だがわざとではないのだ。だから私の蕾《頭》を握るのは止めたまえ。ナヘマよ。そして、何故、君は精霊体化した私を掴めるんだ?〉
「そりゃあ。半眷属化してるからに決まってるでしょう。それよりも蕾《頭》を持つなって……アンタ。進化してるじゃない? 何で言わないのよ」
〈……君が私の蕾《頭》を手で握っているからだろう〉
「はいはい。今、離すわよ……で? どんな姿になったの? 共有ステータスオープン……」
〈共有ステータスだと? そんなシステムがステータス画面にはあるのかね?〉
「当たり前じゃない。眷属契約をしていれば表側のステータスを共有できるの……よ。何これ? 蓮蕾睡蓮? 何で別種の進化系統が合体してるわけ?」
「……そんな特殊個体名、初めて聞くね」
〈ん? 何か可笑しいのかね? それは世界観測が勝手に間違えた結果なのだよ〉
「世界観測?……あー、やたらと私に厳しいあの《声》ね。うわー、本来、木属性の進化系統に水属性を無理矢理交ぜたの?……しかも進化の方は普通に上手くいってるし。もしかして草。アンタ、さっき水路に浮いていたけど。水属性系の魔法かスキルを手に入れたりした?」
〈ん? ああ。【溶解】【水練】というスキルを新たに取得した〉
「そう……木属性系統の魔法、スキル、称号に何か変化あったりした?」
〈うむ。今まで得た全ての木属性関係の物はこの様に……権能【緑の初典】よ……〉
私が【権能】について考えた。すると目の前に緑色の本が出現した。
ポンッ!
〈おお、世界観測が言っていた様に一つに纏められているな。成る程、念じればこうして本として出現し、今までよりも早く木属性の魔法、スキル、称号が発動や効果を発揮するのだな〉
「ナヘマちゃん……あれって」
「……ええ。【権能】の書ね。それに水属性のスキルまで発生させるなんて。普通、二つ目の属性を得るには、自身が持つ魔法、スキル、称号全部を極めないといけないのよ。」
「だよね……なのにギエナさんは……」
「進化途中で2つ目の属性を手に入れたのね。羨ましい」
「で、でも……何でこの水路迷宮に着いた途端に進化したのかな? 普通。魔獣種の進化って凄い時間がかかるよね? ましてや希少な幻草種ともなったら」
「年単位でかかるわよね。普通……でも草は普通じゃないわよ……権能【三種の無】これがあるんだから」
ナヘマは一番下のステータス画面を見てそう告げた。
「【三種の無】?……それって何の権能なのかな? ギエナさん。知ってる?」
〈む? いや、それは世界観測が以前、変な問いを私にしてきた時に付与されたモノで私も詳しく知らないものだ〉
「……この【三種の無】はカルマ値が高い存在を倒した時に、得られる経験値を増やしてくれる効果があるの」
「〈カルマ値?〉」
「そうよ。簡単に説明すれば凶悪な存在や悪意ある存在を倒したら、それだけ強くなれるって事よ……【無神論】のあれ《・・》とは対象的な権能よ」
ナヘマはそう告げると私のステータスが映った画面を閉じたのだった。




