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No.13 その薬草は唯一の戦利品に酔しれる


〖……ナヘマ様。半径50メートルの更地完了しました〗


「お疲れ、リリ。案外、呆気(あっけ)ないものね。でもこれで二人目。私のノルマは達成ね。犠牲はこの左手と、あの聖女の操っていた薬草(マンドゴラ)から受けた毒……マスターに治してもらわなくちゃ」


〖ナヘマ様が切断された左手は回収に向かいますか?〗


「いらないわ。あんな異常状態になった左手なんて、それにさっきの魔法で消し飛んでるもの。そのうち生えてくるし。帰えるわよ、マスターの元へ」


〖……了解しました〗


 そうして、突然現れた《深緑界(トネリコ)》の強者は去って行った。


……ボコッ!


「キュ…キュキュ…」

「プハァー、ここは……どこです? 私達。〖新緑の樹海〗にいた筈じゃ……木々がどこにも……」

「ギ…ギガ…ギギ……」


 やはり声は出せない様だな。しかし、何て事だ。私達の周辺一帯が更地と化してしまうとは、あの黒髪鎌娘。只者(ただもの)ではない様だな。


 黒髪鎌娘が空から魔法を放った瞬間。私は【吸収】スキルで地中深くの土を【吸収】し、空洞を開けた。そして、レアスキル【鱗粉】で穴螻蛄(ホールワーム)の擬態を出現させ、新しく手に入れた【脱兎】で空洞化させた地中へと避難し、難を逃れる事ができた。


「神聖な〖新緑の樹海〗がこんな状態になるなんて……信じられません」


 ソフィア嬢は動揺しているな。まぁ、無理も無い。それ程の圧倒的な強さを見せられたのだからな。

 

 フム、直接戦闘をして分かった事や、得た物が幾つかある。


 先ず始めにあの黒髪鎌娘に直接的に効いたスキルはユニークスキルの【蠱毒】までだった。


 最初、私はレアスキル【鱗粉】を使用し、黒髪鎌娘の大鎌の攻撃を受け止めたが、【鱗粉】は複合スキルだ。他にも【毒液】スキルも発動していたのだが黒髪鎌娘には一切効いていなかった。


 これも先日、【鑑定】スキルのLVアップに伴って開示された属性耐性とやらが関係しているのだろうか? 実に興味深いので、後で属性耐性について色々と検証してみよう。


 次に黒髪鎌娘に唯一効果があったユニークスキル【蠱毒(蠱毒)】だが、このユニークスキルはあらゆる虫達の毒や、液体等の状態異常スキルを統合したものだったが、まさか黒髪鎌娘が放った魔法を【蠱毒】で相殺し、それだけでなく左手に損傷を与える事が出来るとは思わなかった。


 ……そして、それだけではなく、何とも素晴らしい置き土産をして帰ってくれるとはな。


 スキル発動……【吸収】


ズズズ……シュンッ!…シューン……ポスッ!


「ひぃぃぃ! 何ですか? それ、もしかして人の腕ですか? ヘルナさん! 何てものを持ってらっしゃるんですか?」

「キュキュ! キュキュイィ!!」


 おっと危ない危ない、(あや)うく戦利品を落とす所だった。


 ソフィア嬢とシルが私が手で受け止めた物を見て、引きしている。 

 失礼な子達だ。全く、これは先程の絶望的な闘いでの、唯一の戦利品だというのに。この左手にどれ程の価値と情報があるか理解できないとわ。勉強不足だぞ。ソフィア嬢。


 私はそんな事を考えながら、黒髪鎌娘が切断して、捨てた左手を嬉しそうに眺めていると。この左手は、先程の闘いで黒髪鎌娘が大規模魔法を放つ前に、スキル【吸収】で回収しておいたものだ。


〖アンタの行動がヤバすぎてあの子達はドン引きしてるだけよ。アホ〗


 …何の様だ? 私から声を奪った重罪人よ。


〖アンタ。まだ、根に持ってるわけ?〗


 足が根だけにな。


〖……面白く無いわよ。てつ! はっ? まだ、喋って良い段階じゃないですか? でもコイツは……ゴチンッ!……失礼しました。現段階ではその左手は【吸収】スキルでのスキル解析、魔法解析、称号解析は不可能です。それに伴い、スキル、魔法、称号の取得は無効とされます〗


 成る程では、現在、今の私の強さの段階で再び、あの黒髪鎌娘と闘った場合の勝率はどれぐらいだろうか?


〖質問の意味が理解出来ません。それはあまりにも無謀な……〗


 良いから答えたまえよ。世界観測。


〖…アンタ…その圧は…失礼しました。現在の貴方の強さでの勝率は1%程度にも満たず。ほぼ0%に近い勝率です〗


 ほう今の状態でも1%も勝てる見込みがあるのか? 素晴らしい。ならば、この左手を【吸収】できる様に進化し、尚且つこの左手を【吸収】した場合での勝率はどれだけ跳ね上がる?


〖……その段階でしたら、奇跡が起きたとしても、10~15%程度とあまりにも低い勝率で……〗


 成る程。では、それに懸けてみるとしよう。


〖懸ける? 何をでしょうか?〗


 次の黒髪鎌娘との再戦での勝利にだ、世界観測。


〖……この世界の貴方でそれは不可能です。それ程までにあの存在は危険です〗


 君達の世界の小さな物差しで、私を(はか)らないでもらおうか。私は、私がその勝率と進化でで十分勝てると、確証した。それに数週間後には、あの黒髪鎌娘は再び、ソフィア嬢を狙ってやって来るのだろう? 世界観測。


〖……ええ、ですから速やかに《新緑の樹海》からの逃走を〗


 それはしない。ここは私が生(産)まれた場所。私が一人前に成長するまでは居座るつもりの予定だからな。


〖では、貴方は数週間後、あの危険な存在に高確率で殺されるでしょう……残念です〗ブツン!


 残念だと? それは違うな。世界観測。それは違う……これは私が飛躍するまたとない好機。


 私はあの黒髪鎌娘を確実な準備を整え倒す。倒し、ソフィア嬢の驚異を取り除こう。

 《フラマ》世界での最強種だったギエナ・セフィロがな。

 




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