No.102 木人嬰児を育てる冠位殿
ルドラとの戦い後。私は進化し。なんだか変な感じだが人型の存在へと変わる事ができた。できたのだが……私は赤ちゃんとして産まれしまった。
「あぅ………ぅぁぅ………」
「産まれました。産まれましたよ。お師匠様。元気なギエナさんですっ!」
「おおっ! 産まれたな。良し良しっ!」
「ギエナちゃんが可愛い赤ちゃんになっちゃった……」
「オギャーオギャーオギャーッ! (止めたまえよ。君達。産まれたての赤子をその様に揺らすなどあまりにも危険)」
「この馬鹿者共があぁ!! 赤子を粗末に扱うなっ!」
「へ? キャアアッ!!」
「うおっ?! ごあぁぁ!!」
ドコオオォオオン!!
産まれたての私をぞんざいに扱うフリューゲルとクロナ嬢が何者かの蹴りによって遥か遠くに吹っ飛ばされた。
「………あぅ?」
「おぉっ! 救世主殿。ご無事だったか? 我が来たからにはもう。安心ぞ。全く相変わらずの野蛮振りよのう。フリューゲル。産まれたての救世主殿を愚弄するとは。スキル発動【太物】」
赤髪の青年?……いや歳は十代中盤位の見た目はだろうか? 私の救世主となった彼は裸の状態の私に。どこからともなく取り出した布生地で服を着せてくれたのだつた。
「うぁ……ぉ!」
「ハハハ。驚きなさったか。救世主殿。これは礼じゃ。些細な礼。大恩できた救世主殿に対する礼……我の名前はベル=アー・イスカンダル。遥か昔の南の覇者じゃ」
南の覇者? それはどういう存在なのだろうか? 質問したいが歯もなく。魔獣の時はできた念話ができなくなっている。
「生まれ変わって全ての身体が変化したのだろうよ。人としてある程度成長しないと進化前には使えていた力の殆どは使えないぞ。救世主殿」
「ばぶぅ?! あぅ………ぅぁ………(何? そんな話。世界観測達は一言も言っていなかったのだが?)」
〖………言うの忘れてましたね。先輩〗
〖もう進化して頂いたので。取り返しはできません〗
何か脳内で聴こえた気がしたが。気のせいだろうか?
「普通。高位魔獣から人型へと弱くなる時は。大国や種族の長になり何かしらの高位の地位に付いてから進化するものぞ。安全な場所。絶対に裏切らぬ部下。広範囲の支配領地。最低これらがなければ。人型へと進化しても。進化後直ぐに駆逐される恐れがあるものだか……どうやら。救世主殿はそれ等を全く用意していなかったようだのう」
「あうぁー?!!」
………なんという事だろうか? これはあまりにも想定外だった。私はてっきり進化すれば前世か前前世の人型の姿で進化できるのかと思い込んでいた。
それが今まで使えていた全ての力が殆ど使えない。自身を守る為の安全な場所も支配地域も無い無防備な状態だとは。
「痛だだっ! だからギエナが進化した後はアイツの領域である程度育てる予定だったんだ。だからギエナをこっちへ渡せ。イスカンダルッ!」
「渡すか。馬鹿者がっ! 貴様が本来の姿になって救世主殿を運ぶものなら。救世主殿は凍え死ぬわ。フリューゲル」
「ぐっ! それはそうだが」
何だね? この2人も知り合い通しなのかね?
「………居るか? アルマンドラ、プトレマイオス、セレウコス、パルメニオン」
「「「「我が偉大なる王よ。忠誠高き我等がここに」」」」
「暫く。この地を任せる事にする。赤子へと産まれ変わり無防備になった大恩ある救世主をある程度まで育てる故な。異論は?」
「「「「ありません。全ては王の身心のままにっ!」」」」
「感謝する。アルマンドラは〖栄光〗であるマリア様の祭事を支えよ。プトレマイオスは内政を。セレウコスは仁政を。パルメニオンは環境を整えよ。数ヶ月後か数年後には必ず戻る故な」
「「「「はっ!」」」」
「……相変わらず。部下との信頼が厚いなお前は。イスカンダル」
「なんぞ? 北の地は2000年以上経っても魔女共を統率できておらぬのか? 情けない」
「世界中を動き回っていて北の地まで手が回ないんだ。こちらとあちらの数が違う……ここまで言えば分かるだろう。ちなみに直ぐ北の湖も奴等のテリトリーと化しつつある」
「……2000年少しでそこまで劣勢に陥っていたにか? いや。貪欲【《ケムダー》】だけでこれだけの被害を出しているのなら劣勢になっていても可笑しくはないか」
「だろう? だからギエナをちゃんと育てる為にも俺が北の学園へと連れて行ってだな」
「ならんは阿呆がっ! 貴様は赤子の脆さを知らんのか?……救世主殿……いや。ギエナ殿。我はこれでも子が沢山いて育児に慣れておる。それ故ギエナ殿がある程度ご成長されるまで面倒を見させて頂きたい。良いかのう?」
「あぅ?!……うぁっ!(本当かね? それはありがたい)」
「だがギエナ殿もある程度。守る術を持って置いた方が良い。ギエナ殿は何か特殊な防御スキルは持っていないか? それと使役している魔獣でもいればそれに周囲を警戒させられるのだが」
ベル=アー・イスカンダルと言う人物。会ったばかりだというのにフリューゲルと違い。なんと献身的に私に接してくれるのだろうか。素晴らしい人物だ。
「ぅぁぅ」
「……何だ。ギエナ。その人を馬鹿にした目は」
「いや。これは馬鹿にされてますよ。お師匠様~!」
しかし守る術か。赤子の私をどう守れと言うのだね。
〖そんな貴方にとても言いお知らせですっ! ギエナ様〗
む? その声は私に進化のデメリットも伝えなかった。ハロエ嬢かね? 何の用だね? 何故、突然君の声が聴こえる様になったのだね?
〖ウグゥッ!……それはこちらのミスですので謝ります。すみません。音声ミスも全てこちらの責任です。ごめんなさいです。そんな事よりもギエナ様にとっておきの良いお話があります〗
重大なミスをそんな事で片付けるとは。何だね?
〖……はい。普通。1000000スキルポイントを消費して取得するEXスキル【守護天使】ですが。今回、荒砂海ルアマリアを救って頂いた功績と。こちらのミス。現在、ギエナ様が所有しているスキルポイント全てを消費して頂く事により。お渡しできます。アスタルテの祠にも使用されていますEXスキル【守護天使】を〗
何? あの祠と同じEXスキルをかね。ならば直ぐに取得させてくれたまえよ。今の私はあまりにも無防備過ぎるのでね。
〖は、はい。畏まりました。直ぐに取得の準備を………EXスキル【守護天使】の取得完了しました。これにより私の全ての役目は終わり……あっ! それと私。ハロエは通常業務に戻りますので。次回からの世界観測はギエナ担当のあの娘に戻りますのでよろしくお願い致します〗
おぉっ! 私専属の世界観測がやっと帰って来るのかね? 良かった。戻ってき次第馬車馬の様に働かせよう。そして、ハロエ嬢には感謝をっ!
荒砂海ルアマリアで私を長くサポートしてくれた事にお礼を言わせてもらおう。
〖ギエナ様……はい。こちらこそ臨時でしたがありがとうございました。ではまたどこかでお会いしましょう。さようなら。ギエナ様……ブツンッ……〗
行ってしまったか。1000000スキルポイントの価値があるEXスキル。発動してみよう。
EXスキル発動……【守護天使】
おぉっ! 身体に変化が……何も起きなかった。
「あぅ?!」
ま、またかね。これ以上のハプニングはいらないのだ。安らぎを。私には戦い後の安らぎが必要で……安らぎ?
そういえば存在した。《 吸収装飾館 》の中でずっと眠っている私専属の使用人が。
アドラも倒して環境も人が住める場所になった今なら外に出しても平気だろう。
それでは外の世界に呼んで私の面倒を見てもらおう。あの使用人に。
「あぅぅあーっ!(来たまえよっ! ナヘマ。私の元へっ!……ついでにソフィア嬢達も外へと放出しよう)」
私はそう叫ぶと《 吸収装飾館の中から彼女達を開放した。
◇
ギエナ・セフィロ 木人種・草食嬰児レベル1
魔法 【恢復魔法】
スキル【吸収】EX スキル【守護天使】
称号【緑蛇神の眼】【豊穣神の祝福】
権能【三種の無】【緑の真典】【地の真典】【水の初典】【蝗災】 【調和の初典】
◇




