No.22 その草霊はスキルの代償を知る
〖【唯物】の撃破を確認しました。戦闘終了を確認、それにともない、特殊EXスキル【生生流転】は消滅しました。今回の戦闘で得た全ての鉱石、魔力結晶、魔獣素材はスキル【収納】に保管されました。〗
世界観測からの戦闘報告が聴こえてくる。どうやらあの戦闘中に起こした魔獣行進の時に回収した素材は、無事に回収できていた様だな。
〖先程までの戦闘時にスキル【吸収】で回収した《幻緑獣 グラスヴォルフ》《子兎を解放します〗
「グルル……」シュンッ!
「キュイッ!」シュンッ!
「シルちゃん。無事でだったんですね。良かった…それと…《 新緑の樹海・下界》の主……主のグラスヴォルフさんが何でこんな場所に入るんですか?……」
おお、お前達。無事で良かった……ん? ソフィア嬢。何を青ざめた顔をしているのだ?
「グロオオオオ!!!!」
……どうした? グラスヴォルフよ。何を興奮している?
〖曼陀羅華から木霊への退化、EXスキル【生生流転】の消滅に伴い、《幻緑獣 グラスヴォルフ》に対する支配権を失いました。逃走を推奨します〗
何? 希少な幻草種へと退化し、全ステータスが向上したのではなかったのか? 世界観測よ。
〖植物種の《種族特性》である【枝繋】が失われた為、上級種族への特別支配は不可能になりました。《幻緑獣 グラスヴォルフ》からの逃走を推奨します〗
……馬鹿な。幻草種への退化でデメリットが生まれるとは思いもしなかったぞ。
〖警告します。冠位階級 《幻緑獣 グラスヴォルフ》からの速やかな逃走を推奨します〗
世界観測が三度目の警告を私達に伝えてくる。
「グルル……」
《今回は特種な状況だった故に力を貸した……次に会う時は正規での制約で、拙を従わせてみせよ。ギエナ。去らばだ……》
「ルオオオオ!!!」
グラスヴォルフは咆哮を上げると共に空へと飛び立って行く。
「行っちゃいましたね。幻の冠位種がこんな場所に現れるなんて思いませんでした」
「キュキューイ! 」
……グラスヴォルフ。ああ、今度は対等の立場として、君と会おう。
〖そんな……あれだけ酷い扱いをされた幻緑獣 グラスヴォルフが、簡単に怒りを納めて去って行くなんてどうなっているのよ?……ポコッ! ……失礼しました。続いて先程、撃破した【唯物の死神 ナヘマ】 ですが《幻緑獣 グラスヴォルフ》同様に上位種族の為、現在の貴方の種族値レベルでは【吸収】スキルでの解析、能力付与は出来ません〗
何だと? それではあの黒髪鎌娘はまだ生きているという事か?
〖はい。【吸収】と【収納】空間内の奥底で仮死状態で保管されています。ですが称号【緑蛇神の眼】の効果対象の為、ナヘマの全て能力は無力化及び封印状態にあります〗
【緑蛇神の眼】の効果対象? あの黒髪鎌娘がか?……あの黒髪鎌娘は【唯物】と名乗っていた。【唯物】……物質主義か。
世界観測よ。ならばその無力化した黒髪鎌娘に対して、蘇生と矯正を行おう。EXスキル【草神】を発動し、彼女の能力を解析し、私への能力向上の糧に使用しよう。何れだけの時間がかかっても、どんな手を使っても構わん。よろしく頼む。
EX発動……【草神】
〖畏まりました。此方側の方法で【唯物の死神 ナヘマ】を解析、蘇生、調教、矯正を行います。では暫くのお暇を……失礼します〗シュン!
〖吸収と収納《緑蛇神ウィリディス・アングイス》の部屋〗
「くぅ…ここは何処よ? 私は確か、あの草霊の攻撃を受け……身体が指先一つ動かせない?」
『ほう……まさか、あの弱気者と出会ってから一月程しか経っていないというのに、【唯物】を倒したのか。あの雑草だった者がこの世界の上位種を凌駕するとは』
スキル【吸収】で収納空間へと送られたナヘマの前に、巨体な蛇が鎮座していた。
「……何よ? この緑色の巨大な蛇は……ていうか、ここは何処? 私はまだ戦え……」
〖ギエナ・セフィロがEXスキル【草神】を発動しました。これにより【智慧】【再生】【変化】等の複数のスキルを発動させ、【唯物の死神 ナヘマ】の解析及び矯正を開始します〗
『……何だ? 貴様、罪人か。ならばここで罪を支払い生まれ変わるのか。面白い』
「は? 何、意味分かんない事を言っているけ?!……何これ? 植物の蔓?……それに切断した筈の私の左手が元に戻ってるなんて……」
〖欠損状態では不具合が生じると【智慧】が判断しました。そして、これより貴女の全ての能力を解析、ギエナ・セフィロの力の糧となる様に矯正を始めます〗
「意味が分からないわよ。何、馬鹿な事を言って?!」
『口から体内へとあらゆる解毒を流したか。あの弱気者は無意識にこの娘を殺さずに救うのだな。フッ……今までにそんな者は存在しなかったのだがな。やはり、面白い存在よ。ギエナ・セフィロ……お前の進化の行く末、余が最後まで見届け。見守ってやろう』
「ふ、ふざけんじゃないわよっ! こんな……無理矢理の幸せの転換なんて認めない。私は悪側の……邪悪な木の一つ……なのに……何でこんな……幸福を……」
〖緑蛇神 ウィリディス・アングイス〗はそう告げると、【唯物の死神 ナヘマ】が正しく変化していく様を静かに見守りながら深い眠りに再びついたのだった。
◇◇◇
ナヘマ
種族・悪霊から天霊へと退化中
スキル 【幸臼】解析及び変化中
魔法 闇魔法 矯正中
称号 【変化の天霊】弱体化中
◇◇◇
………ナヘマ編 終了。




