第九話 投獄と水薬
さて・・・大体の広さはだいたい四畳半、天井と床・三方の壁には魔消鉄鋼、前方も同じく魔消鉄鋼の檻という牢獄。俺とミキは何故か捕まってしまった。あっ!マキちゃんも金庫から首を出して気絶中。
捕まった理由?・・・知らん!
魔消鉄鋼は小鬼の巣で冒険者が捕まってた牢屋と同じ材質で、魔法を消してしまう鉱石で作られ硬くて頑丈らしい。ここにある物はボロボロの布が二枚
と肥溜めと天井に一つ電球・・・前世でいう豆球みたいのがとても暗い。更に腐臭も漂ってくる始末。
檻の外側に通路があり、その先にも同じ牢獄があって・・・クリンチ《兎人族》?が居るのか?
一日目。(投獄された日)
とりあえず汚い!掃除しよう。
「おに・・ユイちゃん馬鹿なの?魔消鉄鋼だから魔法は使えないのよ!さっき説明したよね?」
・・・やってみて駄目なら次の手を考えようか。
んじゃ【洗浄】・・・【洗浄】っと!おーやってみるもんだな、綺麗になった。
次は肥溜めか・・洗浄で綺麗にはなったけど、ここで用を足すのはな・・・。魔法が何故か使えるんだったら改装するか。ミキが教えてくれた《ようしき》の便座を作るか!先ずは肥溜めを撤去、そこに土魔法の【造型】で便座と、便座の後ろには貯槽を上下に二つ。上の貯槽に排水用の水が入り更に水の魔石を入れ、下の貯槽に汚水が入り濾過と洗浄の魔石を入れておく。後は循環するように管を繋いで完成?あー忘れた、下の貯槽と管の間に排出の魔石を付けた管を入れないとな。これが無いと綺麗になった汚水を上の貯槽に送れないからな。便利な魔石があるもんだな。後は囲いと扉か・・・【造型】で完成・・・厠が暗い!光の魔石を天井に埋め込むか。これで完了かな。
厠が明るくなったついでに牢獄の中も明るくするか。前に冒険者育成学校の校長室で見た『しゃんでれら』だったか?あれは綺麗だったな。作ってみるか・・・出来た。大きい光の魔石を八個を均等に置いて、小さい光の魔石をたくさん付けてしまったが・・・明るくて良いね。
後は布団か・・・魔石と同じく次元収納からベッドを出して設置・・・牢獄が狭い!めんどくさいが広くするか・・・はい完成。奥行を広げたから快適になったな。
「・・・お・・ユイちゃん・・・時間の概念が無いよね・・・言いたい事は・・・もう・・・一秒って」
ん?かなり頑張ったな俺、暫くは快適に過ごせるぞ?
「ちょっと確認して良い?魔消鉄鋼があるのに何で魔法が使えるの?」
あぁ簡単な事だったな。普通に魔法を使うと魔法が消滅する特性の鉱石だったな?でもな連続で魔法を使うとどうなるか・・・ある一定以上の速さで連発させれば二発目の魔法は消滅しない事が分かったんだな。
そうそう紙に書かないとな・・・。
『やれば出来る?』
「答えになってないじゃん!(スパーッン!)」
牢獄に入ってまだ四半刻(三十分)も過ぎてない。とりあえず外の様子を見に行って来るかな。ミキはベッドで不貞寝中、マキちゃんはベッドの横に置いた金庫で相変わらず気絶中。ミキちゃん・・・伝説のハリセン、俺のだから後で返してね。
魔消鉄鋼の檻の扉を開けようとしたら、檻全部が外れた・・・建付けが悪いな。さて、俺の目の前にはクリンチ《兎人族》?の牢獄、右には鉄格子、左には三つの牢獄があるのか。一番奥に魔消鉄鋼の扉の牢獄があって、手前の二つは俺達が居る牢獄と同じのがあり、通路を挟んで同じ牢獄がある・・・クリンチ《兎人族》?の隣だな。
んで?腐臭は・・俺達の左隣から確認するか。クリンチ《兎人族》の男性で豪華な服装・・お貴族様かな?一番奥に座り込み、右腹部からの出血でお亡くなりになってるのか。
「すまないが、供養してやってくれんかのぅ」
ご遺体が喋った!って思ったら斜め後ろからだった。
「今のワシは友人に何もしてやれんでな・・・」
クリンチの人か、分かった、どのみちやる所だったからな。先ずは【成仏】で魂を送ってあげて、ご遺体は・・確か屍人になるから燃やすのが良いと学校の先生が言ってたな。その前に檻を外して、ご遺体からご本人と分かる物品をお預かりしてから【火葬】、後は【浄化】で問題ないかな?
後は報告・・・っておいおい、おっさん右腕と左脚がないし、両目は布で覆っているけど潰されてるし瀕死じゃね?生きてる方が凄いな!ちょっと待ってろ・・これはな《極チン》っていう、まぁ俺が作った水薬なんだが効果抜群過ぎてな、後で文句言うなよ?
書かないと分からんな。
『水薬をぶっかけるけど、文句言うなよ?』
これで大丈夫だろ。