表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/81

No.12 元最強賢者と現絶対強者


「キュイ! キュイ! キュイ!」


「わぁ~、(くすぐ)ったいです。子兎さん~! そういえば、ヘルナさん。この子のお名前って何て言うんですが?」


 名前? 名前だと? いや、そんなもの知らないのだが……そうだな。こいつは私と森の中で出会って大変幸せ者だろうからな。 《森の幸せ(シルヴァ・フェリー)》とでも勝手に名付けておこう。


「キュイ?! キュキュ! キュイ!!」


 シルヴァ・フェリーめ、私に名付けをされてとても嬉しかったのか、私の頭に生えている草を食べ始めたぞ。 そうか。そうか。それ程に私の付けて名前が気に入ったのか。


「シルちゃんですか……てっ! 何、怒ってるんですか? だ、駄目ですよ。シルちゃん! ヘルナさんの身体を食べ始めては駄目です!」


 いや、シルヴァ・フェリーだ。ソフィア嬢……くそ! 先程の様に普通に会話ができれば、名前を勘違いされる事も無いというのに、あの世界観測め。余計な事をしよって。……ん? 空から何かとてつもない異質な何かがこちらに向かって来ている?


 何だ? 以前よりも精度が上がったという、【鑑定】スキルでも使用して確認するか。


スキル発動……【鑑定】LV2


◆◆◆

種族・●霊

スキル 【誘●】【閲覧不可

魔法 【深…閲覧不可

称号 【拐かす夢…開示不可

………

◆◆◆


 ふむ。【鑑定】スキルは使ってみたが、どうやら鑑定対象が、高位存在か何かなのだからだろうか? 上手く鑑定が出来なかった。そんな事をしている間に、その鑑定対象が私達の近くまでやって来た様だ。


〖警告します。速やかにユグドラシルの聖女を連れてこの場から逃走して下さい。繰り返します。速やかにユグドラシルの聖女を連れてこの場から逃走して下さい〗


 どうした? 世界観測。私は今、忙しいんだ。【鑑定】スキルのLVが上がったからと、発動してみたんだが、上手く対象のステータスが見られなくてな。


〖現在の貴方と対象体の進化レベルがかけ離れている為です。それよりも、速やかにユグドラシルの聖女の安全を確保する為に、彼女を連れて速やかに逃走をして下さい……つうか、早く逃げなさいよ! アンタ、殺されるわよ。あの死神に……〗ブツン…


 死神? 何の事だ世界観測?……また、会話が途切れてしまったが。世界観測は何をそんなに焦っていたんだ?


ストンッ!


「あれ? 何で特殊個体(ユニークモンスター)天兎(ソラリスラビット)が居るわけ? それにマンドゴラが二足歩行してるし、アンタもしかして、聖女ではなくて魔法使いだったの?」


「はい?……貴女は……まさか?!」


 空から突然、現れたのは黒いフードを被り、手には黒色の鎌を両手に掴んで持っている。黒髪を二つに結んでいる。確か、ツインテールとか言う結び方だっただろうか? ソフィア嬢と同じ位の年齢に見える少女だった。

 

「キュキュ?」


 そして、ソフィア嬢はそんな彼女を見た瞬間。シルヴァを抱き抱え、怯えた表情を浮かべていた。


「な、何で貴女程の方が一人でここにいらっしゃるのですか? ここは神聖な《新緑の樹海》ですよ。それに貴女は…」


「チャンスがあれば潰しにかかるのは当然の事でしょう。悪いはアンタなんだからさぁ。護衛のシャーロット何とかと離れたのが運の尽き……アンタで二人。殺してあげる。ユグドラシルの聖女様ぁ♡」


 ソフィア嬢を殺す? いったいどういう事だ? それに何故、ソフィア嬢はあの少女を見てこんなに怯えているんだ?


「はい……始めま~す。スキル発動【強制】【大鎌】……狩ってあげるわよ! ソフィア・A・クレメンタイン」


 黒髪少女が両手に持っていた鎌が巨大化した。そして、あの少女はそれをソフィア嬢へと振り落とす。


「あ…いや…あ、足が……動かせない?」


「は~い♡ これで2人目の始末は終わり~、後は帰ってマスターに報告を……」


 スキル発動……【鱗粉】


ガキンッ!


「はぁ? 何?……鎌螂(スラッシュ・インセクト)? 何でこんなに大きいのよ?」


 間一髪だった。間一髪、スキル【鱗粉】の擬態と傀儡を使い。鎌螂(スラッシュ・インセクト)となる虫を出現させる事ができた。


「ヘ、ヘルナさん? どうして私を助けて?」


「……フーン。成る程ねぇ。アンタ、【使役者】を持ってるのね」


「使役者? いえ、私はそんなジョブ持っていません。私のは…」


(うるさ)いわね。どうでも良いわよ。そんなの……これから死ぬ娘の事なんてね。だから、早く切断されなさいよ。聖女ちゃん。 闇魔法発動 【常闇】」


 させん!


 ユニークスキル発動……【蠱毒(こどく)


 私は黒髪少女が放った闇魔法とやらに、ユニークスキル【蠱毒】を放ち、相殺した。


「……へー、少しはやるじゃない。マンドコラを操りながら、スキル併用なんて、しかも……私に少しあの気持ち悪い黒い液体がかかってぇ?……何これ? どんだけ交ざってるのよ?」


「……ち、違います。わ、私の力じゃ…それはヘルナさんが戦って……努力して……得た力……です……こ、声が……上手く出せない?……」


 だ、大丈夫か? ソフィア嬢。な、何故、ずっと苦しそうにしているんだ? 


「……アンタのせいで左手、死んじゃったじゃない。しかもこのままだと他の部位も死ぬなんて、仕方ないわね……よっと……【血止】」


シュン……スパンッ!


 黒髪少女はそう言い終わるなり、自身の武器である大鎌で、自らの左手を切断した。切断したと同時に、何かのスキルを発動し、傷口を塞いだ。


 そして、その切断された左手は私の前はへと転がって来た。


「……な、何を……しているんですか?……い、今、蘇生させますから……貴女が私にかけたスキルを解いて下さい……」


 ソフィア嬢は苦しみながら立ち上がり、黒髪少女の元へと向かおうする。


 止めたまえ。ソフィア嬢、殺されてしまうぞ。

私は(つた)を伸ばして静止使用とするが、何故かソフィア嬢は黒髪少女の元へと進むのを止めない。


「は、離して……下さい…ヘルナさん……目の前に傷付いている人が居るんです。私が治してあげないと駄目なんです」


「……本当に馬鹿ね。アンタ……それよりも凄いわね。そのマンドゴラ。勝手に主人の防衛までするなんて、厄介……だから、消すわ。ここら辺一帯をね」


 黒髪少女はそう告げると、邪悪な表情でソフィア嬢に笑いかけた。


「消…す? 貴女は何を言っているんですか?」


シュンッ!


【新緑の樹海】空


〖対象は?〗


「そうね。ユグドラシルの聖女居る半径50メートルを更地にしなさい」


〖仰せのままに……エクストラスキル発動します【死神】……続いて魔法を発動。深淵魔法【常闇の底】……殲滅します〗


「……ええ、許可するわ。リリ」


〖……仰せのまま〗


ズズズ……ドオォォンン!


 その日、トネリコ世界の各国で不可侵条約が結ばれ、消して傷付けてはならない〖新緑の樹海〗の森が、トネリコの歴史上始めて、何者かの大規模な破壊行為により傷つけられ更地と化した。


 そして、その大規模な破壊に巻き込まれた犠牲者が一人いた。


 その犠牲者が聖セラム王国のユグドラシルの聖女〖ソフィア・A(エヴァンジェリン)・クレメンタイン〗だと分かり、捜索隊が組織されたのはその事件が起きた2週間後となる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ