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短編『ひととちせい』

作者: ささがに

イントネーションはヒノ○ニトンです。

通勤中、ふと目にとまる空き地。

あれ、たしかここには家があったような……。


出張中、ふと目にとまる廃ビル。

おや、たしかここにはテナントが入っていたような……。


帰宅中、ふと目にとまる民家。

あぁ、たしかここには――


×××


我々が日常生活でしばしば目にする、土地。

土地にまつわる話でそういえばと思い出すことがある。

――あくまで、1つの考えなんだけどさ。

いつだったか同じ高校の同じクラスの誰だったかが話してたこと。

――土地って、人生と一緒だよな。

何を言っているのか、当時の私にはいまいちピンと来ないことばかり話す奴だった気がする。

――長らくそこには何か建物が在って、しかし時が経つとその痕跡はいずれ無くなる。

――人も同じで、『私』という個が在って、しかし時が経つと消えて無くなる。

大人になれば分かるかな、と思っていつも空返事してたっけか。

――土地と人生。あくまで俺らは人だから、人生の中に土地の行く末を見いだしたのなら、そうだな。

結局、私はそいつの話の大半が分からないまま大人を、人生を浪費している。

ただ、そんな中この話はずっと覚えていた。

――()()()()、なんて書いてしまうとさすがに安直すぎるか。たはは。

そう、そいつはそれまでの難しいような話をぜーんぶ蹴っ飛ばして、『()()()()()()』なんて読み方でノートに書いて見せたからだ。つい笑っちゃって、それで覚えてる。

――おぉ、やっと反応したな。いいだろ『ひととちせい』で。意外と喋ってみると”とちせ”の語感が癖になるぜ。

ひととちせい。

ひととちせい。

ひととちせい。

なるほど確かに、喋ってみると案外悪くなかった。

その後はまた小難しい話に戻ったから空返事していたっけな。


×××


その日の帰り道はずっと、その記憶だけが頭に渦巻いていた。

ひととちせい、ひととちせい、ひととちせい。何回かは口に出ていたかもしれない。

そして寝る前、布団に入って重くなった瞼が閉じ意識が遠くなる時になってふと思った。


…それってカタチ在るもの全般そうじゃん……

……結局、あいつクラスの誰だったんだっけ…………

………読みは、”じんどちしょう”の読みの方が、かっこい――

寝ちゃいましたね、ぐぅぐぅ。良い夢を。

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