No.30 草霊の自然酒製作
今回のソフィア嬢による強制連行旅の行き先であるセフィラ王国へは、残り2日程で着く予定だと。シャーロット騎士から昨日の夜の夜営時聞かされた。
まだ何も知らぬ未知の国への期待と希望に満ちている最中に事件は起きた。
今回で3回目となるセフィラ王国騎士団の積み荷への襲撃。今回、騎士団の者達は皆、襲撃に警戒していたのか、シャーロット騎士の指揮の下で戦略的戦闘を行い、私の出番など殆ど無かったものだ。
しかし、襲撃者の数は一度目と二度目よりも遥かに多かった為か、戦闘終了後、草霊としてのレベルが1上がった。
これで次にレベルが上がれば新たな進化が可能となるだろう。
……しかし、最初は《ユグドラシルの聖女》と呼ばれるソフィア嬢を拐うか、殺害する為に刺客として盗賊や暗殺者を送り込んで来たのかと思っていたが……どうやら私の予想は外れていた様だ。
一度目の盗賊達の襲撃は騎士団の積み荷を奪おうとしていた。
二度目は、長耳少年の単独による襲撃。そして、最初にあの長耳少年がやろうとした事は、多分だがソフィア嬢を人質に取ろうとしていたのではないだろうか?
盗賊スキルを派手に使ったのは、私達の目を彼に釘付けにする為のフェイク。本当の狙いは騎士団の積み荷だったのかもしれない。
そして、三度目の襲撃はーーーまたしても積み荷。
三度目の襲撃を撃退した騎士団の者達を尻目に、私は眷属のシルを静かに連れ、セフィラ王国騎士団の積み荷の馬車の中へと向かった。
「盗賊達を無力化したぞ!」
「「「「オオオオオオ!!」」」」
「オオオオ!! てッ! ヘルナさん! シルちゃん! どこですかー?……返事が無い。また勝手にどこかに出掛けたんですか? この旅の数日間。毎日、居なくなってる気がします。特にヘルナさんはっ! もう!」
少し離れた場所でソフィア嬢が私達を探して叫んでいるのが聴こえてきた。
「……キュ、キュイ!」
〈何? ソフィア嬢が心配してるから、そろそろ戻ろうよだと?〉
「キュイ!キュイ!」
〈いや、少し待ちたまえよ。シルよ。私の好奇心が収まるのを少し待て。馬車の中の積み荷を確認したら直ぐに戻るとするさ〉
「キュイ……」
〈何? お菓子じゃないから興味ないだと? シル。お前は野生の魔獣だった筈。何故、そんなお前がお菓子の味など知っている……さてはソフィア嬢が与えているのだな? だから一週間前よりも少しふっくらしているのか〉
「キュイキュイ」
〈私と違って、ソフィア嬢は優しいだと? 何を馬鹿な事を言っている。私はお前に対して確かな試練と愛情をだな……これは?〉
「キュイイ?」
〈ん? 何か分かったの? だと?…ああ、匂いでな。これはあれだ……《自然酒》と言うヤツだな〉
私はそう告げると、静かに積み荷の馬車から下り。ソフィア嬢の元へと戻って行き、その日の夜は大人しく深い眠りに着いた。
そして、ふと今日の朝、ナヘマから教えられた職業や職業スキルについて少し考えていた。
まずは職業というものは、ギルド、教会、商会等に在籍した者に天から与えられるモノだそうだ。年齢、身体の強弱、知恵等にも与えられる職業が左右されるとの事だ。
また、職業スキルはその職業の熟練度、適性、才能によって、使える職業スキルの量や質も変わる。
職業スキルの恩恵が最も受けられるのが、人型の種族だそうだ。
これにはちゃんとした理由があるらしく。人型の種族は魔獣種や植物種と違い。種族言語、種族歴史、種族事の特有知識、等の歴史が長く蓄積されている為、職業スキルが得られやすいのだとか。
そして、職業スキルを極限まで極めた者は、更に高位の職業、ユニークスキル、魔法、称号を取得出来るとの事なのだ。
それをナヘマから聞いた私は大いに喜び震えた。それは私に新たな可能性や強さを手に入れられる力ではないかと! そして、私にはどんな職業が、一番合うだろうかとナヘマに聞いた瞬間に言われた一言がこうだ。
「……アンタ。植物種の魔獣のカテゴリーなんだから、職業なんて持てるわけないじゃない。職業も持てないだから、職業スキルなんて手に入んないわよ」
などとナヘマに言われ、私は絶望した。
《ナヘマ敗北後、8日目》
ナヘマから聞かされた真実により、私の心は少し沈んでいた。
そんな折り、セフィラ王国騎士団の積み荷の中のある物に興味を引かれ。現実逃避の為にも、それを造ってみようと考えたのである。
《 矯正の部屋 》
「……ねえ。草、臭いんだけど? 外は今、朝よね? 何してんのよ? 私の部屋で!」
ナヘマが朝から五月蝿い。今は集中しているのだ。話かけないでほしいものだな。
〈黙りたまえよ。最強種の底辺よ。そして、ここは私の部屋だ。お前の物ではない〉
「昨日、職業スキルの説明で自分が使えないのが分かったからって、八つ当たりするじゃないわよ……数百匹の蜜蟻に蜜蜂、あっちは青実猿の群れ?……何でこんなに大量に入るわけ? 飼ってるわけ?」
〈誰が飼うか最強種の底辺よ。私は今、集中しているのだ。後にしたまえよ〉
「魔獣種族でも時たま、突然変異して職業と職業スキルを発現する奴等の話をしてあげようと思ったけど。止める事にするわね。アンタ。最低だからさ」
〈……何故、それを早く言わないのだ。ナヘマ嬢よ。おっと先ずは私が何を造っているのかを聞きたかったのだ。良いだろう〉
「コイツ…本当に性格最悪だわ」
ナヘマは侮蔑の表情で私を見ているが、そんな事などどうでも良い。今は魔獣種族の突然変異とやらの話を、ナヘマから聞き出さねばならない。
いや、先ずは私が何を造っているのかを説明してやらねばならぬか。
〈ナヘマよ。これは《自然酒》と言うものだ〉
「《自然酒》? 何よそれを」
〈これは蜂蜜酒を造っていてな。そして、青実猿達には、猿酒を造らせている。更にここに青龍舌蘭と言う特殊な葉とは醱酵虫の【発酵】と【腐敗】のスキルを使用すれば、短期間で疑似酒造を可能にしてしまうのだよ〉
「それをこの部屋でやるんじゃないわよ! この馬鹿 草!」
ナヘマはそう叫び、私の頭(草)の部位を踏みつけた。
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ギエナ・セフィロ
幻草種・草霊LV 9
スキル【吸収】【鑑定】LV3【収納】LV2【痕邸】
エクストラスキル【草神】【幻草】
魔法 木属性魔法【光合成】 深緑魔法【花蜜の誘惑】
称号【緑蛇神の眼】【樹海の覇者】【草の理】
権能【三種の無】
取得したスキル、称号は新たなEXスキル取得の為に消費中
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