No.28 草霊の御部屋へようこそ
スキル発動……【痕邸】
「シャーロット騎士長。先程、襲撃して来たエルフの少年や暗殺者達が忽然と姿を消しました」
「全員姿を消した?……そんな馬鹿な。エルフの子が逃げた事は、目の前で見ていたので分かりますが。森の中にいた暗殺者も居なくなるなんてあり得ない」
「突然、居なくなる? まさか! ヘルナさん。もしかして、また何かされましたか……あれ? どこかに行っちゃった?」
◇
草霊に退化した数日後に気づいた事があった。
それは私が使えるスキルが一つ増えていたのだ。それがスキル【痕邸】だ。
このスキルの事を以前、世界観測に聴いた所━━━
〖幻草種・草霊に退化した際に得たスキル贈呈です〗
スキル贈呈? 退化時にもスキルを得られるのか? そんな事があるのか?
〖ごく稀にあります。アンタ……バチンッ! 痛っ! せ、先ぱ…はい。言葉使いには気をつけます……し、失礼しました。子兎の時はマイナススキルとしてスキル贈呈を受けましたが、貴方の場合は〖唯物のナヘマ〗戦での莫大な経験値の消費の為のスキル贈呈だと思います〗
ほう。それがこの【痕邸】というスキルというわけか。それで? このスキルはどんな効果があるのだ? 世界観測。
〖異空間に……【吸収】と【収納】の部屋。《 吸収装飾館 》の御部屋へと出入りする事が出来ます〗
《 吸収装飾館 》? なんだそれは?
世界観測とそんなやり取りをしたのが数日前。そして、スキル【痕邸】を発動し、私は、初の吸収装飾館入りを果たした。
◇
《 吸収装飾館 》
ズズズ……シュン!
無事に入れたか…初めて入ったな。此処は部屋全体が白い場所だ。扉が3つ程あるな。一つ一つ開けて中を確認してみるか。先ずは一番近い部屋から開けてみるか。
ガコン……キイィ……
《 矯正の部屋 》
「あ…あ…あ……も、もう改心するわ……だかもう矯正は止めて……壊れちゃうわ……何なのよ。この蔦は私の身体の毒素や悪意を和らげて……何で安らぎなんて与えるのよ……このままだと私、心と身体が変えられちゃうじゃない……」
〖無駄。貴女の身体はあらゆる状態異常と不幸体質になっている為、それが克服されるまでは解放できない。このスキル【智慧】が矯正と調教を担っている間は目を離さない〗
「ふ、ふざけんじゃないわよ……返しなさいよ。私の【唯物】の権能を……」
〖拒否する。これは《 吸収装飾館 》の美術館に飾り、鑑賞物とする〗
「意味分からない事、言ってんじゃないわよ! くそッ! このままじゃ……私が私じゃなくなる……心が浄化されるじゃない」
数日前に倒した筈のナヘマが裸体の姿で大量の蔦に絡まれていた。何やら何かと喋っている様だが……切断されていた左手も無事に付き回復している様でなによりだ。
「……この気配は?! そこの扉の前のアンタ! あのクソ草よね? 何でここに居るのよ? アンタのせいで私の心と身体は……【唯物】が剥がされちゃったじゃない」
〈ほう! そうか。それは良かったな。黒髪鎌娘よ。あんな不気味な権能というものか? 取れて良かったな〉
〖そして、これが【唯物】と無色の結晶だ〗
蔦を操る【智慧】が緑色と紫色の結晶と無色透明の結晶を私に差し出してきた。
〈……何だか一つは不気味な結晶物だな。さっき言っていた美術館に持って行ってくれ。そして、もう一つは……綺麗だな。何故か気に入った。それは【吸収】部屋に持って行ってくれ〉
〖了解。その後は引き続き、このナヘマの治療に当たるが良いか?〗
〈ああ、好きにしたまえよ。煮るなり焼くなり魔改造するなり、好きにしろ……ではな。黒髪鎌娘よ。お前が心改めれば、此処から出してやろう。精進しろ〉
「なっ? ま、待ちなさい! クソ草! 覚えてなさい……アアアアアアァァ!! また身体に?! 何すんのよおぉ!!」
キイィー……ガチャッ……
ナヘマの叫び声が聴こえた気がしたが、私は気にする事なく静かに扉を閉めた。
〖隣の美術館に案内する。こっちだ〗
蔦を操る【智慧】はそう告げるとナヘマの部屋の隣にあった扉を開けた。
ガチャッ……
《 緑美術館 》
……此処は《フラマ》世界での人生の時に私が造った《セフィロ美術館》に似ているな。とても小さいが。
「貴方が進化し、成長すれば此処も成長する。そして、この【唯物】はあそこに飾っておく」
【智慧】は黒い台座の上に【唯物】の結晶を丁寧に置いた。
〈……十の黒き台座か。それに対して反対側に違う色の台座。いや、今は盗賊スキルについて知る方が先か。【智慧】よ。私は別の部屋に行く。この部屋から出るぞ〉
「了解。こちらはあれの身体を癒しに戻る……五月蝿いが死なせるのは大変不味い為」
〈不味い? 何故だ。【智慧】…もう居ないだと? 全く。顔も合わせず去るとは、本当に愛想が無い者だな。隣の吸収の部屋に行くか〉
ギイィーーガコンッ!
《 吸収の部屋 》
「くっ! 身体が動かねえ!」
「……ここは何処だよ! 隣の奴息してねえぞ」
「アレゼルの奴。一人だけ逃げやがって! ふざけんな!」
「それよりも師にはどう連絡を入れる? このままではアレゼルだけが手柄を……」
扉を開けた途端、暗殺者達の五月蝿い声が聴こえて来た。
「み、見ろ! 扉が開いたぞ! あそこから脱出出来るんじゃないか?」
「……それより何だ? あの魔草は? 何でこんな白い空間に?」
ガヤガヤと五月蝿い者達だな。これは直接聴くよりもスキルを併用して、奴等を解析した方が早そうだな。元々はソフィア嬢や騎士達の命を狙ったのだ。因果応報だろう。
EXスキル【草神】発動……【溶解】【智慧】
スキル発動……【吸収】
《 吸収の部屋 》に阿鼻叫喚の声が響いた後、暗殺者達は居なくなった。そして、私は新たなスキルと称号を複数、取得した。
〖幻草種・草霊のLVが8に上がりました。新たにスキル【隠密】【暗殺】を獲得しました。また、称号【影に潜む者を】獲得しました 〗
世界観測の声が《 吸収の部屋 》に響き、私が少しずつ強くなり、次の進化へと近付いた事を伝えてくれた。
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ギエナ・セフィロ
幻草種・草霊LV 8
スキル【吸収】【鑑定】LV3【収納】LV2【痕邸】
エクストラスキル【草神】【幻草】
魔法 木属性魔法【光合成】 深緑魔法【花蜜の誘惑】
称号【緑蛇神の眼】【樹海の覇者】【草の理】
権能【三種の無】
取得したスキル、称号は新たなEXスキル取得の為に消費中
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